保育の具体的な場面で「選択力」を考える(造形編)

あなたは子どもの「選択力」について考えたことがありますか?「友達と言い合いしてしまったけど、いつどう言って謝ろうか」「どうやったらこれが買ってもらえるか」「簡単に壊れないように丈夫にするには…」など、幼児期はもちろん、大人になってからも必要なのが「選択力」です。今回は、特に絵や工作で見られる「選択力」を考えます。

子どもも大人も必要な「選択力」

冒頭の3つの例

  • 友達と言い合いしてしまったけど、いつどう言って謝ろうか
  • どうやったらこれが買ってもらえるか
  • 簡単に壊れないように丈夫にするには…

これらの具体的な場面は、子どもでも大人でも思い浮かびますよね。

友達と言い合いしてしまったけど、いつどう言って謝ろうか

「ごめんね」「いいよ」と言うだけにならないようにしましょう…なんてことも言われます。自分の気持ちを整理して、相手との関係を良好な状態に修復するために、どんな言葉を言うのか。そのタイミングは?これ、大人になっても難しいですよね。というより、大人になってからの方が難しくなっている人も多いのではと思います。

どうやったらこれが買ってもらえるか

子どもだったら「おやつ」「オモチャ」を手に入れるために寝転がって癇癪を起こす場合もありますし、ふと見るとレジまで持ってきている、いつの間にかカゴに入っている、なんてこともあるでしょう。大人の場合は、取引先や顧客に向かってそんなことはできませんよね。脅しや押し売りになってしまいます。これも、「どうすれば」と考え、「選択」を重ねてきてできるようになることです。

簡単に壊れないように丈夫にするには…

砂山や泥団子、段ボールの基地やお化け屋敷、箱を組み合わせたロボット、高く積み上げた積み木など、子どもが作って遊ぶものも、大人が造る機械や建造物も、簡単に壊れてしまっては困ります。壊れないように形を考え、材料を選び、組み合わせて補強して…ということも、「選択力」が必要になってきます。

他の場面でも

「パス」「ドリブル」「シュート」のどれを選択するか、どちらの方向に、どのタイミングでするのか、受ける側もどこにポジショニングするのかというように、サッカーでもその他のスポーツでも選択の連続ですね。どの学校を受験するか、プレゼンするときにどの資料を使うか、人前であいさつをするときにどんな例え話をするかなど、人生で選択する場面は数え切れないほどあります。

年長では選択力がここまで育つ

さて、今回は特に絵を描いたり何かを作ったりする場面で見られる「選択力」について例を挙げますね。年長の時にはどんな姿が見られるようになるのか、参考にしてみてください(あくまでも1例です)。

描いた絵や作ったものをどう飾るか子ども達が話し合って決める

先に絵を描き終わった子ども達で、どの絵をどこに飾ると良い感じになるか、話し合って展示する…というやり方があります。「AちゃんとBちゃんの絵は色が似ていて、比べてみると面白いから隣に飾った方がいい」というように、子ども同士で考えて話をしながら絵を飾る場所を決めていくんですよ。そうすると、先に終わった子どもが待たなければならない退屈な時間も無くなるし、保育中に展示を終えることができます。

これ、小学校の図画工作だと「鑑賞」につながります。誰がどんな絵を描いているか、どんなものを作ったかということを鑑賞して、その上で、「ではどこに飾ると良いのか」ということを子どもが選択しているんですよ。友達の作品の素敵な部分を見付けることや、自分の考えを言ったり相手が納得する言い方を考えたりすることも「子ども達が考えて作品を飾る」には入っています。大人で言うと、チームで仕事を進めていくことにもつながりそうですね。

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材料を作り出す

子ども達の選択を大事に保育をしていると、子ども達は、遊びを追求する中で、思うような材料が無かった場合は作り出すようになります。

  • 調度良い形や長さの木材が無かったらノコギリで切る
  • お化け屋敷の屋根が重くて落ちやすいから、軽くするためにカットする
  • 思い通りの泥団子を作るために、違う場所から採ってきた泥をブレンドする
  • 使い古した段ボールが立つように、支えとなるものを作る

今あるものだけで満足していたら、これらの姿が見られることはありません。「こんなことがやりたい」と「じゃあどうしようかな」という体験を繰り返し、いろんなことを自分の力でできるようになっていくんですよね。大人の仕事にも通じるところはたくさんありますね。

今回は特に絵を描いたり何かを作ったりする場面での選択力についてお伝えしています。さらに、その中の1部です。他の場面についても、選択力に関わることはたくさんあります。

子どもの選択を尊重しよう

ここまで、年長の姿を紹介してきましたが、「じゃあ、そこにつながるまでどうするの?」ということについては、簡単に言うと「子どもの選択を尊重しよう」です。ただし、「好き放題を許容する」ではありません。

何かを製作するときも、子どもが自由に遊んで何かを作るときも、「こうしてみたらどうだろう」と、子どもはいろんな発想をします。その時に、「それは今は無理」だけだと、「どうせ無理って言われるし」というようになってしまいます。与えられる選択肢が1択とか2択だけという状態がずっと続くと、「自分で選択肢を生み出す」がだんだん難しくなっていくんですよ。

かといって、好き放題を許していると、危険な場合もありますよね。だから準備をするんです。描いた絵や作った物のできよりも、子どもが選択できる環境を整えることに時間を費やしましょう。それも限界がありますので、できなかった部分は「それは今は無理だけど、次にやってみよう」「その通りにするのは無理だけど、どんな風にしたらできるかな」と、対話し、子どもと一緒に模索していきましょう。

単純には言い切れませんが、年長に近付くほど、子どもが自由にできることが増えますよね。安全にできるかどうかだけを考えても、年長の方がいろいろとできることは増えます。「この子は今、自分で選択するという力が育っているんだろうな」という視点でも、子どもの姿を見てみませんか?

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保育塾代表
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公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

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ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。