「みんなで集まって話を聞くときに、集まろうとしない子どもは協調性がない」なんて思っていませんか?これ、ハッキリ言って、協調性の話ではないんです。
この記事では、協調性の本当の意味を考え、具体的な事例を挙げて、援助の仕方を提案しています。
自分の保育に取り入れることができそうな部分を、ぜひ試してみてくださいね。
協調性は周りに合わせることではない
この記事を書くきっかけは、このツイート↓です。
主体性より協調性の方が大切という、例えば「したいこと」より「しなければならないこと」を優先する言説を聞くたびに、自分の思いや体よりも人の目や社会を優先した結果追い詰められて潰されていく人たちのことを考える。
したいことを尊重される経験は、自分は大切な存在だと思える礎になるんだよ。
— きしもとたかひろ (@1kani1dai) November 20, 2019
当ブログ「保育塾」でコーナーをもうけている、きしもとさんのツイートです。
主体性より協調性が大切。
例えば「したいこと」より「しなければならないこと」を優先・・・
ということは、協調性のことを「しなければならないこと」と言っている人がいるということですよね。
「しなければならないこと」は少し大げさとしても、みなさん、協調性のことを「周りに合わせること」と思っていませんか?
協調性は、周りに合わせることのできる素質・・・ではありません。
協調性の本当の意味
では、協調性とは、本当はどのような意味なんでしょう?
きょう‐ちょう〔ケフテウ〕【協調】 の解説
出典:goo辞書
[名](スル)互いに協力し合うこと。特に、利害や立場などの異なるものどうしが協力し合うこと。「労資が協調する」「協調性」
協調性(きょうちょうせい)とは異なった環境や立場に存する複数の者が互いに助け合ったり譲り合ったりしながら同じ目標に向かって任務を遂行する素質。
出典:ウィキペディア
協調性は、同じ目標に向かって互いに協力し合うことや、互いに助け合うことができる素質です。
「はい、今から集まりますよ。」と声をかけられて集まり、その輪に入らない子どもは「協調性がない」・・・ということではないんです。
協調性を大事にした援助
では、協調性の本当の意味を考えて、援助をしてみましょう。
goo辞書によると、「特に利害や立場などの異なるものどうしが協力し合うこと」が「協調」です。
「はい、いまから集まりますよ」の場面で、利害や立場などの異なるものどうしって、子どもと子どもではありません。
「集まりますよ」と声をかけた大人と、集まりたくない子どもが、利害や立場が異なるんです。つまり、「大人と子どもが協力し合う」ということが必要です。
声をかけても輪に入らない子どもがいる場合
「声をかけても、みんなの輪の中に入らない子どもがいる」ということ、よくありますよね。あなたは、どんな援助をしていますか?
- 「こっちおいで」などと(時に子どもと一緒に)誘う
- 「ほら、今からお話始まるよ」などと促す
- 補助をしてくれる先生に任せる
- 指導する
- 注意する
他にどんな方法が思い浮かびますか?「大人と子どもが協力し合う」という視点をもつと、これまでとはちょっと違う援助が思い浮かびます。
みんなの輪の中に入らないA君は、どこでどうしていますか?
