「会議は3種類に分けることができる」
「目的別に5種類の会議がある」
などと言われているのを知っていますか?
「コーチング会議」「問題発見のための会議」「スケジューリング会議」など、それぞれの会議に調度良い、参加人数、準備の仕方があります。
保育の現場でも、会議の目的によって、進め方を変えることで、会議の時間を大幅に短縮することができます。
自園のやり方に、どの部分を取り入れることができるのか、考えながら読んでくださいね。
保育の現場でも、目的を明確にすることで会議の時間は短くなる
「子どものことを話すときに、効率を考えるなんて、ありえない」
その通りです。
支援のあり方も、普段の保育も、十分に時間をかけて、検討する必要があります。その時間を十分にとるためにこそ、会議を効率よく進めないといけないのです。
会議を効率よく進めて、できた時間で、子どものことをしっかり語りましょう。
たとえば、みんなで旅行に行くときのことを考えてみましょう。誰かが、次のようなことを、みんなに呼びかけながら移動しますよね。
・列車の発車時刻が近いから、ホームに移動する
・次の駅で降りる
・新幹線に乗り換える前に、昼食にする
旅行に慣れていない人は、何も言われずに、ついて行くだけだと不安になります。反対に、何も気にせず、「ついて行けばいい」と思っている人もいます。旅行の日程を気にしない人たちを連れて、何も知らせずに目的地にたどり着くのは大変ですよね。
列車に乗り遅れる人が出てくるかもしれません。遅れないように、必死で走って列車に乗っても、ゆっくり話もできません。
会議の目的をはっきりさせるのは、旅行のときに次の行動を知らせるようなものです。参加者が目的を知ることで、保育の現場でも、一般の会社と同じように、会議を効率化できます。
でも、保育の現場では、数種類の会議を、はっきりと分けてすることなんて、ありませんよね。会議ばかりしている時間はありませんから。
たとえば、支援会議では、
・子どもの情報を共有する
・どのように支援していくか意見を出し合う
・いつどのような支援を行うか決定する
というような流れで会議が進みますね。
「情報共有」
「意見の出し合い」
「決定」
の3つが、1つの会議の中で行われています。
だからこそ、
会議中のそれぞれの場面で、何をするべきか、目的を明確にする必要があります。保育の現場では、次のように、場面によって分けて考えましょう。
情報を共有する場面
意見やアイディアを出す場面
決定する場面
支援会議をすると想定して、話を進めましょう。
あなたの園では、情報を共有するときに、次のような場面がありませんか?
- 情報を共有しようと思っても、担任から情報が出てこない。
- 情報共有のときの話が長すぎて、どこを取り上げて良いか分からなくなる。
- 情報共有のときに、担任以外の人がたくさん話している。
- 司会も一緒に話し始める。
- 熱くなって、意見を言い始める。
- さらに熱くなって、担任への教育が始まる。
情報共有の時点で、これだけ多くのことが起こると、会議がどれだけ長くなるか、見当がつきません。しかも、これが何人分も繰り返されたら・・・。情報共有の場面では、「情報を共有する会議」のやり方で、会議を進行しましょう。
会議では、ほとんど意見が出てこないことや、なかなか結論が出ないこともあるでしょう。これらも、会議中に何をするべきか、目的がはっきりしていると、うまくいきます。
それでは、「情報を共有する」「意見やアイディアを出す」「決定する」の場面ごとに、会議の進め方を紹介していきますね。
情報を共有する
事前準備
情報を共有するために、まず、事前の準備が必要です。先ほどの、支援会議の例で、話が出てこない場合、逆に、話が長すぎる場合は、事前の準備が十分ではありません。
資料の作成
「資料を作るのに時間がかかるから」と、会議の場で話をして伝えようとすると、まとまらなくなります。会議の責任者は、会議が始まるまでに、資料の内容を把握して、必要があれば指導もするべきです。
資料を作るのに、必要以上に時間をかけすぎないようにすることも大事です。資料の様式が決まっていると、毎回、同じように作成できます。「昨年と同じように行事を進める」ということであれば、変更点だけ書き替えれば良いですね。
その他の下準備
「行事の中での係を誰がするか」というようなことは、会議までのところで、それぞれに確認をします。「○○先生は、誕生会の日に出張だよ。」ということになると、会議中に決め直さないといけなくなります。事前の確認をして、会議に時間をかけることがないようにしましょう。
会議で伝えなくてもすむ内容は、他の手段で知らせましょう。通常の会社などでは、朝礼やメールで知らせることができます。
