「本当は叱りたくないけど、叱らないと子どもが言うことを聞かない」「どれくらい厳しく叱ればよいか、分からなくなる」などと思っているあなた。
この記事では、保育や子育てにおいて、どのようなときに子どもを叱るのか、それとも叱らない方が良いのか、叱らないのであれば他に何ができるのかを考えていけるようになっています。
結論から言うと、つい叱ってしまうことはあっても、叱るべき場面って、基本的に無いんですよ。そう思えるようになるくらい、「叱る」以外の方法を数多くあげています。この記事に書いてあることを実践するのは簡単だとは言いませんが、叱ることについて考えてみたい人は続きを読んでみてください。
そもそも「叱る」とは
「叱る」と「怒る」は違うとか、どんな場面だろうが叱る必要は無いとか、キチンと叱らないとワガママになるとか、色々とややこしいことは置いといて、まずは「叱る」の意味についてハッキリさせたいと思います。
しか・る [0][2]【叱る・呵▼る】( 動ラ五[四] )①(目下の者に対して)相手のよくない言動をとがめて、強い態度で責める。 「子供のいたずらを-・る」②怒る。 「猪のししといふものの、腹立ち-・りたるはいと恐ろしきものなり/宇治拾遺10」
引用:三省堂 大辞林 第三版(weblio辞書)
「叱る」は、「相手のよくない言動をとがめて、強い態度で責める。」という意味なんですね。「子どもをキチンと叱るべき」と言っている人も、子どもを強い態度で責めているのでなければ、実際には叱っているのではなくて、「諭す」とか「言い聞かせる」などという状態だと言えます。
現状、「叱る」「叱らない」を語るときに、「私は子どもを叱りません」という人は、「諭す」も「言い聞かせる」もせず、「何もしない人なんだ」と誤解されている可能性があります。反対に、「私は子どもを叱るべきときにキチンと叱ります」という人は、実際には「諭す」の状態でも、「子どもに向かって大声をあげる人なんだ」という誤解を受けているのかもしれません。
この記事では、辞書にあるように、大声を出すとか、威圧的であるなど、子どもに対して強い態度で責めることを伴うものを「叱る」と捉えて書き進めていきます。
叱る以外にできること
・諭す
・言い聞かせる
・教え導く
・示唆する
「叱る」は対症療法
「予防歯科」って知っていますか?ムシ歯などになってからの治療ではなく、ムシ歯になる前の予防をしっかりとすることです。
「子どもがよくない言動をしたから叱る」というのは、「虫歯になったから治療する」「痛みがあるから痛み止めを処方する」というのと同じことです。「叱る」は、表面に表れる状況に対応して物事を処理しているので、対症療法なんです。
予防歯科と同じように考えると、そもそも、子どもが「よくない言動」をしなかったら、叱る必要は無いんですよ。これについて、Twitterでおもしろいツイートがあったので紹介します(掲載の許可は頂いています)。
2歳クラスで最近
トラブル多発中なのですが分析の結果
シャツとパンツが
ピチピチの子が
イライラしているかも?
との事で早速
本日 保護者の方に
ワンサイズ大きめの
洋服の用意を
お願いしてみます— tack sugou (@SugouTack) June 23, 2020
トラブル多発中って、何があったんでしょうね。もしかすると、隣にいる子を押して転ばせてしまったかもしれないし、オモチャの取り合いがあったのかもしれません。
これらのようなことが起こったときに「押したらダメでしょ!」と叱るとか、「◯◯ちゃん、痛いって言ってるよ」と現状を伝えるとか、子ども同士のトラブルにならないよう間に入り、大人が痛い思いをして、気持ちを伝えるなどするのが対症療法です。
ワンサイズ大きめの洋服の用意をお願いし、子どものイライラする原因を無くすのが、予防歯科と同じ考え方ですよね。先程のツイッターの例では、サイズが大きい服になってから、トラブルが減ってきているそうです。
他にも、洋服に関しては大きさの他に、服の素材や、縫い目、タグなどが肌に合わない場合がありますし、服以外でも、部屋の温度、湿度、眩しすぎる日差し、大きな音、靴下、髪を結ぶゴム等、子どもがイライラしてしまう原因はたくさんあります。ですが、ここで紹介したツイートの保育士のように、何が原因なのかを考えることができたら、叱る必要は少なくなっていくでしょう。
叱る以外にできること
・よくない言動をした結果どうなるかを伝える
・よくない言動をされたらどう思うか気持ちを伝える
・よくない言動が表われた原因を分析し、改善する
・よくない言動が表われないよう、環境を整える
自分の言動をコントロールする
子どもの「よくない言動」となる原因を、できるだけ改善していくことは必要ですが、原因を全て取り除くことはできませんよね。また、子ども自身が少しずつ自分でなんとかしていく必要もあります。
