「戦いごっこ」に悩んでいる方、たくさんいますね。「どう対応すれば良いのか分からない。」「やめさせたいけど、どうしてもやめてくれない。」こんな声が、あちこちから聞こえてきます。
子どもの遊びを、もっと長い間見てみましょう。
特に、戦いごっごになる前を見ていると、対応の仕方が分かりますよ。
この記事では、戦いごっこが始まる原因と、戦いごっこへの対応方法を紹介しています。戦いごっこが始まってから、慌てて対応しようとしている人は、戦いごっこが始まる前が大事だということを考えながら読んでみてください。
戦いごっこの前を見て対応しよう
そもそも、子どもがしているのは戦いごっこなのでしょうか?
実は、大人が思うような、いわゆる「戦いごっこ」ではない場合が、かなりあります。子ども達がしている戦いごっこの多くは、「仮面ライダーごっこ」や「○○レンジャー」ごっこです。
その中から戦いの部分だけを取り出して、「戦いごっこ」と、まとめているのは大人です。子ども達は、大人の言葉を聞いて「戦いごっこ」と言うようになるのではないでしょうか。
実際、子ども達の会話も、
「仮面ライダー○○ごっこしよう。」
「いいよ。」
「じゃあ戦いする?」
「えー、やだ。基地作ろう。」
というような場合があります。
そのうち、基地ができると、基地での生活が始まり、戦いに移行することもあります。
実際、戦いごっこの割合は、場合によりかなり変わってきます。
仮面ライダーごっこの中身(年中や年長)
- 基地・乗り物作り 25%
- 武器・アイテム作り 25%
- 戦い 10%
- ポーズ・セリフ 20%
- ライダーの日常 20%
※数値はあくまでも目安です。
※番組内容によって、子どもへの影響は変わります。
他の遊びが楽しかったら、子ども達は戦う必要がありません。
基地や武器を作る環境が整ってない場合は、当然、戦う割合が増えます。
仮面ライダーごっこの中身(戦いに明け暮れている時期)
年齢、発達によって、戦いばかりしている時期も、もちろんあります。
- 基地・乗り物作り 10%
- 武器・アイテム作り 10%
- 戦い 40%
- ポーズ・セリフ 30%
- ライダーの日常 10%
※数値はあくまでも目安です。
※番組内容によって、子どもへの影響は変わります。
テレビの仮面ライダーや戦隊ものも、戦ってばかりではないです。だから子ども達は他のこともしたいんです。戦ってばかりなのは、他のことをして遊ぶための環境が整ってないからという可能性があります。
プリキュアごっこの中身(平成29年度の場合)
特に、プリキュアは、最後の10分まで敵が出てこないなんてこともあります。
放送時間のほとんどが、お菓子作りや学園生活です。
- お店作り 25%
- お菓子作り 30%
- 戦い 6%
- 衣装・ポーズ 25%
- 学校生活 14%
※数値はあくまでも目安です。
※番組内容によって、子どもへの影響は変わります。
戦いごっこという枠にとらわれないで子どもの遊びを見てみると、対応の仕方も変わってきます。
プリキュアごっこも戦ってますよ
女の子が見ることをねらった番組かもしれませんが、プリキュアも、悪者と戦って倒します。子ども達がしているお菓子屋さんは、実はプリキュアごっこではないですか?だとしたら、何かあったときはいつでも戦う準備ができているかもしれません。
「プリキュアごっこしてる。」と言いながら、お菓子作りだけをしたい子どももいます。でも、別の場所で戦いごっこをしている子ども達が、急に攻撃してくることがあります。それは、プリキュアに戦いを挑んでいたのかもしれません。
誰が何ごっこをしているか、子ども達はよく分かっています。
大人が見過ごしがちな戦いの理由
戦いばかりしているように見える子ども達にも、いろいろな理由があります。
- 武器を作りたいけど、思うようにいかない
→ 途中だけど戦うか。 - 基地を作りたいけど、積み木を他の子ども達が使っている
→ じゃあ先に戦っておくか。 - お店をやりたいけど、攻撃された
→ みんなは守っておいて。私戦ってくる。
なにも準備せずにできるので、戦いごっこは簡単に始めることができます。子ども達が本当にしたいことをできていれば、戦いごっこにならないことが多いです。
戦いごっこをさせたくないから、他の遊びに誘っている人。誘うとしたら、子ども達がしていたはずの遊びの続きです。「ビルドドライバーの丸いところ、ぴったりの材料よく見付けたね。」などと言えたとしたら、食いついてくること間違いなしです。
保護者にも知ってほしい具体的な対応の仕方
ここからは、保護者のみなさんにも知っておいてほしいことです。大人の関わり方1つで、子どもの戦い方が大きく変わってくるからです。ただ、この通りにするのはプロの仕事並なので難しいです。
子どもの武器にどう対応するか
「子どもが戦いの最中に、棒や石などを持ったらどうするか」という話ではないです。その場合は、当然止めるでしょう。ここで言う武器とは、子どもが紙で作ったものや、身に付けているつもりで空想している武器です。
子どもが目に見えないビームのようなものを撃ってきたとき、どうしますか?
