「保育士はうつ病が多い」報道のウソと本当

「保育士はうつの発症率が高い」とか「保育士の何%がうつ」とかいう報道がありますよね。本当にそうなんでしょうか?「保育士は責任重いし、ストレスも多そう・・・」というのは本当だと思います。でも、保育士の「うつ病」が多いという記事は、かなり怪しいです。

この記事では、「保育士のうつ病は本当に多いのか」ということを検証しています。「保育士の仕事は責任が重くてストレスも多い」ということは否定しません。でも、「何パーセントがうつ」という話は安易に信用できません。「メンタルの病気になったら嫌だし・・・」などの理由で保育士になることをためらっている人は、「保育士のうつ病は多い」と単純には言えないということを知ってください。

「保育士はうつが多い」という記事の全部を信じてはいけない

「保育士はうつが多い」という記事を、そのまま信じてはいけません。「ネットの記事は嘘が多いから」とかいう簡単な理由ではないですよ。「保育士はうつが多い」という記事を信じてはいけない理由は次の2つです。

  • 根拠となるデータを示していない
  • 根拠となるデータが非常に限定的

どういうことか、詳しく説明しますね。

根拠となるデータを示していない

「保育士 うつ」で検索すると、「保育士は、うつ病などの精神的な疾患にかかる人が多いと言われています」「保育士はうつが多い?」というような書き方をしてある記事がいくつも出てきます。

元々、誰がそう言っているんでしょうか?

根拠となるデータが無いから、「うつが多いと言われています」などと、はっきりとしない表現で書いてあるんです。「?」マークをつけてあるんです。「参照元は、◯◯というサイトの記事です」と書いてあっても、元記事にも根拠となるデータは載っていません。

参考として、厚生労働省などのデータを用いている場合もありますが、そのデータは、「精神疾患の患者数が年々増えている」というものや「保育士の職場環境はストレスがたまりやすい」という報告です。「保育士のうつ病が多い」というデータではありません。

根拠となるデータが非常に限定的

ほんのたまに、根拠とされているデータを示していることもあります。

でも、対象がたった100人程の、独自のアンケートで、保育士以外の人が混ざっているアンケートです。

100人程度だと、その集団にたまたま「うつ」の人が多かっただけかもしれません。興味の無い人はアンケートに答えませんから、職場のストレスや精神疾患に関するアンケートなら、「うつ」の人が多くなるのは当然です。

「なんでそんなことが言えるの?」と思った方は、アンケート調査の落とし穴 ー数字にだまされるな―を読んでみてください。静岡産業大学の先生が書いた記事で、とても分かりやすいです。

限定的でないデータだとどうなのか

限定的でないデータって、次のようなものです。
厚生労働省 補助型調査研究 平成 28 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 保育人材確保に関する調査調査報告書

この調査によると、平成28年度に、メンタルヘルスケアが必要と感じる保育士、または実際に治療を受けた保育士、精神的負担が原因で離職した保育士は、2,672の施設(そのうち34施設は無回答)で1,030人ほどです。

でも、これだと、2,672の施設に何人の保育士がいるかは分かりません。仮に1つの施設に15人ずついるとして40,080人。そのうち1,030人がメンタルヘルスケアが必要だとしたら2.6%です。

これは明らかに少な過ぎます。

人間関係や保護者との関係から、保育士の精神的負担が増しています。メンタルヘルスケア(精神的、 心理的負担のサポート)が必要と感じる、または実際に治療を受けた(受けている)保育士が平成 28年度 に何人いましたか。(精神的負担が原因で離職した保育士を含む)

出典:厚生労働省 補助型調査研究 平成 28 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 保育人材確保に関する調査調査報告書

という質問文なので、「メンタルヘルスケアが必要です。」「実際に治療を受けました。」「精神的負担が原因で辞めます。」と申告した人の数でしょうね。

というわけで、「保育士の何パーセントがうつです。アンケートして分かりました。」と書いてあっても、多くの場合は信用できません。

保育士のススメ

「保育士のうつ病は多い」と単純には言えません。厚生労働省の資料では、逆に少な過ぎるくらいでした。結局、数字をどう捉えて、どう記事を書くかで、印象が違うだけなんです。だから、「メンタルの病気になったら嫌だし・・・」などの理由で保育士になることをためらっている人は、気にする必要はありません。

重要なのは、正しい情報を手に入れて、自分に合った職場で働くことです。

どれだけ元気でも、体調が悪くなるときは悪くなります。反対に、体調が悪いと思っていても、自分に合った職場なら体調も良くなります。私はこれを両方とも経験済みです。うつとはちょっと違いますけど。

正しい情報を手に入れる方法の1つが、複数の機関に登録しておくことです。オススメの転職サイトを載せておきますので、あなたに合った職場を探すためにも、まずは複数のサイトに登録をしておきましょう。


また、病状によっては、隠して働くことができない場合がありますよね。「うつ傾向だし・・・」くらいなら働けますけど。本当に「うつ病」だとしたら、本来は働かずに休む必要があります。病気だということを知ってもらった上で、それでも働ける保育現場を紹介してもらえることは、ほぼありません。「うつ」だと知ってもらった上で、自分に合った働き方をしたいのであれば、保育以外の働き方を考える必要があります。

ニューロワークスは、うつ病などの精神障害、発達障害などの障害がある方が、就職をするための訓練を行う場所です。 就職活動のサポートだけでなく、PCスキルや対人能力など就職に必要な知識やスキルも学べます。 タスク管理能力やスケジュールの立て方など、生産性を上げることを目的としたプログラムも多数あります。 さらに就職後も安定して働き続けるためのプログラムも行っています。

紹介だけでなく、就職活動のサポートがあり、就職した後のサポートもあるという点が、手厚いです。「うつ病」で収入も少ないのであれば、無料で利用できるケースに当てはまるはずです。一度確認してみてください。

とにかく、病気になるほど我慢をせずに、しっかりと休むときは休みましょう。
合わせて、【有給休暇】保育士・幼稚園教諭のみなさんが正常に休みをとるために知っておくべき事も読んでみてください。

ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。