あなたは子どもの学びを見取っていますか?「見る」でも「見守る」でもなく「見取る」です。別に保育用語ではなく、普通に辞書に載っています。「見て理解する」「見定める」「見きわめる」という意味です。この「見取る」という言葉は教育現場でも使われています。今回は「子どもの学びを見取る」ということを、具体例を挙げて考えていきます。
同じことを繰り返す子どもをどう見取るか
ある幼稚園で保育研究会が行われ、保育後に協議が行われたときのことです。その日は指導の先生や行政の方など、幼稚園外から数人の方がご参加なさっていました。そのうちの1人が(小学校の校長先生だったと思いますが)、保育者の働きかけについて言及されたのです。「(手作りの)テントウムシを輪ゴムで飛ばしている子どもがいたが、真っ直ぐ横に飛ばし続けていた。上に飛ばしてみるよう提案しても良かったのではないか。」という内容でした。
上に飛ばしてみたら、遊びが発展して面白くなりますよね。小学校の先生らしい提案です。これに続いて、どこかの幼稚園の園長先生が同様の発言をされたように記憶しています。この2人は、「遊びが発展するように働きかけた方が良いのでは」という見取りをされたということです。惜しいことに、2人とも来賓席に座ってらっしゃいました。来賓席の2人が同様の発言をしてしまったら、他の人達はもう何も言えなくなってしまいますよね。
さて、ここでちょっと違う視点からも考えてみます。テントウムシを横に向かって飛ばし続ける子どもは、何を学んでいたのでしょうか。もし、横に飛ばし続けることで多くのことを学んでいたとしたら、上に飛ばす提案をしてしまうのはもったいないです。
同じことを繰り返す子どものどこを見るか
1つ目の見出しとそっくりの見出しを書きましたが「どう見取るか」と「どこを見るか」は違います。いろんなところを見て、最終的に見取るんです。見取るというのは「見きわめる」ということですから。では、どのような視点で子どもを見ていくかをお伝えしますね。
子どもの表情を見る
まずは子どもの表情を見ますよね。生き生きとした表情をしていたら、笑顔が多かったら、その遊びを楽しんでいることでしょう。楽しいから何度も同じことを繰り返しているかもしれません。上に向かって飛ばしたら、また別の楽しさに気付くかもしれません。予想が当たって満足そうな顔をしているときや、真剣な顔をしているとき、または不思議そうな顔をしているときは、何かを考えながら遊んでいるかもしれません。その場合は、安易に上に飛ばす提案をしない方が良いかもしれませんね。
子どもの言葉を聞く
子どもは同じことを繰り返しながら何かを言っていないでしょうか。歓声を上げているなら、ひたすら楽しんでいることでしょう。「あれ?」とか「え?」などと言っていたら、また、そこまでハッキリとした言葉にはならなくても、何かブツブツ言っていたら、何かを考えながら遊んでいるかもしれません。
子どもの動きを見る
たとえば、この記事で取り上げている「手作りのテントウムシを飛ばす」ということであれば、輪ゴムをどれくらい引っ張るか、輪ゴムのどの位置にテントウムシをセットするか、輪ゴムを引っ張ってすぐ飛ばすのか、それとも輪ゴムを引っ張って力をためてから飛ばすのか、ちょっとした動きの変化で、子どもがいろいろと考えていることが分かります。輪ゴムを2重にする、違う輪ゴムを使う、輪ゴムを止め直すなど、他にも工夫がいろいろとありますよね。そのような姿があれば、ただ単に横に向かって飛ばしているのではないことが分かります。
これまでの姿を思い出す
子どもはこれまでに、どんな姿を見せていたのでしょうか。毎日のように飛ばし続けて、惰性でやっている状態でしょうか。それとも、今日初めて飛ばすことを思い付き、楽しくやっているのでしょうか。それは、ずっと見てきた保育者にしか分からないことです。保育指導案に子どもの姿が書いてあったとしても、細かいところまで伝えきることはできません。1番分かっているのは保育者なんです。「相手がどんな重鎮だろうが、この子どもを1番分かっているのは自分」と思えるくらいに、子どもをしっかり見ていきましょう。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。