空想の悪者と戦っているときのことではないです。空想の悪者と戦っているときは、反応しすぎると遊びの邪魔になりますから。大人に向かって攻撃したつもりになっているときのことです。
私は、やられて倒れる、当たったけど耐えるなど、攻撃に対する反応をするべきだと思います。
攻撃したのに効かなかったら、現実の世界に引き戻されます。さっきまで空想の敵をやっつけていたビームが、大人には全く効かないとしたら・・・
手や足を使っての攻撃になるかもしれません。そうすると反応してもらえるから。空想の武器に、大人がしっかり反応してモデルを示せば、子ども同士でも同じようになります。
さらに、大人にとっては難しいことですが、「ブラストキャノン、パワーチャージオン!!」「ブシューーーー!!!発射!!」などと、適当なセリフとポーズをつけて、子どもの相手ができますか?
戦いの相手を上手くできないとしたら
大人が、戦いへの対応を上手くできないとしたら・・・
戦いを止める → 子どものストレスは溜まる
大人がパンチやキックで対応する → 子どもがパンチやキックを覚える
大人がやられ役になる → 子どもが一方的に攻撃する遊び方を覚える
こうなる可能性があります。
結局どうすればいいの
一言でまとめてしまうと、戦いへの対応も、他の遊びのときの対応と一緒です。
- 子どもが空想の悪者と戦っているときは、邪魔をしない。
- 人を相手に戦いたいのであれば、上手に戦える友だちと戦うように声をかける。
大人を相手にしようとしてきたときには・・・
まず、一緒に遊びましょう。
そして、演技のネタがなくなってしまったら、次の方法を試してください。
別の空想の敵を登場させて、子どもと一緒に戦う
これが一番おすすめです。言葉でイメージを伝えることになり、想像力、表現力も育ちます。一緒に戦うことで、力を合わせるという気持ちも芽生えます。子ども同士で遊んでいると、大人が意識しなくてもこれらの育ちがあります。大人が気付いていないだけです。
「このままではやられる。」などと言って、逃げる
運動不足の子どもや、中遊びばかりしている子どもに対しておすすめです。好きな戦いのためなら、普段やらないことでも楽しくできます。しっかり体を動かしましょう。
遊びへの気持ちを残しながら、違うことに目が向くようにする
「全然かなわない。パワーアップしよう。」などと言えば、おやつタイムにできます。「ここは小さいお友達がたくさんいて危ない。場所を変えよう。」と、公園に誘えます。空想の世界で遊んでいるので、セリフは本当のことでなくてもOKです。
「ちょっと待って、お母さんも武器作るから」と、少し違う遊び方を楽しむ
好きな武器を作るためなら、少しくらい難しくても子どもは頑張ります。でも、最初から上手に作ることを求めないでください。見た目が少しくらい悪くても、子どもが満足すれば、それで良いです。
だって、さっきまで何も持たなくても楽しく遊んでいたはずですから。少しずつ上手になります。作りたいものに字が書いてあれば、字だって勝手に覚えていきます。
戦いごっこも、他のごっこ遊びと同じです。せっかくなので、子どもの想像力や表現力が育つような対応ができると良いですね。
1人と大勢で戦いが始まったら
1人と大勢で戦いになることがある点も、戦いごっこが敬遠される原因でしょう。テレビでは、敵1人とヒーロー数人で戦う場面がよく見られます。テレビと同じように役を決めていたら、遊びでも同じような戦い方になるでしょう。
もし、1人に対して大勢で戦いが始まったら、当然止めますよね。
その後、どのように対応していますか?
