あなたは、インプットとアウトプットのバランスについて考えたことがありますか?「インプット」「アウトプット」なんて、保育をしていてあまり聞かない言葉かもしれませんね。ですが、「保育が上手くいかない」「子どもが言うことを聞いてくれない」「こんな書類、書いてどうなるの」…などの悩みの全てに通じる話です。
インプットが多すぎる保育の現場
まず、保育の現場って、インプットすることが多すぎるんですよ。なぜなら、保育現場では、子どもの人数分だけ覚えておくことがあるからです。当サイト(保育塾)の記事で、「こうである」と断言することはあまりないのですが、これは断言できます。
アレルギーやその日の体調に関することなどは、命の危険につながる可能性もあるので絶対に覚えておくべきことです。また、子どもの性格というか、「この子はこのような関わり方をすると話が通じやすい」というような、個々の子どもの特徴は分かる限り覚えておいた方が良いですよね。「Aちゃんはこんな遊び方をしていたから、次はこれを用意してみよう」と、日々の姿を見るのもインプットです。これらを担任している人数分だけすると思うと、インプットの量が多すぎることが分かります。
保育士の特殊能力としては、「あ、あの人はBちゃんのおじいちゃん」と、めったに見ない保護者さんを網羅している人や、落とし物のハンカチを誰のものか覚えている人までいますよね。これらも全部、インプットしていることです。
折り紙の折り方も、子ども達と歌う曲の歌詞も、今日の何時に隣のクラスと合同で活動するかも、事務的な仕事をするのに必要なことを覚えておくのも、保育指針や研修等で学ぶこともインプットです。
人間はインプットしたことを忘れる
「人間は忘れる生き物」と言われます。「忘れることを前提にして勉強をしよう」という勉強法とか記憶術のようなこともあって、今お伝えしているのは、それらと似たようなことです。
ここで、インプットしたことをどれくらいで忘れてしまうのか、確認しておきますね。
脳に入力された情報は、『海馬』というところに仮保存されます。その期間は、2〜4週間です。海馬の仮保存期間中に、その情報が何度も使われると、脳はその情報を『重要な情報』と判断し、『側頭葉』の長期記憶に移動します。
引用:学びを結果に変える アウトプット大全 樺沢紫苑(サンクチュアリ出版)
忘れっぽい人は、2週間もしないうちに忘れてしまうような気もしますが、引用した文章に書いてあるのは「脳の保存期間」の話ですからね。とにかく、覚えているつもりでも、何もしないと2~4週間で消えてしまうんです。そうならないためには、「仮保存期間中に、何度も使われる」ということですね。
そうかといって、保育現場で「仮保存期間中に、何度も使われる」ができるかというと、インプットされる情報が多すぎてできないんですよ。なにかと忘れがちな人や、保育中に子どもをただ漠然と眺めていたり子どもと戯れていたりする人は、情報量がその人のインプット能力を超えてしまっているかもしれません。
インプットとアウトプットの仕方を変える
ここで、普段の仕事の仕方を見直す提案です。インプットとアウトプットの仕方を見直すことを考えてみましょう。
インプットすることを減らす
保育現場はインプットすることが多すぎるので、「あえてインプットしない」を作りたいところです。「書類仕事は意味が無いから」「滅多に来ないおじいちゃんのことまで覚えておかなくても…」ではなくてですね、「みんなでやろう」「園全体で取り組もう」みたいなことを、言葉通りに全員でするのを止めましょう。単純に、することが多いと覚えることも多くなりますから。本当にそれが適切な人数なのかを考えましょう。
たとえば、会議を全員ですると、必ずその場にいるだけの人がでてきます。情報共有だけならば、会議自体やめてしまっても問題ないですよね。また、特に作り物や掃除などは、人数が増えるほどみんなが手抜きをします。
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受け取り方を変える
冒頭の「保育が上手くいかない」「子どもが言うことを聞いてくれない」「こんな書類、書いてどうなるの」は、全てインプットとアウトプットの仕方によって変わってきます。「保育が上手くいかない」は、ちょっと漠然とし過ぎているので、「子どもが言うことを聞いてくれない」の話をしますね。子どもが言うことを聞いてくれないのも、「保育が上手くいかない」の1つでしょうから。
画像の漫画は、食べ物で遊ぶ子どもへの対応をまとめて、それを漫画にしてもらったものの1部です。まず、「食べ物をひっくり返す」という子どもの姿があります。いろんな子どもがいますので、ひっくり返さないことも当然あるんですけど、この子が食べ物をひっくり返すという事実は変わらないですよね。
事実は変わりませんが、それをどう受け取るかは変えることができます。この漫画だと、「もしかして、ひっくり返すのが楽しいのかも」の部分です。「ちゃんと食べられない」「ひっくり返すのはダメ」と受け取ると、「注意をする」とか「子どもから離れたところに食器を置いて食べさせる」とかになりますよね。
柔軟な受け取り方をするためにも、余裕をもって保育に臨みたいものです。インプットの量を減らすというのは、ここにも関わってきます。
アウトプットの機会を増やす
先ほどの漫画の事例では、子どもが思いきりひっくり返す遊びをして姿が変わっていったのですが、これ、子どもにとって「ひっくり返す」というアウトプットの機会が増えているんですよね。保育者側の視点だと、アウトプットの仕方を変えてみたら上手くいったとか、引き出しが増えたという言い方もできるでしょう。
この、「いろんな視点で物事を見てみる」「解釈する」「どうアウトプットするか考える」「実際にやってみる」を違う言葉に置き換えると、「見取り→記録→評価→改善→次の計画→翌日や翌週の保育」なんですよね。結局、長年されてきたことをするのが1番なんだろうなとは思いますが、とにかく時間と余裕が無いのも分かります。そこで、「完成されたものではなくて良いから、とにかくアウトプットしてみる」ということを提案しています。
けっして、適当な保育をするということではありませんからね。
記録や指導案作成の時点での話です。完成してから提出するのではなく、「上手く言葉にできないこと自体を相談する」「まずはメモを書く」「途中で方向性を確認する」「文は拙くても構わないので、とにかくアイディアを出す」「具体例をできるだけ挙げる」など、完成までの過程で、様々な形でアウトプットしてみましょう。むしろ、その方が完成までの時間もかからないことが多いです。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。