先程のツイッターの例で言うと、2歳児の時点では服を替えてもらえば良いのですが、年中や年長にもなれば「服がキツくて我慢できない」ということを言えるようになった方が良いし、イライラしているからといって、周りに当たり散らしてよいことにはなりません。
イライラや悔しさなどと向き合う姿は、たとえば、トランプやオセロなどのゲーム時に見られます。周りの子ども達は何枚も取っているのに、自分は取れない…最初は張り切って集中していたはずが、周りが気になって様々な方向に視線が向くようになり、その場に座っているのも嫌になってくる…
そう思って見ると、「負けた後、ゲームの場から逃げる」「ゲーム中にふざける」「途中で止める」などは、イライラを爆発させないための行為でもあると分かります。子どもは自分で、アンガーマネジメントをしているんです。それを、より上手くできるように手助けをすると思えば、「みんなが待ってるのにふざけるんじゃない!」などと叱らなくてもすみます。
たとえば、深呼吸をすることや、勝ち負けではなくゲーム自体を楽しむこと、水筒のお茶を飲むこと、仲の良い友達と手をつなぎながら参加することなど、子どもがなんとなくやっていることを言語化したり落ち着けるように声をかけたりと、叱る以外にできることはたくさんあります。
叱る以外にできること
・子どもが無意識にコントロールしていることを言語化する
・言動をコントロールする方法を伝える
・言動をコントロールする方法を子どもと一緒に考える
ティーチングとコーチング
ここでもう一度、「叱る」の意味を確認します。「叱る」とは、「相手のよくない言動をとがめて、強い態度で責める。」という意味でした。「強い態度で責める」ということをしない場合、それは「叱る」ではなく、「諭す」とか、「言い聞かせる」「教え導く」「示唆する」などと言えます。これらはみんな、相手に対して答えを与えるものです。「叱る」は下の図でいうと「激」寄りで与える働きかけですね。
すごくザックリとした言い方ですが、相手に教えること、答えを与えることをティーチングといいます。相手から思いや考えを引き出すのがコーチングです。
叱りたくなるような場面だったとしても、「どんな状況だったのか」「そのとき、何と言ったのか(何をしたのか)」「相手はどう思っただろうか」などと、子どもに問いかけていくことで、子どもが自分で考え、答えにたどり着くことができます。コーチングについては、いずれ詳しい記事を書く予定です。
叱る以外にできること
引き出す働きかけ
・客観視できるように事実を聞き出す
・言動を振り返ることができるように問いかける
与える働きかけ
・「諭す」や「言い聞かせる」など
まとめ
この記事では、実は3つの段階に分けて子どもへの働きかけを紹介してきました。
- そもそも子どもが穏やかに過ごせるようにする
・よくない言動が表われた原因を分析し、改善する
・よくない言動が表われないよう、環境を整える - 自分の言動をコントロールする手助けをする
・子どもが無意識にコントロールしていることを言語化する
・言動をコントロールする方法を伝える
・言動をコントロールする方法を子どもと一緒に考える - 自分の言動を振り返る手助けをする
引き出す働きかけ
・客観視できるように事実を聞き出す
・言動を振り返ることができるように問いかける
与える働きかけ
・「諭す」や「言い聞かせる」など
あえて、子どもを叱るべきタイミングはいつかを考えるとしたら…この図で言うならば、3番目の「自分の言動を振り返る手助けをする」ときで、さらに、子どもから引き出すのではなく、答えを与える方を選び、子どもを強く責めたいときです。
「叱る」は数多くある手段の中の1つです。他にも手段はいろいろとありますよ。冒頭でお伝えしたように、決して簡単とは言いませんが、少し視野を広げてみてはいかがでしょうか。
関連記事
【怒ると叱るはどう違う?】怒ったときの行動を具体的に考えると比べるものでもないことがよく分かるという話
【叱るとは?】叱る派も叱らない派も同じことをしている場合があるので子どもへの具体的な対応で語ろうという提案
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。「もっといろいろと知りたい」という方は、ホームページや、このサイトの記事が一覧になったサイトマップをご覧ください。
管理人うち(@uchi70794834|Twitter)
Follow @uchi70794834
保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務経験あり。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。