10の姿「思考力の芽生え」について具体的な姿を砂場での遊びで考える

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の1つに「思考力の芽生え」があります。思考力と言われると、何か頭を使って考えることが思い浮かぶでしょうが、保育の場面では、具体的にはどんな姿なんでしょうか。特に、年長になるまでのところで、どんな姿が思考力の芽生えにつながっていくか、砂場での遊びで考えてみますね。

10の姿「思考力の芽生え」にはどんなことが書いてあるか

まずは、10の姿の「思考力の芽生え」についての文を確認しましょう。

思考力の芽生え 身近な事象に積極的に関わる中で、物の性質や仕組みなどを感じ取ったり、気付いたりし、考えたり、予想したり、工夫したりするなど、多様な関わりを楽しむようになる。また、友達の様々な考えに触れる中で、自分と異なる考えがあることに気付き、自ら判断したり、考え直したりするなど、新しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをよりよいものにするようになる。

引用:保育所保育指針解説

幼稚園教育要領解説、幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説にも同じように書いてあります。

「思考力の芽生え」につながるようにと思うと、つい、この文の中に書いてある言葉を使って書きたくなりませんか?たとえば、要録を書くときに「自分と違う考えがあることに気付きながら遊んでいた」とか。読む側としては、もっと具体的な姿が思い浮かぶように書いてもらいたいものです。

先ほど引用した部分のもう少し先も見てみましょう。

思考力の芽生えは、領域「環境」などで示されているように、周囲の環境に好奇心をもって積極的に関わりながら、新たな発見をしたり、もっと面白くなる方法を考えたりする中で育まれていく。なお、思考力の芽生えは、領域「環境」のみで育まれるのではなく、第2章に示すねらい及び内容に基づく保育活動全体を通して育まれることに留意する必要がある。 子どもは、身近な事象に積極的に関わる中で、物の性質や仕組みなどを感じ取ったり、気付いたりするようになる。

引用:保育所保育指針解説

前半部分はもう答えみたいなものですよね。「周囲の環境に好奇心をもって積極的に関わりながら、新たな発見をしたり、もっと面白くなる方法を考えたりする中で育まれていく。」ということを考えて保育をしていけば良いわけです。

後半部分に「物の性質や仕組み」と書いてあります。1つ目に引用した文の1行目にも「物の性質や仕組み」という言葉は登場しています。大事なことだから何度も登場しているのですが、「物の性質や仕組み」って、具体的にどんなことなのか分かりますか?

「思考力の芽生え」に出てくる「物の性質や仕組み」とは

今回は、砂場の遊びで考えてみましょう。

  • 泥に水を混ぜたらビチャビチャになる
  • 水分が抜けていくと固まる
  • 砂や泥はいろんな形になる

これらが「物の性質」です。

  • バケツを傾けると水がこぼれる
  • 大きいスコップを使うと砂をたくさんすくえる
  • 土台が大きいと砂山を高く積むことができる

こういうのが「仕組み」ですね。

もちろん、子どもは「これが性質でこれが仕組み」なんて考える必要はありませんし、大人も区別をつけることができなくても保育はできます。

物の性質や仕組みなどを感じ取ったり、気付いたりし、考えたり、予想したり、工夫したりするなど、多様な関わりを楽しむようになる。…ということなので、まず、「感じる」を考えてみましょう。砂場で子どもはどんなことを感じているのでしょう。

「思考力の芽生え」につながる子どもが砂場で感じていること

子どもが感じているであろうことって、よく思い出してみるとたくさんあります。

  • (水が)温かい
  • (砂の中は)冷たい
  • (ここの砂は)サラサラ
  • (この砂を触ると)気持ちいい
  • (たくさん入れると)重い
  • (何度も運んで)疲れた
  • (ズボンが水で濡れて)気持ち悪い

カッコの中に書いてあることとつながると、それは気付きになりますよね。「ここの水は温かい」「だけど水道の水は冷たい」というのは、「場所によって温度が違う」という気付きです。

それから、「なんで違うんだろう」と考えたり「もしかして、あそこの水たまりも水が温かいのではないか」と予想したりするようになるんですよ。始まりは「感じる」です。

「思考力の芽生え」につながる砂場での気付き

年中、年長にもなると、次のようなことに気付いて遊んでいますよね。

  • ペットボトルに勢いよく水を入れると最後は飛び散る
  • 容れ物を地面と平行にして運ばないとこぼれる
  • 水は上から下に流れる
  • 角度をつけると勢いよく流れる
  • 勢いよく流れた水は下から上に行くこともある
  • 水と混ざった泥が服に付いたら落ちない

水を運んでいるうちに全部無くなってしまう小さい子も可愛いですが、こぼさないように慎重に歩く年少児も、少々こぼれても何往復もしたほうが良いかもと思い付く年中児も、自然とこぼれなくなってスタスタ歩く年長児も、どの姿も成長が分かって嬉しくなりますね。

保育者の援助はどうなるか

たとえば、制作や、運動会に向けての活動など、クラスでの活動をしているときに、それをやりたくない子どもがいたらどうしますか?おそらく、「促す」「誘う」「繰り返し伝える」「お願いする」「やり方を教える」「楽しさを伝える」「なぜやりたくないかを聞き出す」…等の働きかけをするでしょうか。「みんなと一緒にするための働きかけ」ですね。

砂場だと、砂をかけてしまう子どもがいたら注意をするかもしれません。これは「止めさせるための働きかけ」です。

「思考力の芽生え」につながる姿が見られる場合は、どんな働きかけをしましょうか?
考えてみてください。

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ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。