なぜ敵1人にヒーロー数人がかりで戦うのか、子どもが考えられる場をもってみましょう。できれば、大人も登場人物の名前を言えるとベストです。子どもが具体的なイメージをもちやすいですから。
なぜヒーローが数人がかりで戦うかというと、敵があまりにも強すぎるからです。数人がかりでも、最初は全然歯が立ちません。最後にやっと優勢になっても、敵は捨てゼリフを残して去るだけです。次の回には平気な顔をして、時にはパワーアップをして、また出てくるのです。
よく考えてみると、子ども達はテレビでの敵の強さに気付きます。そして、自分達の遊び方がおかしいことにも気付きます。1人で戦っていた子どもは、テレビの敵ほど強くはないですから。じゃあ、どんな風に戦えば良いか、ということを子どもが自分で考えるようになるのです。
戦いごっこでの学びとリスクについて
戦いごっこでの学び、得られることについて、いろいろと語られています。この記事でもお伝えしたように、戦いごっこから学べることはたくさんあります。しかし、戦いごっこを必ずしなければならないかと言われると、そうではないと思います。
例えば、力加減や協調性などは、スポーツでも学べます。一生懸命になるあまり、周りのことが目に入らなくなって、相手にケガをさせてしまう。動きが激しい分、戦いごっこよりも、むしろ、スポーツの方が危ないこともあります。
戦いごっことスポーツを一緒にするなと怒られそうですが・・・
結局は、戦いごっこもスポーツも他の遊びも同じことです。遊びを通して学ぶことがたくさんあり、時には危ないこともあります。ケガのリスクをゼロにするのであれば、全部の遊びを禁止しないといけません。どの遊びでも、できるだけ安全にするために、周りの環境を整えるのは大人の役目です。
遊び自体が悪いのではありません。どこまでがして良いことで、何をしてはいけないか、大人が責任をもって示すべきです。ここまでならOKという線引きは、人によって様々でしょう。各家庭でも、それぞれの園でも教育方針は違います。個々の子どもによっても変わってきます。
その上で、戦いごっこについて、私が線引きをするなら、
- 危険がないか
- 教育的であるか
ということです。
他の遊びと一緒です。力加減ができるから、ごっこ遊びであり、できないのであれば、ただの暴力になります。これを教えるのは大人の役目です。ケガにつながる可能性のあるものを持たせないのは、他の遊びも同じです。スベリ台の上におもちゃを持って上がらないのと一緒。
ただ、いくら気を付けていても、ケガをするときはします。転んだら足をすりむきますし、テーブルを運んでいて指をはさむこともあります。戦いごっこでその程度のケガをしたからといって、暴力だとは考えないでくださいね。当てるつもりがなくても、当たってしまうことがあります。体の幅が思った以上に広くて、物にぶつかるのと同じです。
まとめ
- 子どもがしているのは「仮面ライダー●●ごっこ」や「プリキュアごっこ」
- それらのごっこ遊びでは、子どもは戦いだけではなく、いろんなことをしている
- 子どもが本当にしたいことをしていれば、戦いが始まることは少ない
- 子どもがパンチやキックをするのか、表現力豊かに遊ぶかは、大人の対応次第
- 環境を整えること、力加減を教えることは、大人の役目
やっぱり、戦いごっこも他の遊びと一緒です。危ない場面だけ見ているから、対応が難しくなります。遊び全体を見て、子どもと一緒に、しっかり遊びましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。「もっといろいろと知りたい」という方は、ホームページや、このサイトの記事が一覧になったサイトマップをご覧ください。