「癇癪を起こす子どもにどう対応すればよいか」という主旨の相談を頂きました。いろんな本やサイトで癇癪の原因や対応が紹介されていますが、今回は「保育中に4人が代わる代わる癇癪を起こす(3歳児)」という状態です。十分に時間も無い中でどう関わっていくかという具体的なところをお伝えします。もちろん、ご家庭でも通用する考え方です。
癇癪を起こすのはどんなとき?
「癇癪を起こす子どもにどう対応すればよいか」という質問をくださった方の状況は、次の通りです。
- 3歳児担任(クラスリーダー)で昨年も同じ子ども達を担任
- 4月前半
- 特に困っている子は4人
- 子どもから求められることは「ずっと一緒にいてほしい」「自分だけといてほしい」
- 思い通りにいかないと泣き喚く、寝転ぶなどの癇癪
丁寧に対応しようとすると活動が止まり、相方の先生に頼むとさらに大騒ぎする…
このようなとき、あなたならどうしますか?
「癇癪を起こす子どもへの対応」の基本的な考え方
子どもに癇癪を起こされると、1人を相手にしていても大変ですよね。なのに4人もいるんです。もちろん、その子ども達だけを相手にするのではなくて、クラス全体を見ないといけません。この点で、保育現場では、専門的な方が紹介されている癇癪への対応にプラスして、全体の中でどうするかを考えていく必要がありますよね。
ということを考えて、私がお伝えしたのは次の2点です。
- 「癇癪を起こすとかまってもらえる」という状態になってしまわないようにする
- 「思うようにいかない」という状態ではなくなるよう、徹底的に支援をする
「癇癪を起こすとかまってもらえる」という状態になってしまわないようにする
癇癪を起こす背景として言われるのは
- 注目(癇癪を起こすことで、自分を見てもらえる)
- 要求(癇癪を起こすことで、ほしい物、やってほしいことが手に入る)
- 拒否(癇癪を起こすことで、したくないことをしなくてすむ)
ですね。
こうやって分けてありますが、「注目」も「自分を見てほしい」という要求と考えることができますし、「拒否」も「嫌なことはしなくてすむ状況を与えてほしい」という要求ですよね。ということで、「癇癪を起こす」って「要求する方法の1つ」とシンプルに考えることができます。
これを踏まえて、「癇癪を起こすとかまってもらえる」という状態になってしまわないようにするために、質問した方に提案したのが次の3つです。
- 癇癪を起こすような場面ではない、なんでもないときにその子ども達に意識して声をかけたり笑い合ったりすること
- 相方がいるなら、新しい方でも任せてしまうこと
- 「無理なことは無理」「それは無理だけど、こういうことならできる」はハッキリ伝えること
癇癪を起こすような場面ではない、なんでもないときにその子ども達に意識して声をかけたり笑い合ったりすること
癇癪が起きたときは対応に時間が必要なため、他の場面では他の子ども達を見たい…という気持ちになるのは当然だと思います。当然の気持ちではありますが、そうすると、「癇癪を起こす子どもを見るのは癇癪を起こしたときだけ」ということになってしまいます。自分だけを見てほしい子どもに対して、癇癪を起こしたとき中心の対応をしていると、子どもにとって癇癪を起こすことが上手くいく方法になってしまうんですよね。
癇癪への対応として、「過剰に反応しない」ということを勧められることがあると思いますが、同時に、「癇癪以外の場面で意識して関わりを増やす」ということを大事にしたいところです。
相方がいるなら、新しい方でも任せてしまうこと
「無理なことは無理」「それは無理だけど、こういうことならできる」はハッキリ伝えること
たとえば、「相方に任せるとよけいに大騒ぎされる」という状態があるとしても、「今はこれをしているからAちゃんが言うとおりにはできない。時計の5までは相方先生と一緒にいて。5になったら必ず来るから」ということを伝え、時計が5になったら必ずAちゃんの相手をする…という対応が考えられます。この例はちょっと一方的なので、もう少し対話をして違う方法をAちゃんと探るとか、相方の先生プラス「お気に入りの場所」や「オモチャ」などがあれば、それも許容するとできるかもしれません。
というようにお伝えしました。後述しますが、今回の事例では、ここの部分の「対話をして違う方法をAちゃんと探る」が、対応が上手くいった理由の1つとなります。
※質問した方に伝えたこの例は、「子どもが3歳児だから、このような言い方でも理解できるだろう」「以前もこの方から別の質問を受けていて、子どもの気持ちを大事にされる方だと私は思っている」等を考慮した上でお伝えしたものです。「時計が5になったら」をみなさんに推奨するものではありません。もちろん、それがピッタリと合う子どももいますが、いつも上手くいくわけではありません。
