「子ども向け」でも「子どもだまし」でもない「子どもが必要とするもの」という考え方

「子ども向け」も「子どもだまし」も大人を主語とする言葉です。「大人が子ども向けのイベントを企画する」とか「大人が子どもだましのコンテンツを作る」なんですよね。保育でいう「環境を構成する」も「大人が環境を構成する」ですが、「子どもが必要とするもの」が前提となります。一般的に言う「子ども向け」ではない場合もあるんです。

とっても分かりやすい一般的な「子ども向け」と「子どもだまし」

「子ども向け」と「子どもだまし」について、とても分かりやすい話を見つけました。コロコロコミックの編集部の方がこのような発言をしていたようです。前後もあるので、引用元の方も読んでみてください。

子供向けのコンテンツとは、「大人の自分が本当にかっこいいと思っている(こと)を、分かりやすく伝えているコンテンツ」です。

「これは絶対に子供だってかっこいいと思うはず!でもちょっと難しい(分かりづらい)かもだから、分かりやすくしよう!」これが子供向け。

当然、自分がおもしろいと思わないものは、子供にだっておもしろくありません。
熱も伝わりません。

逆に子供だましとは、「大人の自分はあんまり好みじゃないけど、たぶん子供はこういうのがたぶん好きなんだろうと思って作られているコンテンツ」です。

引用元:『子供向け』と『子供だまし』の違いについて、コロコロ編集部の方の熱い意見が話題に「子どもはそんなに簡単じゃないよ」

「子ども向け」でも「子どもだまし」でもないケース

先ほど引用したのは、子ども向けのコンテンツを作る話で、私も全面的に同意しています。ただ、保育の場合で考えると、違うケースが出てくるので注意が必要です。まずは、「子ども向け」でも「子どもだまし」でもないケースを紹介しますね。

以前、公園に行ったときに、2歳くらいの子どもを連れた家族がいました。お母さんは「ほら、すべり台があるよ」「せっかく公園に来たんだから、すべり台やろう」と、すべり台で遊んでほしい様子でした。

コロコロ編集部の方の言葉を借りると、 「これは絶対に子どもだっておもしろいと思うはず!でも初めての体験だから、分かりやすく安心して向かえるように大人が楽しんでみせよう!」 ということをすると、すべり台が「子ども向け」となるわけです。「大人の自分はあんまり好みじゃないけど、子どもは楽しいでしょ。よその子はもう滑れるし、 うちの子もできるようになってほしい。」だと、すべり台は「子どもだまし」となります。

ただ、このときの子どもを見たとき、「子ども向け」の関わり方も適切とは言えませんでした。子どもは落ちていたドングリに夢中だったからです。お母さんの言葉は全く耳に入っていない様子で、ドングリを拾おうとしていました。この場合、ドングリは「ただそこに落ちていたもの」なんですよね。周りにドングリの樹は無い場所だったので、おそらく、どこかの子どもが持ってきて落としたものであり、大人の意図は入っていません。「子ども向け」でも「子どもだまし」でもありませんよね。

保育として見ると、「子ども向け」でも「子どもだまし」でもないけど「子どもが必要とするもの」であり、そのときの子どもの興味を大事にしていきたいケースです。

「子どもだまし」に見えても調度良いケース

ある園のクリスマス会で、演出にドライアイスが使われたことがありました。ドライアイスを入れたタライも、ドライアイスそのものも、うちわであおぐ職員も、全てが丸見えで、ドライアイスから出る煙も少量で床を這う程度…。明らかに「子どもだまし」に見えたことでしょう。ところが、子ども達は「なんか煙が出てる」と、興奮してそれだけを見ていたのです。

この場合、大人の目から見て「演出として準備が不十分でお粗末」という事実はありますが、子どもにとっては「サンタさんが登場するときに煙が出てた」という不思議な体験をすることができたということですよね。

ここでもコロコロ編集部の方の言葉を借ります。「大人の自分はあんまり好みじゃないけど、たぶん子どもはこういうのが好き」という状態が「子どもだまし」です。ドライアイスのエピソードでは、「大人の自分はあんまり好みじゃないけど」ではないんですよ。大人としても一生懸命で、見ている大人からはお粗末だったとしても、子どもにとっては調度良かったということではないでしょうか。

とはいえ、「結果的に子どもにとって調度良かった」ではなくて、「子どもにとって調度良い」を意図的に目指したいところです。保護者もクリスマス会に参加してドライアイスの状態を見ていたとしたら、後日「子どもにとっては調度良かったんですよ」と解説するとか、事前に「当日はこんな姿が見られると思います」と、お便りで伝えるというのも1つの方法です。

思いはあっても「子ども向け」にはならないケース

ある園は、小学校と同じ敷地にあり、小学校の先生が度々顔を見せてくれました。あるとき、体育の先生がやってきて、園児に3重跳びを見せてくれたんです。見ていた園児が一言、「30回跳んでない」と…。2重跳びの意味も分からない園児にとって、「3重跳び」と言われても、「30」としか思えないんですよね。

この場合、「これは絶対に子供だってかっこいいと思うはず!」というのは確かだとしても、「でもちょっと難しい(分かりづらい)かもだから、分かりやすくしよう!」の部分が足りなかったんです。というか、2重跳びもピンとこない園児にとって、いくら分かりやすくしても3重跳びは理解できなかったんですよね。

子どもがどれくらい発達しているかによって、「子どもが必要とするもの」かどうかは変わってきます。子どもにとってかっこいいかどうか、必要とするものかどうかを考えると、大人がいくら「かっこういい」と思うものでも子どもに合わないことがあるんです。そこら辺も踏まえて、何を子どもに提示するかを考えるのが保育の仕事の1つですね。

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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。

ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・

そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。

ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。