子どもにとって「友達と一緒に遊ぶ」ということは大人とはちょっと違うのかという話

子どもにとって「友達と一緒に遊ぶ」とはどういうことでしょう?どうやら大人とはちょっと違うようです。「今日は誰と遊んだの?」「何をして遊んだの?」と聞いても、要領を得ない返事をされることがありますよね。子どもにとっての「友達と一緒に遊ぶ」がどういうものかを、実際の子どもの姿から詳しく考えてみましょう。
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「友達と一緒に遊ぶ」が大人の感覚と違うのではという主な例

子どもにとっての「友達と一緒に遊ぶ」が大人の感覚と違うのは、主に次のような場合が考えられます。

  • 一緒にいないけど「一緒に遊んでいる」と思っている
  • 一緒にいるだけで遊んでいない
  • 「一緒に遊んでいた」と思っているけど友達と思っていない
  • 一緒にいたけど「一緒に遊んでいた」と思っていない
  • 誰がどう見ても一緒に遊んでいたけど「一緒に遊んでいた」と思っていない
  • すでに満足してしまったから一緒に遊ばない
  • 誰とも一緒に遊んでいないのに「一緒に遊んだ」と思っている

では、それぞれ具体例を挙げてみますね。

一緒にいないけど「一緒に遊んでいる」と思っている

子どもは「一緒に遊ぼう」と言いながら離れた場所にいることがあります。その状況がよく見られるのが「おうちごっこ(家族ごっこ)」です。家でご飯を作っている子どもが数人いる中で、仕事に出かけたお父さんが帰ってこない、買い物に出かけたお姉ちゃんが帰ってこない、虫捕りに出かけた子どもが帰ってこないなどが当たり前のようにあります。このような場合、一緒の場所にはいないけど「一緒に遊んでいる」と思っていることがあります。

おうちごっこをしているAちゃんがステージのショーを見にきて観客になり、すぐに場を離れていく場合、大人は「落ち着きが無い」「1箇所でじっくり遊ぶことができない」と判断してしまうことがあります。本当は、大人がAちゃんの遊びを把握してないだけなんですよね。

たとえば、大人の場合、大勢で飲み会をすることがあります。最初に決められた座席から離れて、遠くのテーブルで話をし、さらに隣から呼ばれて…というように、元いた場所に帰ってこない人がいますよね。大人と子どもはちょっと感覚が違うと言いましたが、「違うところに行って帰ってこない」という点では似たようなものですね。

一緒にいるだけで遊んでいない

「明日一緒に遊ぼう」と約束したのに、「朝からずっと一緒にいるだけで遊んでいない」という場合があります。2人で手をつないで、他の子ども達の遊びを眺めたり水槽を覗いたり。保育者の後ろをついて歩くだけなんてことも。

これ、遊んでないように見えて、気持ちは満足していることがあります。友達のことが好きで、一緒に遊びたくて、実際、ずっと一緒に行動していますから。遊びに関してすごく充実しているかというと、そうではないかもしれませんが。保育者の後ろをついて歩くのは、何か面白いことがないか期待しているのかもしれません。

たとえば、大人や中高生の場合、一緒に遊ぶ約束をして、ひたすら街をぶらぶら歩くことがあります。友達と一緒であれば、周りの様子を見て他愛もない話をしているだけで楽しいですよね。特に何をして遊んだということが無くても、「昨日は○○ちゃんと遊んだ」ということになるでしょう。 大人と子どもはちょっと感覚が違うと言いましたが、「気の合う人と一緒にいれば特別なことがなくても満足」という点では似たようなものですね。

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「一緒に遊んでいた」と思っているけど友達と思っていない

子どもが誰かと遊ぶとき、次の2つのパターンがあります。1つは、先に遊ぶ相手を決めて、「何する?」「砂場で遊ぼう」などと、後から何をするか決める場合。もう1つは、砂場などで遊ぶことを先に決めて、たまたまそこで一緒になった誰かと遊ぶ場合です。

先に遊びを決めている場合、元々その遊びをしたかったのですから、1人でも十分に遊ぶことを楽しんでいます。そして、そこで一緒になった誰かと一緒になって遊びを作り上げるのも、また楽しいものです。そのような経験を繰り返し、友達になっていくんですよね。ですから、最初のうちは別に友達ではないんですよ。

こんなことを言うと、中にはちょっと怪訝な顔をする人もいるんですけど、よくある話です。小学生や中学生も、「別に友達じゃない」「同じクラスの人」という言い方をします。だけど、同じクラスの人とは一緒に活動をしたり遊んだりすることがあります。大人と子どもはちょっと感覚が違うと言いましたが、「別に友達ではないけど、遊んでいるうちに仲良くなって友達になる」という点では似たようなものですね。

