「ペーパーレスで、効率がよくなり、環境にも優しい」と思いますよね。
確かに、慣れれば効率はよくなります。
でも・・・
実は、ペーパーレスにすることで、二酸化炭素の排出量は増え、森は破壊されてしまいます。
この記事では、
ペーパーレスにすると環境に優しいというのは、ただのイメージで、本当は、むしろ害となる
ということをお伝えしています。
ペーパーレス化について、もう一度考えながら読んでみてください。
ペーパーレス化が環境を破壊する2つの理由とは
ペーパーレスにすると、紙を使わない分、焼却するときのCO₂が排出されないし、そもそも紙が作られなかったら、森を守ることができる。
と思いますよね。
紙を焼却するときのCO₂が排出されないというのは本当です。
でも、「紙が作られなかったら、森を守ることができる」ということにはならないんです。
ペーパーレスにすると、その分、タブレットなどの機器を使います。
「紙を使わない分、タブレットなどを使うとどうなるか」ということを、考えたことがありますか?
「紙を使わない結果、森がどうなるか」ということを、考えたことがありますか?
これらについて、よく考えてみると、次のことが分かります。
- ペーパーレスにすると、CO₂の排出量は増える
- ペーパーレス化することで、森が破壊されている
どういうことか、詳しく説明しますね。
ペーパーレスにするとCO₂の排出量は増える
「ペーパーレスにすると効率がよくなる」というのは確かです。
(ペーパーレスにするために必要な機器が苦手な人は、慣れるまでは大変です)
ですが、ペーパーレスにすると、CO₂の排出量は、紙を使ったときと比べて、さらに増えます。
「環境にいい」どころか、環境に悪いんです。
なぜCO₂の排出量が増えるのか
ペーパーレスにするとCO₂の排出量が増えるってどういうこと?
と思いますよね。
なぜ増えるかというと、
ペーパーレスにするために使うタブレットなどの機器には、電気が必要だからです。
そして、ペーパーレスにすると、森が破壊されるからです。
森が破壊される理由については、後で詳しく説明しますね。
電気を使うとCO₂はどれくらい排出されるのか
CO₂の排出量は、次のサイトを見れば分かります。
TEPCOのホームページでは電力消費量から、CO2の排出量を計算することができます。
このホームページの計算式によると、100kwhの電力を利用すると43kgのCO2を発生させる計算になります。
「ペーパーレスが環境を破壊する」という記事なのに、ペーパーレスで環境を語っているサイトの記事の引用をしているのには目をつぶってもらうとして・・・
100kWhで43㎏のCO₂を排出と言われても、ピンときませんよね。
・電気料金プラン・・・東京電力:従量電灯プラン
・契約容量・・・30A(アンペア)
・電気使用量・・・350kWh(キロワットアワー)小数点以下は切り捨てのため、合計は8431円になります!
月の電気料金8431円だと、「うちと同じくらい」という人も多いのではないでしょうか。
一般的な家庭で、1ヶ月に電気を350kWhくらい使っているとして、100kWhの使用で43㎏のCO₂が発生するということを考えて計算すると・・・
350kWh(料金にして8431円くらい)の電気を使っている家庭では、1ヶ月の間に150㎏くらいのCO₂を発生させています。
これだけ見ると、ものすごい量ですね。
紙を焼却するとCO₂はどれくらい排出されるのか
じゃあ、紙を焼却したときに出るCO₂は、どれくらいなんでしょう。
可燃ごみから出されるCO2の算出には以下の数式を利用します。
可燃ごみの重さ(kg) × 0.34 = CO2の発生量(kg)
1,000kgのゴミからは340kgのCO2が発生するということになります。A4用紙は500枚で約2kgありますので、10,000枚利用した場合には、約40kgの重さになります。
さきほどの式に当てはめると
A4用紙10,000枚 40kg × 0.34 = 13.6kg
という数字になります。
難しい計算は抜きにして、結論だけ引用すると、
A4用紙10,000枚を焼却すると13.6㎏のCO₂が排出されます。
実際に発生するCO₂はどれくらい違うのか
先程は、
350kWhで排出されるCO₂は150㎏、
A4用紙10,000枚を焼却すると排出されるCO₂は13.6㎏
とお伝えしました。
150㎏と13.6㎏で比べても意味ないですからね。
150㎏のCO₂の中には、エアコンや冷蔵庫などで使った電気の分も、全部入っています。
実際に、CO₂がどれだけ発生するか、紙と電力の両方で計算してみましょう。(当サイト「保育塾」は保育のサイトなので、保育所を想定して計算します。)
まず、結論を言いますね。
紙を使ってお便りを出し、保育指導案や会議の資料を紙で作成すると・・・
120人規模の園で、月4,000枚のA4用紙を使った場合、
1ヶ月分で5.44㎏のCO₂を排出します。
ペーパーレスにすると・・・
120人規模の園で、担任6人と、主任、園長だけタブレットを持った場合、
1ヶ月で5.3㎏のCO₂を排出します。
ほぼ変わらないですね。
どちらも、詳しい計算は次に書いてあります。
面倒だったら、ペーパーレス化が環境を破壊する2つ目の理由のところまで、読み飛ばしてください。
紙を使った場合
子どもが120人いて、月1回の園便りと月2回のクラス便り、月1回の給食便り、その他のお知らせを月6回、A4で出すとすると、
120人×(1+2+1+6)枚=1,200枚。
職員の数が20人として、1回の職員会議の資料が1人10枚、月に4回の職員会議があるとすると、
20人×10枚×4回=800枚。
0歳児~5歳児で6クラス、月案で月1枚、週案で月4枚、日案・記録で月30枚使ったとすると、
