幼児期の終わりまでに育ってほしい１０の姿を、教育課程・保育課程や指導計画に取り入れなければならないみなさん。
今回は「社会生活との関わり」につながる具体的な姿を考えてみましょう。
５歳はともかく、３歳や４歳を担任している人は、１０の姿を取り入れて、子どもの具体的な姿を書き出すのは大変ですよね。
実は、無理に考える必要は無いんです。
この記事では、「１０の姿」につながる、具体的な姿を考えるためのヒントを、「社会生活との関わり」に視点を当ててお伝えしています。
この記事を読んで、書いてあることを実践できれば、「１０の姿」につながる姿を考える労力が、これまでの半分以下ですむでしょう。
それでは、具体的に説明していきますね。
教育課程・保育課程の見直し方を今までと同じにする
他の記事でも書きまくっていますが、大事なことなので何度でも書きます。
一番大事なのは、「１０の姿」ではありません。
目の前にいる子どもの姿です。
実際の子どもの姿を基にして、教育課程・保育課程の見直しをしますよね。
今までずっと、そうしてきたはずです。
もし、「１０の姿」を基にして、教育課程・保育課程の見直しをしているのであれば、うまくいかなくて当然です。
実際に見られた子どもの姿の中から、「１０の姿」につながるものを探してください。
「３つの柱」「10の姿」を踏まえた教育課程・保育過程の見直し方の中でも、「子どもの姿を見失わないように」ということを詳しく書いています。
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は、あくまでも念頭に置きながらです。
メインは発達の各時期にふさわしい生活が展開されるようにです。
教育要領や保育指針に書いてあるのは、
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を念頭に置きながら、発達の各時期にふさわしい生活が展開されるように、指導計画を作成することが大切である。また、指導計画は一つの仮説であって、実際に展開される生活に応じて常に改善されるものであるから、そのような実践の積み重ねの中で、教育課程も改善されていく必要がある。
こうです。
平成２２年に、「幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の具体的な姿」（このときは１２の姿でしたけど）が示されてから、８年も経っているので、今さら少しくらい早く見直しても、あまり変わりません。
それよりも、本質を見失わないようにしてください。
とはいえ、すでに教育課程・保育課程の大幅な見直しを始めている園もあるようです。
ということで、「社会生活との関わり」につながる姿を考えてみましょう。
「１０の姿」（社会生活との関わり）に書いてある言葉は取り入れない
まずは、「１０の姿」の社会生活との関わりについての文を確認しましょう。
社会生活との関わり 家族を大切にしようとする気持ちをもつとともに、地域の身近な人と触れ合う中で、人との様々な関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみをもつようになる。また、保育所内外の様々な環境に関わる中で、遊びや生活に必要な情報を取り入れ、情報に基づき判断したり、情報を伝え合ったり、活用したりするなど、情報を役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用するなどして、社会とのつながりなどを意識するようになる。
幼稚園教育要領解説、幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説にも同じように書いてあります。
「『社会生活との関わり』に書いてあることにつながるように」と思ってしまうと、つい、この文の中にある言葉を使いたくなりませんか？
たとえば、「地域に親しみをもつ」とか「必要な情報を取り入れ」とか「施設を大切に」とか。
使った時点で、もう不自然です。
「１０の姿」は、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿ですから。
５歳ならともかく、３歳や４歳で使ってしまうと、３、４歳の発達とは大きく違った姿になります。
と、協同性や自立心でも毎回書いていますが、「社会生活との関わり」は、単語だけ使うなら結構大丈夫ですね。
とにかく、安易に使うのはやめましょう。
じゃあ、どうすれば良いかというと、
「社会生活との関わり」 家族を大切にしようとする気持ちをもつとともに、地域の身近な人と触れ合う中で、人との様々な関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみをもつようになる。また、保育所内外の様々な環境に関わる中で、遊びや生活に必要な情報を取り入れ、情報に基づき判断したり、情報を伝え合ったり、活用したりするなど、情報を役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用するなどして、社会とのつながりなどを意識するようになる。
の続きに書いてあることを、よく読んでみてください。
幼児期の社会生活との関わりは、領域「人間関係」などで示されているように、保育所の生活において保護者や周囲の人々に温かく見守られているという安定感や、保育士等との信頼関係を基盤に、クラスの子どもとの関わりから保育所全体へ、更に地域の人々や出来事との関わりへと、次第に広がりをもっていく。なお、社会生活との関わりは、領域「人間関係」のみで育まれるのではなく、第２章に示すねらい及び内容に基づく保育活動全体を通して育まれることに留意する必要がある。子どもは、初めての集団生活の場である保育所の生活を通して、保育 士等との信頼関係を基盤としながら保育所内の子どもや職員、他の子どもの保護者などいろいろな人と親しみをもって関わるようになる。その中で、家族を大切にしようとする気持ちをもつとともに、小学生や中学生、高齢者や働く人々など地域の身近な人と触れ合う体験を重ねていく。
幼稚園教育要領解説、幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説にも同じように書いてあります。
ここには、社会生活との関わりがどのように育まれるか書いてあります。
前半部分の、「保育所の生活において保護者や周囲の人々に温かく見守られているという安定感や、保育士等との信頼関係を基盤に、クラスの子どもとの関わりから保育所全体へ、更に地域の人々や出来事との関わりへと、次第に広がりをもっていく。」というところが、大きなヒントです。
