小学校や中学校が主専攻のみなさん、実習お疲れさまでした。
これから始まる、幼稚園での実習も疲れますよ。
幼稚園での実習は、小学校や中学校の実習とは、全くと言っていいほど別物です。
実習に来た多くの学生が、「想像と全然違った。」と言います。
甘く見ていたわけではないでしょう。
想像がおよばなかったのだと思います。
そこで、みなさんが校種間のギャップに戸惑わないよう、次のことをお伝えします。
・事前準備のこと
・記録のこと
・指導案のこと
・子どもへの接し方のこと
この4つです。
副免を取るための実習は期間が短いです。
とまどったままで実習が終わってしまわないよう、行く前に知っておきましょう。
小中学校とは違う子ども達を相手にするための事前準備
事前の準備が必要なのは、小中学校の実習も同じことです。
しかし、みなさんは、小学校や中学校のことを専門に勉強してきたはず。
専門に勉強してきた小中学校の実習が、あんなに大変なんです。
専門外の幼稚園実習に対しての準備を、しっかりとすることが必要です。
話を聞くのはこんな人
実習で具体的にどんなことをするのか、行く前にできるだけ詳しく知りたいことでしょう。
そのときに、話を聞くべき人は、保育専攻の友だちではありません。
なぜなら、副免で幼稚園の免許を取る学生がする実習は、本実習とは別物だからです。
そして、保育専攻の学生は、保育について勉強してから実習に臨んでいます。
そのため、副免の実習生が苦労するポイントが分からないのです。
話を聞くべき人は、同じ立場だった人です。
小中学校を主専攻として、副免で幼稚園免許を取った先輩達に、話を聞きましょう。
できれば、幼稚園で働くことになった先輩に話を聞くのが良いですね。
小中学校で働くようになると、幼稚園実習のことは忘れてしまいますから。
読んでおくのはこんな本
子どもの発達についての本を読んでおきましょう。
「4歳では、大体このような姿が見られます」みたいな本です。
当然のことですが、小学生や中学生とは違う子ども達です。
その違いが、実習生のみなさんが想像している以上に大きいです。
ここが分かっていないと、指導案も、子どもへの関わり方も、全部がうまくいきません。
できるようになっておきたいのはこんなこと
手遊び、歌、みんなでできるゲームなど、いくつか知っておきましょう。
そして、知るだけではなく、できるようになっておきましょう。
改めて後でも書きますが、あなたのできることに子どもを合わせようとしてはいけません。
子どもの実態に合わせて、あなたのできることの中から、ピッタリのものを選ぶのです。
この選択肢が限られた実習生が多いです。
絵本や紙芝居などを、図書館で読んでおきましょう。
これも、選択肢は多い方が良いです。
面白いと思ったものでも、実習では読ませてもらえないこともあります。
絵本が面白くても、そのときの子どもの生活に合わないものかもしれません。
難しすぎたり表現が不適切だったりすることもあります。
小中学校とは違う記録の取り方
幼稚園の記録の取り方は、小中学校とは違います。
「実習生が保育や授業をできるようになるための記録」という点はもちろん同じです。
しかし、授業と保育では進み方が違い、子どもへの関わり方が違います。
そのため、記録を取る視点を保育用に変えないといけません。
小中学校での記録の取り方
指導する教師によって異なりますが、小中学校では、次のようなことを記録しますね。
・教師が何と発問をしたか。
・それに生徒がどう反応したか。子どもの様子は?
