「子どもに頑張らせる」と「子どもが自らやる」は違うので気をつけようという話

「頑張ってできた」という経験は子どもの自信になるんですよ!と、語られたことがあります。その通りですが、いろいろと言われて頑張るのと、自ら「なんとかしよう」と思うのとでは全く違います。仕事だとしたら、「業績が挙がるように頑張れ」と言われて頑張るのと、自分で業績が上がる方法を考え出すのでは、後者がよりやる気になりますよね。

「頑張れ」と言われても知らなければどうしようもない

しばらく前に、クライミングをする人の話が新聞に載っていました。挙手をするように手を挙げるよりも、手を横に挙げてから上に挙げる(半円を描くように挙げる)方が、高いところまで手が挙がるという話です。実際に、鏡の前で右手と左手でそれぞれの挙げ方をしてみるとよく分かります。私の場合は10㎝近くも違いました。

いくら「頑張れ」と言われても、やり方を知らなければ届きません。あと3㎝手が届かないとき、勇気を振り絞って勢いをつけ、足を離せば届くかもしれませんが、失敗したら落ちます。手が上まで挙がる方法を知っていれば、頑張らなくても届きます。この場合、必要なのは「手が上まで挙がる方法があるのでは」と思い付くことや「先人に教えを請う」ということですよね。

「やってない=頑張ってない」ではない

何かをやってないように見えても、それを「頑張ってない」「諦めている」と捉えないようにすると、育児や保育の世界が広がります。いくつか例を挙げてみますね。

鉄棒や跳び箱をしない子ども

鉄棒や跳び箱をするときに、他の子どもの姿を見ているだけの子どもがいます。公園で遊具を眺めているだけという姿もありますよね。これを「頑張ってない」と捉えてしまうと、「頑張って」「ほら、試しにやってみてごらん」となります。本当にやる気がないのであれば見ることすらしません。前向きな気持ちがあるから他の子どもの姿を見ています。すでに頑張っているんです。

人が多すぎて躊躇しているかもしれません。もしかすると、本人は並んでいるつもりだけど、少し離れた場所にいるのかもしれません。苦手な子がいるから近寄れないかもしれません。できる能力はあるけど、何か別の理由でやらない場合もあるんですよね。

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絵を描かない子ども

特に幼稚園だと、クラスに1人くらいは絵を描かない子どもがいます。家庭ではクレヨンで画用紙に絵を描くなんてしていませんから。周りの子どもを眺めて、しばらくしてから描くこともありますが、困ったような顔をしていつまでも描かないことがあります。そもそも絵は頑張って描くものではないですが、それは置いておきます。子どもが運動会の日に欠席しているのに、後日「運動会の絵を描きましょう」なんて言ってることに気付いてない保育者もいるようですが、それも論外なので置いておきます。

諦めてないから困っているんですよね。何に困っているかを聞き出すと、頑張らなくても絵を描き始めることは多いです。多くは、家で描くときと状況が違うから描けません。ボールペンでお母さんの手帳にしか絵を描いたことがない子どもにとって、画用紙は大きすぎるし、クレヨンやコンテは太すぎます。ボールペンやサインペン、色えんぴつだと描ける場合があります。それから、「大きく描きましょう」が描けない原因のこともありますね。小さくたくさんの物を描きたい子どももいます。

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歌わない子ども

関連記事に書いてあることを短くまとめてお伝えすると、子どもが歌わない理由はいろいろあって、そのうちの1つが「メロディーのガイドが子どもの声とオクターブ違う」です。ピアノの鍵盤で弾く音が1オクターブ高かったり低かったりするかもしれないし、男性の保育者だと、子どもが一生懸命オクターブ下げて歌おうとする場合があります。上手く歌えないので、そのうち歌わなくなってくるかもしれません。

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これらのように、頑張りには関係なく、大人がやってほしいことを子どもはやらない場合があります。それを頑張ってなんとかしようとしても、どうにもならないんですよね。「頑張れ」といくら言われてもどうしようもないことを繰り返すと、「頑張っても意味が無い」「自分にはできない」というように感じてしまいます。そうならないためにも、「頑張らせる」ではなく、子どもが自らやる気をもって取り組むようにしていきたいものです。

「子どもが自らやる気をもって取り組む」を書いていくと、丸々1記事分になります。その記事は以前書いているので、関連記事「保育における子どもの主体性とは」を読んでみてください。

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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。

ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・

そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。

ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。