しかし、保育現場では、それらが無い場合が多いですね。職員だけの目に触れる場所に掲示するなど、それぞれの園に合った方法を考えましょう。
会議の進行
目的の確認
司会の人は、「今から何分間、○○について、情報を共有します。」などと、今から何をすれば良いか、目的を確認します。そうすることで、何についての会議なのか、参加者が改めて意識できます。
時間の確認
情報を共有するときには、各担当者に持ち時間を知らせましょう。明らかに時間を超過するようであれば、司会の人が、時間がきたことを伝えます。残りのことは、他の人から質問が出た時点で答えるなど、必要なときに話せるようにします。
今後のことについての確認
情報の共有のみで終わる場合、司会の人は、大事なことをまとめて、最後に改めて確認しましょう。
「次回の会議までに、担当者が○○をします。」
「それぞれの係で進めておくということですね。」
「担任の先生は、お便りで保護者に伝えてください。」
などです。
会議の後
会議に参加しなかった職員に、必要なことを伝えましょう。できれば、会議の内容をまとめたものを、回覧などで周知します。口頭で伝えるだけだと、人によって、伝える内容が変わってしまう可能性があります。園にいない人には、伝え忘れてしまうかもしれません。メモに残して伝えるなら、同じ手間で、みんなに伝わる記録を残しましょう。
意見やアイディアを出す
なにかを企画するときや、問題解決のために、意見やアイディアを出す会議を行います。
この会議では、1つでも多くのアイディアを出し合うことが大事です。
事前準備
基本的には、情報を共有するときと同じです。加えて、当日までに意見やアイディアが出てくるように、事前に内容を知らせておくこともあります。資料には、書き込みができるようなスペースを作っておくのもいいですね。
最も大事なことは、意見やアイディアが出てくるような雰囲気作りです。一番最初に意見を言いにくいのであれば、誰が言うか事前に決めてしまうのも1つの方法です。そして、後で詳しく書きますが、会議のどこまでを参加者全員でするか、決めておく必要があります。
会議の進行
目的の確認
司会の人は、「今から何分後に、○○について、意見を出してもらいます。」
などと、今から何をすれば良いか、目的を確認します。そうすることで、何についての会議なのか、参加者が改めて意識できます。いきなりだと答えにくいので、意見を出す前に、考える時間をとったほうが良いでしょう。
相手の意見を聞く重要性
意見やアイディアを出すときに、一番重要なのは、相手の意見を聞くことです。否定や批判をすると、意見は出なくなります。1つの意見を選ぶことより、意見をまとめるつもりで行いましょう。司会の人は、これらのことも、参加者に確認します。
時間の確認
意見やアイディアを出すときにも、時間を区切ります。時間が足りなくて言えなかったことがあっても、また後で言える場面が出てきます。まとめていくときに、さらに新しいアイディアが浮かぶこともありますよね。
まとめ方
出てきた意見は、ホワイトボードなどに書き出します。関連のあるものは縦に、異なる意見は横に並べて書きましょう。事前に出ていたアイディアがあれば、それも書き足します。似たような意見が出ても、それを指摘してはいけません。自由に発言できなくなるからです。
否定することはNGですが、質問はOKです。否定してしまうと、そこで話が終わってしまいます。質問であれば、話が先に進みます。もし、話が本題とズレていると感じても、それを否定してはいけません。繰り返しになりますが、否定をすると、意見が出なくなるからです。
話が脱線したときに、むしろ議論が白熱した経験がありませんか?子どものことを語るときに、つい熱くなってしまうのは当然です。普段は発言しないような人が話しているなら、思いをしっかり出させてあげたいところです。このようなときも、話が落ち着いてから、司会の人が本題に戻します。
司会の人は、参加者みんなが意見を言えるようにします。場が静かになってしまったら、次の発言はしにくいですよね。そうなる前に、司会の人が、次の人に意見を求めましょう。
発言しにくい場合は、最初から付せんなどに書く方法があります。一枚の付せんにつき、アイディアを1つ書きます。各自が5枚程度書いて、その後、ホワイトボードなどに貼りましょう。似たような意見は縦に、異なる意見は横に並べて貼ります。そうすると、みんなが同じように意見を出すことができます。
今後のことについての確認
まずは、「みなさんのおかげで、新たな視点がたくさん見つかりました。」などと、感謝の言葉を言えると良いですね。