相手のことを「友達と思っているかどうか」については、関連した記事を書いているので、そちらも読んでみてください。

「うちの子、『友達がいない』って言うんです。」などと、心配している人はいませんか?「家に行ったことがないと友達ではない」と思っている子どももいます。一般的な意味での「親友」を「友達」と思っている子どももいます。そうなると、小さいうちは友達がいない場合もありますよね。

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一緒にいたけど「一緒に遊んでいた」と思っていない

これは、先ほどの例と少し似ています。まず、「子どもが他の子どもと関わるときには、大体次のような段階がある」ということを知っておいてください。

  • 1人遊び…他の子が近くで遊んでいても、全く関わらない
  • 傍観的行動…他の子の遊びを見る、近づく、話しかける
  • 平行(並行)遊び…他の子の近くで遊び、似たような道具を使う
  • 連合遊び…他の子と遊ぶが、自分がやりたいことをやりたいようにしながら遊ぶ
  • 協同的、組織的な遊び…他の子と何らかの共通な目的をもって遊ぶ

上の3つだと、一緒にいても「一緒に遊んだ」という認識はないでしょう。成長に従い、下の方に書いた遊び方が見られるようになってきます。ですので、これに関しては、ハッキリ大人とは違う感覚でしょう。

ですが、小中学生や大人の場合でも、同じような状況はあります。ゲームセンターで知らない人の隣でゲームをしているような場合です。この場合、同じ場にはいますが一緒に遊んではいません。 大人と子どもはちょっと感覚が違うと言いましたが、「たまたま同じ場にいて同じ遊びをすることもある」という点では似たようなものですね。

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誰がどう見ても一緒に遊んでいたけど「一緒に遊んでいた」と思っていない

誰がどう見ても一緒に遊んでいるんだけど、そうは思えない子どももいます。「入れて」「いいよ」などの形式にとらわれている場合です。これも、以前「友達と仲間の違い」として記事に書いていますので引用します。

同じ遊びをしていても、会話をしていても、遊びのスタートに「一緒に遊ぼう。」や「入れて。」「いいよ。」が無いと、「一緒に遊んだ」と思わない子どももいます。反対に、「一緒に遊ぼう。」や「入れて。」「いいよ。」で遊びが始まっても、別々に遊んでいることもあり、それでも、「一緒に遊んだ」と思っていることがあります。

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実は、これも大人の世界で似たようなことがあるんですよね。誰がどう見ても付き合っている2人がいて、それなのに、「え?俺達付き合ってないの?」という場合です。「付き合ってください」「はい」のようなやり取りが無いと、付き合っていることにならない人がいますよね。「私たち付き合ってるんだよね」と確認をするということもあるのではないでしょうか。 大人と子どもはちょっと感覚が違うと言いましたが、「型通りのやり取りを必要とする人もいる」という点では似たようなものですね。

すでに満足してしまったから一緒に遊ばない

「明日一緒に遊ぼう」と約束をした次の日、登園時に出会った2人が「昨日約束したよね」と確認し合い、その後は一緒に遊ばない…なんてことがあります。おそらく、「昨日約束したよね」と確認した時点で気持ちが満たされているんですよね。互いに約束を覚えていて、登園時に気持ちが通じ合ったということで十分なんです。実際には、面白そうな遊びを互いに見つけたら、別々に遊んでいることがあります。

大人の場合、たとえばSNSで仲良くなってZoomで1回話をしてみたら、「なんかもう十分かな」ということがあるのではないでしょうか。 大人と子どもはちょっと感覚が違うと言いましたが、「1度盛り上がって実現されたらそれで満足することもある」という点では似たようなものですね。

誰とも一緒に遊んでいないのに「一緒に遊んだ」と思っている

子どもが誰とも一緒に遊んでいないのに、「一緒に遊んだ」と思っている場合もあります。低年齢で見られることがあるため、正確な話を聞き出すことはできませんが、おそらく「○○組さんはみんな友達」という思いから想像の中で一緒に遊んでいることになっているのではと推測します。

これはさすがに低年齢のうちに見られる姿であって、大人の場合、妄想することはあっても、実際に「○○さんと一緒に遊んだ」「旅行に行った」などと言葉に出すと虚言癖があるということになってしまいます。子どもの遊び方としては普通のことですけどね。

まとめ

子どもにとっての「友達と一緒に遊ぶ」が大人の感覚と違う…ということで書き始めたこの記事ですが、実際に違うのは最後の1例ぐらいであって、他の6つの場合は子どもも大人も似たようなものだということが分かって頂けましたでしょうか。

子どもにとっての「友達と一緒に遊ぶ」という感覚は大人が思う「友達と一緒に遊ぶ」とは違う

ではなくて、

子どもにとっての「友達と一緒に遊ぶ」という感覚は大人が子どもに求める「友達と一緒に遊ぶ」とは違う

なんですよね。

子どもも大人と似たようなものです。「詮索はされたくなくて、話したいときに話を聞いてもらいたい」という部分も一緒だと思って子どもと関わってみてはいかがでしょうか。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。

ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・

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ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。