「思うようにいかない」という状態ではなくなるよう、徹底的に支援をする
質問した方にお伝えしたことの2点目は、「思うようにいかない」という状態ではなくなるよう、徹底的に支援をする…です。思うようにいかないから癇癪を起こすのであれば、癇癪を起こさないでもすむ状態にしてしまいましょう。例えば着替えが思うようにいかないのであれば…
上手く着替えることができない技術的な問題の解消
「着替えが上手くいかない!」「もう嫌!」「自分は下手なんだ…」が癇癪につながるかもしれません。次の事を考えてみましょう。
- 時間を十分にとる
- 着崩れていてもOKにするなど完成のハードルを下げる
- 家でも求めすぎないように協力をあおぐ
- 着やすい服について家族と相談
- もっと手を貸す
どのタイミングで着替えるか予想できないことによるストレスの解消
「遊びをやめたくない」「急に言われても困る」が癇癪につながるかもしれません。次の事を考えてみましょう。
- 予定を伝えておく
- 事前に声かけをして心の準備ができるようにする
- 絵カードを使って分かりやすくする
どれが合うかは分からない
これだけのことを伝えた上で、質問された方には次のように伝えました。
↓
どれが合うのかは子どもにより、気分によりですが。
何が原因で癇癪を起こしたくなるのかは、子どもにも分からないでしょうから、これですぐに解決とはならないかもしれませんが、ここに上げたものでまだやってないことがあれば試してみてください。
↑
質問をくださった方にお伝えしたのは以上です。
子どもを見たわけでもないので、正解を1つお伝えするようなことはできないんですよね。時と場合により、気分により、正解の対応は変わるでしょうし。後は、上手くいかなければ他の手を考えてお伝えすることの繰り返しです。…と思っていたら、ほんの2日ほどしてから返信がありました。
質問した方が対応してみた結果
「先日は分かりやすい的確なアドバイスをありがとうございました。アドバイス通り対応してみたところ、ピタッと癇癪が止まりました!!」
という、ありがたい返事を頂きました。
いつも癇癪を起こして泣いていた子どもに、「癇癪を起こしそうなときにどうしたいかを聞いてみた」という素晴らしい対応をされたそうです。「起こしそうなとき」というのがポイントです。先回りしすぎず、かといって放っておくのでもなく、子どもが困っているタイミングで声をかける。しようと思ってもなかなかできないことです。
その子どもは「(先生と)一緒に着替えたい」ということを言ったそうです。「自分のしてほしいことを相手に伝えられてかっこいいお兄さんだね」と伝えると嬉しそうに自分で着替えていました。今までで一番楽しそうに意欲的に生活してくれていました。…という結果になったようです。
今回の事例で、1番のポイントは「癇癪を起こしそうな時を見極める」ではないでしょうか。できることなら自分で頑張ってほしい。でも、嫌になってしまわないよう、その前に手を差し伸べる。これには子どもの様子を的確に見取ることが必要です。
もしあなたが保育関係者なら、「保育塾ベーシック」についての詳しい内容を読んでみてください。3日に1度、10分ほどでできるメルマガが無料で届きます。今回の記事では、質問をくださった方が子どもの様子を見取って、素晴らしい対応をされました。「保育塾ベーシックでは他の場面での子どもの見取りについてもたくさん紹介しています。さらに、記録、援助、保育指導案や要録の書き方が分かるようになっています。
さらに、指導案や要録を実際に書き進めていく様子を見たり他の人の考えを聞いたりしたい方のために、オンラインの研修も用意しています。実際にしている保育と指導案がつながると、本当に楽しいですよ。どんな研修があるかチェックしてみてくださいね。
サブスクリプション方式で、研修その他の催しが受け放題のオンラインサークルはこちら
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「もっといろいろと知りたい」という方は、
ホームページや、このサイトの記事が一覧になったサイトマップをご覧ください。
管理人うち(@uchi70794834|Twitter)
Follow @uchi70794834
保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。