6クラス×(1+4+30)枚=210枚
0~2歳児は、それぞれのクラスが個人の記録を20人分、月30枚ずつ使ったとすると、
3クラス×20人×月30回=1,800枚
これらを全部合わせると、
1,200+800+210+1,800=4,010枚です。
キリがいいところで、4,000枚で計算してみましょう。
A4用紙は500枚で約2kgということなので、4,000枚利用した場合には、約16kgの重さになります。
CO₂算出の式に当てはめると
A4用紙4,000枚分16kg × 0.34 =5.44㎏
ペーパーレスの場合
以下の条件をつけて計算した結果です。
- 紙を使った場合と同じ、120人規模の保育園とする。
- 6クラスの担任と、主任、園長だけがタブレットを持つとする。
- タブレットの消費電力はスマホの3倍として計算する。
- それぞれのタブレットを統括する機械は、タブレットと同じ消費電力とする。
- 1kWhのCO₂排出量を、紙を使った場合に用いた値と同じ430gとする。
- 「スマホの充電の電気代を実測しました」のサイトを参照し、「スマホ1台あたり、年間2740gを排出(1kWhあたり500gで試算)」を基に計算する。
次の式は、計算が苦手な人は見ないでください。
年間2740g÷12(1ヶ月分にするため)×9(タブレットと機械で9台)×スマホの3倍の電力×(1kWhあたり500グラムから430グラムに変更するために500で割って430をかける)=5301.9グラム≒5.3㎏
参照:スマホの充電の電気代を実測しました
参照:パソコン、タブレット、スマホの消費電力を調査。機種によって電気料金に大きな差がでるようです。
これだけ見ると、ペーパーレスにしても、しなくても、発生するCO₂は同じに感じられますよね。
でもそれは、たいした問題ではないんです。
本当の問題は、ペーパーレスにすることで、森が破壊されること。
森が破壊されるということは、CO₂を固定していた木が全部燃やされ、大量のCO₂が排出されるということです。
ペーパーレス化で森が破壊される
「紙を使わないと森が破壊される」って、逆でしょ?
と思いますよね。
でも、紙を使わないことで、実際に森が破壊されているんです。
その理由は2つ。
- 木を切らないとお金にならないから
- ペーパーレス化の際に必要な機器に使用される、レアメタルを採掘するために木を伐採するから
木を切らないとお金にならない
あなたは、「紙の材料として木が伐採される」と聞いたときに、どんな映像が思い浮かびますか?
森の木を全部一気に刈って、丸裸にしているイメージを持っている人はいませんか?
実際は違います。
なぜなら、お金になる木は一部だからです。
全部の木を切り倒す燃料代がもったいないし、いらない木を処分するためのコストがかかります。
利益が出ないことは、誰もやりません。
イメージとは反対に、紙を使わないことで、森が破壊されます。
紙を使わないと、木を切る必要がありません。
木を切らないと、その森はお金になりません。
お金にするために、森の木を全部焼き払い、農業や牧畜をするんです。
次にいつ、お金になるか分からない森を守るより、コーヒーや牛を売るほうが魅力的です。
紙を使わないことで森林が破壊されるなら、ペーパーレス化が、むしろ環境に悪い影響を与えています。
レアメタルを採掘するために木が伐採されている
ペーパーレスにするためには、タブレットなどの機器が必要です。
その機器を作るために、レアメタルが必要です。
このレアメタルを採掘するために、木が邪魔になります。
紙の原料にするための伐採とは違い、森を丸裸にするんです。
採掘現場で何日も働き続けるために、燃料として、さらに木が伐採されます。
木の伐採は、ゴリラの生息地が奪われることにもなっています。
さらに酷いことに、ゴリラを食料として殺しているのです。
人間が持ち込んだ病気で、ゴリラが発病することもあります。
ゴリラは、みんなが知っている動物です。
たくさんいるような気がしますが、マウンテンゴリラは世界で数百頭しかいません。
絶滅危惧種のレッドリストでは、「近い将来における絶滅の危険性がきわめて高い種」となっています。
まとめ
「ぺーパーレス化は環境に優しい」というのは嘘です。
実際は、紙を使わなくなるとCO₂の排出量は増えます。
紙を使わなくなることで、森の破壊につながります。
タブレット等に使うレアメタルを採掘するために、森が破壊されています。
マウンテンゴリラは絶滅するかもしれません。
ペーパーレス化は、環境に優しくはないです。
私達がすべきことは、ペーパーレス化ではありません。
紙を必要以上に使わないことです。
最後に、
今回は環境の話をしたので、大きく取り上げませんでしたが、レアメタルの採掘は、コンゴ民主共和国の紛争と、深く関わっています。
もし、コンゴ民主共和国の紛争を知らない人がいたら、ぜひ次の記事を読んでください。
- 無法地帯、レイプや民族間抗争で数百万人が避難 コンゴ民主共和国
- “戦場の武器”性暴力の根絶を ノーベル平和賞で世界に訴え
- 死者540万人以上-日本のメディアは報じない、コンゴ紛争とハイテク産業の繋がり
千万人以上が人道支援を必要とし、これまでに数百万人が殺され、赤ちゃんから老婆までがレイプされ、子どもが誘拐され、危険な現場で奴隷のように働かされています。
子どもが誘拐されて働かされるのは、ゴリラの話で出てきたレアメタル採掘現場です。
紛争の大きな原因であり、武装勢力の資金源となるレアメタルが、ペーパーレス化に必要なタブレットやスマホなどに使用されています。
私達は、それを知った上で、タブレットやスマホを、どう使用するかを考える必要があります。
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