・ハ長調とかイ短調って言われただけで無理
・「この曲は、ト調の楽譜があるはずだけど。」とか言われても何のことだか分からない
・♭や♯は見たくない
などと思っている人はいませんか?
この記事は、「ハ長調やイ短調なんて全く分からない」という人のために書いてあります。
「調」とは何かを分かりやすく説明することから始めて、最終的に「移調(楽譜の音の高さを変えること)をできるようにする」ということを目指して書いてあります。
一旦理解してしまえば、そこから先は、悩む時間が一気に減りますよ。
ちょっと頑張って、理解できるまで読んでみてください。
1分で分かるハ長調やイ短調の意味
長調と短調の意味
ピアノの鍵盤を、左から右に向かって、適当に弾いてみましょう。
音の数は、5個でも7個でも、30個でも構いません。
良い感じに弾けたものは、忘れないように、使った音をメモして「○〇調」という名前をつけましょう。
田中さんが弾いたのは「田中調」、川西さんが弾いたのは「川西調」、長谷川さんが弾いたのは「長谷川調」、田中さんが2つ目も弾いたから「田中ver.2調」・・・
というようなことを繰り返して、ずっと昔から、「どのように音を並べたら良い感じになるか」を探してきたんです。
探しているうちに、
「音を15個も20個も並べてたらキリがないよね?」
「ドレミファソラシドレミとかだと、中途半端じゃない?」
というやり取りがあったかどうかは分かりませんが
- 音の数は、全部で8つにする
- 始めの音の1オクターブ上まで並べたら終わる
という規則で音が並んだものが、たくさん見付かりました。
「ド、ミ、ファ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド」
「ド、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド」
「ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ、シ、ド」
「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ♭、シ♭、ド」
など、並んでいる音と音の間隔が変わると、違った感じに聞こえます。
音の間隔を「半音」と「全音」にして並べると、良い感じに曲が流れることも分かってきました。
「ミとファ」「シとド」の音のように、ピアノの鍵盤が隣り合った音は「半音」
「ドとレ」「レとミ」「ファとソ」「ソとラ」「ラとシ」の音のように、鍵盤2つ隣の音は「全音」です。
たくさんある「半音」や「全音」の組み合わせの中で、特に、「これ良い感じ」と広まったものの中の2つが、長調と短調です。
(※長調や短調ではないものも、たくさんあります。)
「ド全音レ全音ミ半音ファ全音ソ全音ラ全音シ半音ド」という音の並び方が長調
音を鳴らしてみて、明るい感じに聞こえるのが長調です。
「ド全音レ半音ミ♭全音ファ全音ソ半音ラ♭全音シ♭全音ド」という音の並び方が短調
音を鳴らしてみて、暗い感じに聞こえるのが短調です。
ハ長調やイ短調の「ハ」とか「イ」の意味
ハ長調の「ハ」やイ短調の「イ」は「ドレミファソラシド(イタリア語)」を日本語で表したものです。
イタリア語
Do Re Mi Fa Sol La Si Do
(ドレミファソラシド)
英語
C D E F G A B C
日本語
ハ 二 ホ へ ト イ ロ ハ
昔の音楽の授業では「ドレミファソラシド~♪」ではなくて「ハニホヘトイロハ~♪」と歌ってたんです。
というわけで、
ハ長調とは
・ハの音(ドの音)が主役
・音を鳴らしたときに明るい感じがする調
(ドをスタートとゴールにして明るい感じがするように音を並べたもの)
イ短調とは
・イの音(ラの音)が主役
・音を鳴らしたときに暗い感じがする調
(ラをスタートとゴールにして暗い感じがするように音を並べたもの)
ということになります。
移調の意味と具体例
カラオケで「音がちょっと高いな」というとき、ボタンを押すと音を下げることができますよね。
下向きの矢印を2回押すと、半音2個分だけ、機械が自動的に音を下げてくれます。
反対に、音を高くすることもできます。
これが移調です。
長調(明るい感じのする調)は、音の高さを変えても(移調しても)長調のままです。
短調(暗い感じのする調)は、音の高さを変えても(移調しても)短調のままです。
ハ長調を半音2個分だけ低くすると
試しに、ハ長調(ドレミファソラシド)を、半音2個分だけ、低くしてみましょう。
上の鍵盤では、ドの音は④です。
ドの音を、半音2個分低くすると、鍵盤2つ分左にある②のシ♭になります。
レの音は⑥なので、半音2個分低くすると、鍵盤2つ分左にある④のドになります。
同じように、ハ長調(ドレミファソラシド)を半音2個分低くすると
ド→シ♭
レ→ド
ミ→レ
ファ→ミ♭
ソ→ファ
ラ→ソ
シ→ラ
ド→シ♭
というように音が変わります。
というわけで、ハ長調(ドレミファソラシド)を半音2個分低くすると、「シ♭、ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ、シ♭」になりました。
長調は、移調しても長調のままなので、「シ♭、ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ、シ♭」も長調です。
スタートとゴールの音が「ド」から「シ♭」になったので、「ハ長調」の「ハ」の部分は呼び方が変わります。
「ドレミファソラシド」を日本語にすると「ハ二ホヘトイロハ」です。
では、「シ♭、ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ、シ♭」は「ロ長調」でしょうか?
