絵を描くことに対して苦手意識がある子どもにどう対応するか

何年も前の話。NHKで子ども向けに絵の描き方を教える番組が放送されました。もちろん、プロの監修の元、「まず、こう描きます。次に、ここの部分を描いて…。ほら、苦手な人でも上手に描けるでしょう?」というような内容だったそうですが、放送終了後に、番組の内容について意見する電話が相次いだそうです。なぜなんでしょうか?

絵の教え方はいろいろある

この話、文部科学省の教科調査官をしていた人に聞いたものです。専門家の人に教えを請い、番組を作ったのに、なぜ抗議の電話が相次いだのか…ということを、番組の関係者から聞かれたそうです。なぜ、抗議の電話が相次いだのかというと、絵を指導する方法はいくつもあるからなんですね。他の方法に触れることなく、その中の1つだけをNHKが取り上げると、それが正解のように思われてしまいます。他の指導法を推している人からすれば、番組内容は1つの方法に偏りすぎて見えたんですよね。

絵を描くことが苦手な人が安心する描き方

当時、私は保育現場で働きながら、小学校の教員免許をとるために大学で学んでいました。その大学の先生が、以前に教科調査官をしていた人だったんです。そこで実際に、NHKの番組で取り上げられた方法を、授業中に体験してみる機会がありました。「顔を描くときはまず顔の形を描きます。そして次に目を描きます。鼻は三画を描きます。」…ということを聞きながら、言われたように描いてみたんですよ。

描いてみた結果、何人かは「安心した」ということを言っていました。「では自由に描いてください」だと、困ってしまう人がいるんですよね。言われたように簡単な形を描いていくだけだと、みんな同じような絵ができあがり、上手いか下手かを比べられることもありません。

※この方法を勧めているわけではなく、あくまでも方法の1つとしてお伝えしています。

なぜ絵の描き方は教えられるのか

保育指針解説には、「絵」という言葉はたくさん出てきますが、そのほとんどは絵本について語られるときに登場します。絵を描く話もあるんですけど、遊びの中で子どもが自由に絵を描く話であって、教えられて描く話は出てきません。

「1個目の積み木はここに置いて、2個目はこうして」…と教えないのと同じように、「この手遊びは、まずこの指をこうやって」…と教えないのと同じように、本来、絵についても描く順番を教えなくても、子どもは描けるようになるはずです。でも、描き方を教えている園は珍しくありません。外部講師に来てもらっている園もありますよね。

先ほどは、「描き方を教えられると安心する人がいる」という話をお伝えしましたが、当然、反対のことを感じる人もいます。「教えられたようにはできないから不安だ」という人もいますし、「自由にできないから面白くない」という人もいます。でも、絵を描くときには、一斉に同じ物を描くことが多いのではないでしょうか。園の方針などもあるでしょうから、ここでは、なぜそのようなやり方にしているか、考えてみることをオススメするだけに留めておきます。

絵を描くことが苦手な子どもが増えている?

これはあくまでも、1部の現場の先生の肌感覚なのですが、絵を描くことに苦手意識をもっている子どもが増えているように感じるそうです。もう少し具体的にお伝えすると、「好きなように描いてね」というように言われても、動かない子どもが増えているように感じるそうです。

これも、あくまでも推測ですけど、絵を描く活動の中で、言われたように描くことだけを経験してきた子どもは、「好きなように描いてね」と言われても何をどうすればよいか分かりませんよね。また、「描きたい」という意欲が薄い場合は描けません。

描けるようになるきっかけはいろいろある

私には聴覚過敏があります。ペンやマジックで紙になにかを描く音を聞くと、吐き気をもよおすほど気持ちが悪くなってしまいます。私が子どもの頃は、絵を描くといえば、画用紙にクレヨンやコンテ、絵の具で描くことばかりだったと思いますが、ペンやマジックを使う時には、耳をふさいで聞こえないように声をあげたりその場から逃げたりしていたかもしれませんね。この場合、絵を描かずにふざける子どもに見えるかもしれませんが、画材を替えれば解決する話です。

関連記事(このサイトの記事ではなく感覚過敏研究所に寄稿したもの)
保育現場で聴覚過敏の苦痛を軽減する5つの方法

同様に、画材を替えて絵を描くようになった事例があります。毎回、なかなか絵を描き始めなかった子どもが、「遊びの中でボールペンを使った時には楽しそうに描いていた」ということがありました。どうやら、家ではお母さんの手帳にボールペンで絵を描くという経験しか無かったようです。幼稚園に入って、始めてクレヨンや画用紙に触れたので抵抗があったんですね。

  • 描くもの(クレヨン、ペン、絵の具など)
  • 描かれるもの(画用紙、布、段ボールなど)
  • 人数や並び方
  • 場所
  • 時間
  • 描き方を教えられるか自由に描くか
  • 声のかけ方
  • 1人の作品にするかみんなで1つのものを描くか

これらのように、変えることができることっていろいろとあります。一斉に、みんなで席について、描き方を教えられて描く…というのは、ほんの1部のやり方です。いろいろとやってみると、頑なに絵を描かないと思っていた子どもが、絵を描くことを好きになることってありますよ。

昔は、道路や公園の地面に絵を描くということを当たり前にやってましたけど、楽しかったですよね。泥で描くとか、大雨の日にテラスに雨で絵を描くとか、意欲的にできそうなことも考えてみましょう。

製作のねらいを考えるヒントとねらいの例はこちらの記事に書いてあります。
【どうつなげる?】「週のねらい」と「活動のねらい」に関連をもたせるには

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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。

ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・

そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。

ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。