- 保育室の入り口からこっちを見ている
- 保育室の1番端にある、ロッカーにくっついている
- 絵本を読むスペースで、じっと座っている
よくあることですね。
「保育室にいる」「こっちを向いている」
この時点で、A君は歩み寄ってきています。外で遊びっぱなしではないのですから。歩み寄ってきているのに、さらにA君を動かして、輪の中に引き込もうとするから無理が生じるんです。
今度はこっちからA君に歩み寄ってみましょう。 そうすると、A君は「自分がちょっと歩み寄ったら、相手も自分の方に歩み寄ってきた」という「協調」を経験することになります。
今の状態を受け入れて、そのまま話を進める
「近くにいるだけで十分だ」と思えば、もうその時点で何も気にする必要は無くなります。「A君、この声聞こえる?」と確認して、話を始めましょう。
A君のところで集まる
「さあ、集まるよ」と声をかけると、みんなが集まってくるけどA君が輪に入ってこない・・・。というときは、A君の側に集まってみましょう。近くで集まると、すんなり輪に入ることもあります。
A君が入るスペースを確保する
集まる前に、一緒に座りたいB君と手をつなぐように声をかけておく、スペースを空けて座るようにする、A君が座る場所に印をつけて、みんなに知らせておくなど、できることはいろいろとあります。
一緒に座りたい誰かの隣が空いていないから座らないかもしれないし、スペースが狭すぎて、隣の人と当たるから嫌なのかもしれません。座る場所が決まっておらず、どこに座って良いか分からないかもしれません。逆に、座る場所が決まっているから嫌なのかもしれません。
A君が好きな絵本や手遊びをA君と一緒に選んでおく
今から好きなことが始まるのだから、集まりたくなります。「集まると楽しいことがある」という経験を繰り返しましょう。
How toのようになってきたので、これくらいにしておきます。あなたの側にいるA君は、私の側にいるA君と違いますから。あくまでも、ヒントとして読んでください。大事なのは、これらの援助の基になっているコレ↓です。
POINT
・協調性は、同じ目標に向かって互いに協力し合うことや、互いに助け合うことができる素質
・大人の側からも歩み寄ると援助が見えてくる
子ども同士での協調性を考える場合
当然、「子どもと子ども」の場合でも協調性は必要です。「同じ目標に向かって」と言うと難しそうに思えますが、遊びのチーム分けや、ごっこ遊びで何の役をするかを決めることなど、数人で何かを決める場面では必ず協調性が必要となります。
子ども達は、「よし、互いに協力しあおうぜ」とか「助け合わないと」などとはいちいち思っていないでしょうが、遊びの中で協調性は育まれているんです。
「砂場で大きな山を作り、ふもとにできた穴は海にして水を溜める」
遊びの中で生まれた、立派な目標です。数人で、この目標を目指して遊んでいると、水がどんどん吸い込まれていきます。スコップで砂を掘り、山に積み上げ、「誰か、水を持ってきてくれ。」「分かった。俺がやる!」なんてやり取りをしながら遊んでいきます。
この中の「分かった。俺がやる!」は、「本当はスコップで砂山を作るのが面白いんだけど、水が溜まらないから自分がその役を引き受ける」と、判断しているところです。名指しされているわけでもないのに、自分が手を上げているんです。この後、手に持つスコップをバケツに持ち替えて、ひたすら水を運ぶことでしょう。
「誰か、水を持ってきてくれ。」と言った子どもは、「水のことには気付いてるんだけど、自分はスコップで砂を積み上げ続けよう」という選択をしています。
他の子ども達も、「水を持ってくる」「砂を積み上げる」を判断し、もっと細かく言うと、「どこに砂を積み上げるか」「スコップで叩いて固めるか」「どのようなペースでするか」「掘る範囲を広げるか」「どこから水を流すのか」など、あらゆることを考え、自分で判断し、選択しながら遊んでいます。
・・・これって主体性です。
しゅたい‐せい【主体性】
出典:デジタル大辞泉(小学館)
自分の意志・判断で行動しようとする態度。「主体性のない人」「主体性をもって仕事に取り組む」
POINT
それぞれの子どもの「主体性」があることで、同じ目標に向かって協力しあう、協調する姿も見られる
援助の話がどこかへ行きましたね。自分達で協力し合うことができるほどの主体性をもった子ども達には、信じて見守るだけです。
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まとめ
世間一般で言われることの多い「協調性がない」は、実は協調性の話をしていません。
協調性とは、同じ目標に向かって互いに協力し合うことや、互いに助け合うことができる素質です。
少数派の人が周りに合わせることができない場合、「協調性がない」と受け取られます。しかし、本当は逆なんです。少数派の人のことを気にもかけず、少しも動こうとしない多数派の人の1部が「協調性がない」のです。
本当の意味での協調性を育てることができるよう、子どもに寄り添う援助をしましょう。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
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