この場合、シに♭がついているので、「変」という文字もつけて、「変ロ長調」と言います。
ハ長調(ドレミファソラシド)の楽譜を、半音2個分だけ低くして書きかえるには
ハ長調の楽譜を半音2個分だけ低くして書きかえるときは、
「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド」
「シ♭、ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ、シ♭」
このように、並べて書いておいたものを見ながら、楽譜の音を全部、半音2個分下げましょう。
でも、シとミの音全部に♭を書くのは大変です。
音符の一つ一つに♭を書くのではなくて、次の画像のように、ト音記号とヘ音記号の横に、シとミの場所に♭を書きます。
これで移調ができました。
※ここまで「半音2個」と書いてきましたが、「半音2個」は「全音」、「1音」、「長2度」という言い方もあります。誤解が生まれにくいように、今回は「半音2個」という言葉を使って説明してきました。
続いて、他の例も考えてみましょう。
ハ長調を半音3個分高くする
次は、ハ長調を半音3個分高くしてみます。
「半音3個分」=「全音+半音」=「1音半」=「短3度」です。
手順は、半音2個分低くしたときと同じです。
- 「ドレミファソラシド」の音を半音3個分高くして「ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭、ド、レ、ミ♭」と書く(難しい人は鍵盤を見ながら、3個分数えましょう)。
- 「ドレミファソラシド」と「ハ二ホヘトイロハ」が対応しているので、「ミ」の音は「ホ」だと考える。
- ミの音には♭がついているので、「変」という言葉もつけて、「変ホ長調」になると考える。
- 楽譜の全ての音を、半音3個分高くして書きかえる。
- ト音記号とヘ音記号の横に、シとミとラの場所に♭を書く。
イ短調を半音2個分高くする
次は、イ短調(ラシドレミファソラ)を半音2個分高くしてみます。
「半音2個分」=「全音」=「1音」=「長2度」です。
手順は、これまでと同じです。
- 「ラシドレミファソラ」の音を半音2個分高くして「シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ」と書く(難しい人は鍵盤を見ながら、2個分数えましょう)。
- 「ドレミファソラシド」と「ハニホヘトイロハ」が対応しているので、「シ」の音は「ロ」だと考える。
- シの音には♭も♯もついていないので、「ロ短調」になると考える。
- 楽譜の全ての音を、半音2個分高くして書きかえる。
- ト音記号とヘ音記号の横に、ファとドの場所に♯を書く。
何点か補足します。
♭のついた音から始まる調は「変ロ」「変ホ」など、「変」という字をつけました。
♯のついた音から始まる調は「嬰」という字をつけます。
ハ長調(ドレミファソラシド)も、イ短調(ラシドレミファソラ)も、移調するときは同じ手順です。
さらに、他のどの調を、どんな調に移調するときでも、同じ手順です。
実は、「半音上げる」「長3度だけ低くする」などが目的であれば、調の名前を1つも知らなくても移調できます。
とんでもなくシンプルで簡単!カタカナのドレミで移調をする方法
楽譜がどの調なのかを知るには
楽譜に♭や♯がたくさんあると、難しくて弾きにくいです。
楽譜のことをよく知っている人に、「ト調にすれば良いのに」などと言われても、今の楽譜がどの調で、ト調が何なのかを知らないと、訳が分かりませんよね。
どの調なのかは、ト音記号とヘ音記号の横にある、♭や♯の数で分かります。
ト音記号やヘ音記号の横に♭や♯が無いとき
ト音記号やヘ音記号の横に♭や♯が無いときは、
ハ長調(ドレミファソラシド)かイ短調(ラシドレミファソラ)です。
楽譜を弾いてみて、明るい感じなら長調、暗い感じなら短調になります。
または、メロディーの最後の音がドのときはハ長調、ラのときはイ短調です。
ト音記号やヘ音記号の横に♭が1つあるとき
ト音記号やヘ音記号の横に、♭が1つ書いてあるときは、
ヘ長調(ファ、ソ、ラ、シ♭、ド、レ、ミ、ファ)か二短調(レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ♭、ド、レ)です。
これも、明るい感じなら長調、暗い感じなら短調になります。
メロディーの最後の音がファのときはヘ長調、レのときはニ短調です。
「ドレミファソラシド」と「ハ二ホヘトイロハ」が対応していること、ファの音(ヘの音)が主役だからヘ長調、レの音(二の音)が主役だから二短調ということを、思い出してくださいね。
100%ではありませんが、曲の最後は主役の音が使ってあります。
その他の場合
どの調でも、長調と短調の見分け方は一緒です。
♯や♭が無いとき
ハ長調(ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド)
イ短調(ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ)
ト音記号やヘ音記号の横に書いてあるのが♭1つのとき
ヘ長調(ファ、ソ、ラ、シ♭、ド、レ、ミ、ファ)
二短調(レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ♭、ド、レ)
♭2つのとき
変ロ長調(シ♭、ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ、シ♭)
ト短調(ソ、ラ、シ♭、ド、レ、ミ♭、ファ、ソ)
♭3つのとき
変ホ長調(ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭、ド、レ、ミ♭)
ハ短調(ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭、ド)
♯1つのとき
ト長調(ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ♯、ソ)
ホ短調(ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ)
♯2つのとき
二長調(レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド♯、レ)
ロ短調(シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ)