・教師が次にかけた言葉は?どのような間をとったか。
・板書の仕方
・時間配分
もちろん他にもいろいろあるでしょうが、大体このような感じではないでしょうか。
保育での記録の取り方
保育での記録の取り方はこうです。
・子どもがどこで誰とどのように遊んでいるか、何を見てどんなことを考えているか
・保育者の関わり方(言葉、動き、表情など)
・子どもの遊び方や表情がどうなっていったか
「こんなの全部を記録できるわけないでしょ。」
と思った人、その通りです。
小中学校でも、全部は記録しきれませんよね。
「これは大事」と、思ったところを中心に記録するのは同じことです。
具体的には
先生によって、どんな記録の仕方をするか、指導の仕方が違います。
しかし、言葉以外の情報をたくさん記録しないといけないことは確かです。
そうしないと、保育者が何を意図して子どもに関わったのかが分かりません。
具体的に、どのような記録の仕方をすれば良いのかは、担当の先生に確認をしましょう。
小中学校とは違う指導案の書き方
指導案の書き方も、小中学校とは違います。
教科では、単元を中心にして指導案を書きます。
保育では、子どもの発達を理解することから始めます。
そのため、教科の指導案と保育の指導案では、書き方が変わってきます。
教科の指導案の様式
様式が統一されてはいないので、多少の違いはありますが、教科の指導案はこんな感じです。
1 単元名
2 単元の目標
3 単元の評価規準
4 展開計画
5 指導上の立場
○単元観
○児童観
○指導観
6 本時案
子どもについての記述は、「5 指導上の立場」の中の1部です。
子どもの姿を大事にしている学校では、書く順番が変わります。
「3 指導上の立場」の場合もありますね。
保育の指導案の様式
保育の場合は教科の指導案と順番が全然違います。
保育でも、様式は統一されていません。
園によっても違いますし、週案か日案かでも変わってきます。
いろいろとありますが、指導案を書くときの流れとしてはこうです。
1 子どもの実態
2 ねらいと内容
3 環境の構成・援助
数字で順番をつけずに、図を配置したように表すことも多いです。
みなさんは、当然、大学で指導案の書き方についても教えてもらっているはずです。
しかし、細かい部分は指導する先生によって違うかもしれません。
どのような形で書くかは、指導してもらう担当の先生に確認をしましょう。
副免での実習であれば、おそらく部分実習でしょう。
1 子どもの実態
2 ねらいと内容
3 環境の構成・援助
4 活動の具体的な流れ
このような形になると思います。
いずれにせよ、子どもの姿を基にして指導計画を立てます。
指導する単元がまずあって、そこから何をするか決める教科とは違うところです。
保育は、保育者の知っている手遊びをどう教えるかではありません。
子どもの姿に合わせて、どの手遊びをするか、どの絵本を読むかが変わります。
そのため、実習生のみなさんには、手遊びなどをたくさんできるようになっておいてほしいのです。
ねらいのたてかたの違い
単元の目標をたてるときには、学習指導要領解説の目標を参考にしますね。
その際、学習指導要領解説に書いてある目標の言葉を一部分使って、指導案の目標の文を書きます。
これは、文科省の教科調査官をしていた方が、大学で教えていた方法です。
さらに、本時のねらいをたてるときには、単元の目標を参考にします。
みなさんも、大体このような手順で、単元の目標、本時のねらいをたてているのではと思います。
保育では、子どもの実態が基になります。
幼稚園教育要領解説のねらいを参考にしますが、言葉の一部を使うことは少ないです。
幼稚園教育要領解説の、ねらいと内容は、年齢別に分かれていません。
この点が、学習指導要領とは違います。
学習指導要領解説では、学年ごとに、目標と内容が記載されています。
だから、目標の文の一部を使うことで、授業で扱うことに添った目標をたてられます。
幼稚園教育要領では、年齢別に分かれていない、ねらいと内容が記載されています。
だから、ねらいの文の一部を使うと、今の子どもの実態に合わないことがあります。
年齢別どころか、1ヶ月違うだけで、子供の姿は全く変わります。
副免の部分実習であれば、1ヶ月どころか、1日の中の、さらに一部です。
小中学校での、指導案の目標を書くときと同じ方法は使えません。
今まで一生懸命やってきた書き方は、一旦やめないと、幼稚園の指導案は書けません。
ねらいは、子どもの姿を基にしてたてるものです。
指導案に使う言葉も違います。
小中学校では、教師目線で書きます。
「育てる」「豊かにする」「できるようにする」「伸ばす」などですね。
幼稚園では、子どもの姿で表します。
「感じる」「遊ぶ」「触れる」「味わう」などです。
ねらいに対しての環境の構成・援助
副免で幼稚園実習に来る人たちは、指導案に、高度すぎるねらいを書いてしまいます。
こうなってしまう理由は、先ほど書きました。