意見やアイディアを出すだけで終わる場合、司会の人は、大事なことをまとめて、最後に改めて確認しましょう。
「研究部でまとめて、次回の会議のときに、再度検討して頂こうと思います。」
「講師の先生と相談して、みなさんにお知らせします。」などです。
会議の後
基本的には、情報を共有する会議の後と同じです。それに加えて、意見やアイディアを出し合う会議の後は、まとめる作業が必要です。担当者が集まって、さらに会議をすることもあります。これを全員でしてしまうと、何をして良いか分からずに、見ているだけの人が出てきます。意見やアイディアを出すときには、どこまでを参加者全員でするか、決めておく必要があります。
決定する
簡単なことなら、上司が決めてしまえば早いです。でも、すべてのことを、上司が決めてしまうわけにはいかないですよね。特に、みんなの意見を出し合って、その後に決定する場合は大変です。みんなが納得できるように、会議を進行していきましょう。
事前準備
資料の作成などは、情報を共有する会議の場合と同じです。
会議で何か重大な決定をするときには、次のことをはっきりさせておきましょう。
・誰が参加するのか
・最終決定は誰がするのか
・どのように決めるのか
・一回の会議で決めるのか
・改めて会議を行うときは、いつまでに決めるのか
「いつも会議が長引く」「会議をしても何も決まらない」というのであれば、根回しが必要な場合もあります。必ず反対意見を言ってみたくなる人や、後から何かを言いたくなる人もいるかもしれません。そのような人がいるのであれば、事前に話をしておきましょう。
会議の進行
目的の確認
司会の人は、「今からどちらの案を採用するか決めたいと思います。」などと、今から何をするのかを確認します。
決定方法の確認
どのように決めるか、最終決定は誰がするかなどを確認します。それに納得できない人は、その場できちんと声を上げましょう。後からいろいろと言うのは、会議をする意味がなくなります。
まとめ方
決定する段階は、すでに情報を共有したり意見を言ったりした後です。司会の人は、必要であれば、これまでの経緯を要約して伝えます。それまで十分に話し合われていれば、あとは最終決定だけのはずです。
意見が分かれている場合、参加者がもう一言ずつ、最終決定を意識した発言をするようにしましょう。
数人が言い合ってまとまらない場合、司会の人は、「他の方の意見も聞きたいので・・」と、他の人に振りましょう。
「参加者全員が十分に議論して決めた」ということを、全員が認識した状態で決定することが大事です。「話し合いで決まらなかったので多数決で」などと、決定方法を会議中に変えると後から不満が出てきます。事前に、決定方法をはっきりさせておくのはこのためです。
どうしても決めるのが難しい場合は、
・もう一度議論をし直す
・意見をまとめて、時間をおいて決め直す
ということも視野に入れましょう。
保育の現場では、時間的に余裕が無い場合が多いです。そのため、最終決定者(多くの場合は園長)が、その場で決めることになりますね。
決まった後
司会の人は、最後に、決まったことの要点を言います。参加者全員が話し合った結果、合意したということも確認します。それから、各自が今後するべきことを確認しましょう。
会議で結論が出ない場合
会議をしても、どうしても結論が出ないことがあります。その時には、会議をやめてしまいましょう。そして、次に何をするかに目を向けてください。
会議で結論が出ないのには、いろいろな理由があります。話し合いを十分にできるだけの情報がなかったのかもしれません。専門家に相談をしなければ解決しない場合もあります。このようなときは、準備をし直して、改めて会議をしないといけませんね。仕切り直しをしているうちに、時間が解決をしてくれるかもしれません。
まとめ
会議では、参加者がそれぞれの役割を果たすことが重要です。
情報の共有では、担当者がしっかりと準備をし、要点を分かりやすく伝えます。
意見やアイディアを出すときには、参加者全員が意見を言えるようにします。その際、意見を否定することはNGです。
決定するときには、「参加者全員が十分に議論して決めた」ということを、全員が認識した状態であることが大事です。
会議を効率よく進めることは大事なことです。それ以上に、会議が意味のあるものになるために、今回紹介したやり方を試してみてください。
会議がうまく進むためには、司会の人は、かなり重要な役割を果たさないといけません。しかし、いきなり上手に司会をすることは難しいです。会議に参加するみんなで、会議の目的を意識することで、少しずつ改善していけると良いですね。
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