というか、もう答えですよね。
しかも非常に分かりやすいです。
「保護者や周囲の人々に温かく見守られているという安定感や、保育士等との信頼関係を基盤に」というのが、まず第一段階です。
「社会生活との関わり」の、本当のスタートは家庭ですよね。
そして、保育所や幼稚園に来た時点で、もう十分に社会生活です。
公共の施設で、他人と一緒に生活しています。
「クラスの子どもとの関わりから保育所全体へ、更に地域の人々や出来事との関わりへと、次第に広がりをもっていく」
ということで、「社会生活との関わり」は、みなさん理解しやすいのではないかと思います。
「保護者→保育士等→クラスの子ども→保育所全体→地域」というように、広げていけば良いんです。
後半部分にも、「社会生活との関わり」につながる言葉が見付かります。
- 初めての集団生活の場である保育所の生活
- 保育士等との信頼関係を基盤
- 保育所内の子どもや職員、他の子どもの保護者
- いろいろな人と親しみをもって関わる
- 家族を大切にしようとする気持ちをもつ
- 小学生や中学生、高齢者や働く人々など地域の身近な人と触れあう体験を重ねる
さらに、これらの言葉から、実際の子どもの姿を思い浮かべてみましょう。
「初めての集団生活の場」である保育所の生活自体が、社会生活との関わりそのものですよね。
社会生活だからといって、特別に保育所の外に目を向ける必要はありません。
保育者や友達との関わりの中で、相手の気持ちを考える場面や、自分が役に立つ喜びを感じている場面に注目しましょう。
それが、社会生活との関わりの、３歳や４歳の具体的な姿です。
「保育士等との信頼関係」は、協同性、自立心など、他でも出てくる言葉です。
とにかくスタートは信頼関係ですね。
５歳までは、「１０の姿」に分ける必要が無いことがよく分かります。
それから、保育所内の子ども、職員、他の子どもの保護者、小学生や中学生、高齢者や働く人々など、身近な人の範囲が段々増えていきます。
「社会生活との関わり」の後半には、
「情報に基づき判断したり、情報を伝え合ったり、活用したりするなど」と、情報の話が出てきます。
情報については、次のように書いてあります。
また、卒園を迎える年度の後半には、好奇心や探究心が一層高まり、 関心のあることについて、より詳しく知りたいと思ったり、より本物らしくしたいと考えて遊びの中で工夫したりする中で、身近にあるものから必要な情報を取り入れる姿が見られるようになる。
幼稚園教育要領解説、幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説にも同じように書いてあります。
情報については、「卒園を迎える年度の後半には」なんです。
なので、３歳や４歳で、「情報」という言葉を入れるとおかしなことになります。
続いて、こんなことも書いてあります。
保育士等は子どもの関心に応じて、絵本や図鑑や写真、新聞やインターネットで検索した情報、地域の掲示板から得られた情報などを、遊びに取り入れやすいように見やすく保育室に設定するなどの工夫をし、子どもの情報との出会いをつくっていく。
幼稚園教育要領解説、幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説にも同じように書いてあります。
図鑑で調べるとか、植物の名前を一覧にして掲示するとかは、「卒園を迎える年度の後半」の話です。
知的な関心にフォーカスを当てて環境の構成をするのも有りですが、他のもっと大事なことが薄れてしまわないようにしましょう。
もう一度ポイントをまとめると
- 「社会生活との関わり」だと分かるような言葉を無理に使わない（無理にやると発達とかけ離れるから）
- 「社会生活との関わり」につながる姿はいくらでもあり、保育所、幼稚園での生活が、社会生活との関わりそのもの
まとめ
「幼児期の終わりまでに育ってほしい社会生活との関わり」につながる姿を具体的に考える時に必要なことは
教育課程・保育課程や指導計画を、今までと同じように見直すことです。
今までは、子どもの姿を基にして見直していました。
「10の姿」を基にして見直してしまうと、今までとは違う見直し方になってしまいます。
ですので、実際の子どもの姿とは違うものになってしまったり今まで以上に労力が必要だったりします。
そして、「１０の姿」（社会生活との関わり）に書いてある言葉を安易に取り入れないことが大切です。
さらにその続きに書いてあることを参考にしましょう。
- 初めての集団生活の場である保育所の生活
- 保育士等との信頼関係を基盤
- 保育所内の子どもや職員、他の子どもの保護者
- いろいろな人と親しみをもって関わる
- 家族を大切にしようとする気持ちをもつ
- 小学生や中学生、高齢者や働く人々など地域の身近な人と触れあう体験を重ねる
保育所や幼稚園での生活が、社会生活との関わりそのものです。
保育者や友達との関わりの中で、相手の気持ちを考える場面や、自分が役に立つ喜びを感じている場面に注目しましょう。
それが、社会生活との関わりの、３歳や４歳の具体的な姿です。
最後に、「10の姿」を3歳や4歳で表にすることは求められていません。
これまでと同じように「5領域」をベースとして保育をしましょう。
これについて詳しいことは、
「１０の姿」（協同性）につながる具体的な姿を考えるヒントに書いてあります。
他にも具体的な姿を知りたいという人は、
【１０の姿】「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」のとらえ方と具体的な姿
「１０の姿」（健康な心と体）につながる具体的な姿を考えるヒント
「１０の姿」（道徳性・規範意識の芽生え）につながる具体的な姿を考えるヒント
「１０の姿」（思考力の芽生え）につながる具体的な姿を考えるヒント
「１０の姿」（自然との関わり・生命尊重）につながる具体的な姿を考えるヒント
「１０の姿」（数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚）につながる具体的な姿を考えるヒント
「１０の姿」（言葉による伝え合い）につながる具体的な姿を考えるヒント
「１０の姿」（豊かな感性と表現）につながる具体的な姿を考えるヒント
をご覧ください。
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