子どもの姿からでなく、教育要領解説の文を使って、ねらいをたてているのが、原因の1つです。
もう1つの原因は、子どもの実態が分かっていないから。
だから、実習に来る前に、子どもの発達についての本を読んでおいてほしいのです。
ねらいに対して、環境の構成・援助は、足りていないことが多いです。
本に書いてある文を写すと、ねらいをたてても、それに対して何をして良いかが分かりません。
だから、環境の構成・援助が書けないのです。
そして、小中学校の感覚で子どもを見ていると、環境の構成・援助は思いつきません。
小中学生は、パペットや空想のケーキが登場しなくても、話を聞きます。
聞いてなくても、イスに座っていると授業が成立したように見えます。
保育では、子ども達1人1人に、細やかな配慮が必要です。
合わせてこちらの記事もご覧ください。
【保育現場で働いていても見失うことがある】部分実習の保育指導案を書くときに分かっておきたい根本的な2つのこと
小中学校とは違う子どもへの接し方
よく言われるのは、子どもの目線になって、子どもの話に耳を傾けて、というようなことです。
これらは、まず最低限必要です。
そして、実習生のみなさんが思っている以上のことをやらないといけません。
ある程度やっても、たぶん、小学校低学年向けくらいの対応ですよ。
話し方にも気をつけましょう。
みなさんが思っている以上に早口になっています。
子どもの前で話すときには、緊張からか、さらに早口になってしまいます。
小学校の低学年で実習していた人も、安心はできません。
幼稚園の先生と、小学校低学年の先生では、話し方が全然違いますよ。
年中の先生と年長の先生でも違います。
同じ年長でも、年長になってすぐと、修学前など、私は意識して話し方を変えています。
声の大きさ、トーン、一部分だけ強調するなど、指導の先生の話し方を、よく聞いてください。
上に書いたようなことを、実習生のみなさんに伝えるのですが、うまくいかないこともあります。
実習生のみなさんが困っていたことを具体的に言うと・・・
「今から○○するから、お話聞いてね。」って言っても、最初しか聞きませんよ。
「静かにしましょう。」って、騒ぎ始めてから言っても、静かになりませんよ。
「集まりましょう。」って言っても、一度気持ちが離れたら集まりませんよ。
それを何回繰り返して言ったとしても、騒ぎが大きくなるだけです。
だから、事前の準備が必要なんです。
小中学校のことを一旦忘れて、幼稚園の子どものために、感覚を変えないといけません。
そして、保育をする前の準備も必要です。
どんな場所で、どのように集まって話を聞くのか、何をするのか、使う道具は、などなど。
さらに、どのようなことを、どのように話して導入するのか、途中でどのように声をかけるか。
授業をするのにも、もちろん準備が必要です。
保育実習よりも、ずっと厳しいのではないかと、個人的には思います。
小中学校の実習を、なんとか乗り越えたみなさんは、十分に力があるはずです。
しかし、残念なことに、副免の実習はあまりにも期間が短いです。
そして、小中学校での感覚で保育実習をすると、言葉で子どもを動かそうとしてしまうのです。
準備もしていないのに、幼稚園の先生の一言で、子どもが言うことを聞くのは、
これまでに信頼関係ができあがっているか、
言われることをすぐに聞きたくなるくらい魅力的な先生か、
あなたが気付かないだけで、環境の構成や保育の流れがすばらしいか、
ものすごく話し方のうまい人か、
よっぽど子どもを仕込んであるか、
ものすごく怒っているか、
大体この中のどれかでしょう。
みなさんに、よほどの才能がない限りは、事前の準備が必要です。
まとめ
副免で幼稚園実習に来る人達は大変です。
今まで一生懸命に学んできたことを一旦やめて、感覚を変えないとできませんから。
それなのに、実習期間はすごく短いです。
たったそれだけで幼稚園免許を取ろうというのですから、大変で当然です。
実習前にこの記事を読んだみなさん。
とにかく準備をしましょう。
・先輩に話を聞くこと
・子どもの発達の本を読むこと
・手遊びやゲームなど、引き出しをたくさんもっておくこと
これらの準備をする中で、保育の感覚を身に付けておきましょう。
そして、記録の取り方、指導案の書き方、子どもへの接し方など、今までのことは一旦忘れましょう。
小中学校でしてきたこととは大きく異なるからです。
保育実習で指導を受ける先生に、一から教わってください。
保育実習後に、「心が折れました。」と言わないですみますように。
わざわざ検索して、この記事を読むような人は、しっかり準備をできる人だと思います。
十分に備えてくださいね。
続いてこちらの記事もどうぞ
【実習前に教えてほしかった・・・】「保育実習」で1番大事な心構え
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「もっといろいろと知りたい」という方は、