ご褒美を与えると子どもはやる気になるけど、そのうち、ご褒美を与えられない時には動かなくなる。自ら取り組むことができなくなる。…というような話を聞いたことがありませんか?これは事実かもしれませんが、物で釣るとやる気になるのも確かですよね。ということは、ご褒美をもらうことに目的がすり替わらないようにすれば良いのでは?
「物で釣る」はなぜダメなのか
たとえば、子どもに対して「前向きに取り組んでほしい」「気持ちを切り替えてほしい」と思ったときに、「○○できたら買ってあげる」とか、「連れて行ってあげる」というように、物で釣ってしまうことってありますよね?一般的には、物で釣ることはダメだと言われることもあります。なぜなら、褒美を与えられることが行動の目的になってしまうからです。別の表現をすると、ご褒美が無いならやらなくなってしまうからですね。
ある行動(周りから見ると好ましくない行動)をした結果、望んでいたものが手に入る。それにより好ましくない習慣が身に付いてしまう。…という「誤学習」も似たようなものです。たとえば、「泣きわめいていたらオヤツを買ってもらえた」という場合、「泣いていたらオヤツを買ってもらえるんだ」と、誤った学習をしてしまうんですよね。「相手をしてもらいたいとき、怒られるようなことをわざとする」ということも、これに当たります。
ならば、「物で釣る」ということと、「(こうすれば買ってもらえる、こうしてもらえるという)結果」が結びつかないようにすれば、問題は無いはずです。
あっという間に機嫌が直った女の子の話
真夏のテーマパークで、2歳くらいの女の子がギャン泣きをしていて、その子をお父さんが抱っこしている場面を見かけました。特に聞こうと思わなくても、離れた私の所まで聞こえてくるような声で泣いていた女の子に対し、お父さんは特に話しかけることもなく、家族と話しながら歩いていました。
どうやら、「そこの店でかき氷を買おう」というような話をしていたようです。私がその家族に気付いてから、その家族がかき氷を買うまでの間、お父さんは女の子に話しかけることはせず、女の子は泣きっぱなしでした。しかし、かき氷を食べるときは自分で立ち、あっという間に泣き止み、むしろ機嫌が良く笑顔が出ていました。
どう声をかけるか
お父さんの対応は、一見、冷たそうに見えますが、過剰に反応すると「泣いていたら常に反応してくれる」という誤学習にもつながりかねません。あくまでも憶測ですが、女の子は、かき氷屋さんが見える前から泣いていたようなので、「かき氷が食べたい」と駄々をこねていたのではないであろうと考えられます。疲れてぐずっていたのか、暑さが嫌だったのか…。とにかく、泣いた原因とは関係ないところでかき氷を食べる相談がなされていたように見えました。
そうだとすれば、女の子にとって、「泣いたらかき氷を買ってもらえた」ではないんですよ。なんかよく分からないけど、かき氷が出てきた。食べたくなった。食べたら元気出た。なんですよね。まあ、「泣くのをやめたら食べさせてあげる」なんて声をかけられていたら台無しですが。
ではどのように声をかけるかというと、
- 「泣く」と「子どもにとって好ましい結果(かき氷)」が結びつかないように、「汗がいっぱい出たから」とか「疲れたね」など、泣き止ませようと思わずに他のことに目を向けて声をかける
- 泣いているときよりも、泣き止んでいるときに声をかける
「過程を褒める」なんてことも言われますが、これも「褒める」なんですよね。「褒められたくて行動する」になるかもしれません。ということで
- 褒めるよりも事実をそのまま言う
- いつも同じ言い方ではなくて、様々な言い方をする
ということも付け加えておきます。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
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