♯3つのとき
イ長調(ラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ♯、ラ)
嬰へ短調(ファ♯、ソ♯、ラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯)
これ以上たくさんの♯や♭がある調は、ややこしくて混乱するといけないので、載せません。
ト調にすれば?と言われたときは
「ト調にすれば?」と言われたとき、明るい感じの曲ならば、ト長調(ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ♯、ソ)にすることを目指します。
仮に、手持ちの楽譜には、ト音記号やヘ音記号の横に♭が1つついているとします。
♭が1つなら、ヘ長調(ファ、ソ、ラ、シ♭、ド、レ、ミ、ファ)です。
ヘ長調(ファ、ソ、ラ、シ♭、ド、レ、ミ、ファ)とト長調(ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ♯、ソ)の音を比べると、半音2個分(1音分)違います。
ですので、ヘ長調をト長調にするには、楽譜の全ての音を、半音2個分(1音分)高くしましょう。
最後に、ト音記号やヘ音記号の横にある♭1つを消して、ファの位置に♯をつけます。
ファの位置にシャープをつけるのは、ト長調が(ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ♯、ソ)だからです。
手持ちの楽譜に♯が3つついているなら、イ長調(ラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ♯、ラ)です。
イ長調(ラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ♯、ラ)とト長調(ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ♯、ソ)の音を比べると、イ長調の方が半音2個分(1音分)高いです。
ですので、イ長調をト長調にするには、楽譜の全ての音を、半音2個分(1音分)低くしましょう。
最後に、ト音記号やヘ音記号の横にある♯3つから、2つを消して、ファの位置の♯だけ残します。
ファの位置の♯だけ残すのは、ト長調が(ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ♯、ソ)だからです。
もし、「ト調にすれば?」と言われたときに、暗い感じの曲ならば、ト短調(ソ、ラ、シ♭、ド、レ、ミ♭、ファ、ソ)を目指しましょう。
仮に、手持ちの楽譜には、ト音記号やヘ音記号の横に♭が3つついているとします。
♭が3つなら、手持ちの楽譜はハ短調(ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭、ド)です。
ハ短調(ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭、ド)とト短調(ソ、ラ、シ♭、ド、レ、ミ♭、ファ、ソ)を比べると、半音何個分・・・?と考える必要はないですよ。
2つの調のドレミを並べて書いて、ド→ソ、レ→ラ、ミ♭→シ♭などと、2つの調のドレミを対応させて、何の音に変わるかを確認しながら、楽譜の音の高さを書きかえましょう。
最後に、ト音記号やヘ音記号の横にある♭は、ラの位置にある♭を消して、シとミの位置にある♭を残しましょう。
同じ手順で、ヘ長調も、イ短調も、変ロ長調も、ハ短調も、どの調でも移調することができます。
まとめ
移調の手順をまとめると、次のようになります。
- 手持ちの楽譜を少し弾いて、長調か短調かを確かめる(明るい感じは長調、暗い感じは短調)
- 手持ちの楽譜のト音記号やヘ音記号の横にある、♭や♯の数を確認して、どの調かを考える
- 移調したい調と、手持ちの楽譜の調の音を比べる
- 音を書きかえる
- ト音記号とヘ音記号の横の、♭や♯の数を、移調したい調と同じにする
♯や♭が無いとき
ハ長調(ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド)
イ短調(ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ)
♭1つのとき
ヘ長調(ファ、ソ、ラ、シ♭、ド、レ、ミ、ファ)
二短調(レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ♭、ド、レ)
♭2つのとき
変ロ長調(シ♭、ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ、シ♭)
ト短調(ソ、ラ、シ♭、ド、レ、ミ♭、ファ、ソ)
♭3つのとき
変ホ長調(ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭、ド、レ、ミ♭)
ハ短調(ド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ♭、シ♭、ド)
♯1つのとき
ト長調(ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ♯、ソ)
ホ短調(ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ)
♯2つのとき
二長調(レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド♯、レ)
ロ短調(シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ)
♯3つのとき
イ長調(ラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ♯、ラ)
嬰へ短調(ファ♯、ソ♯、ラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯)
実は、楽譜を書きかえるだけなら、どの調か分からなくても書きかえることはできます。
人によって、分かりやすいポイントは違いますので、この記事を読んで分かりにくかった人は、次の記事を読んでみてください。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務経験あり。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。