今回は、簡単なクイズから始めます。この記事の画像(円グラフとモグラの絵がついたもの)を見てください。このグラフは、S高校に合格した生徒がどれくらいいるか、一目で分かるようにしたものです。そのうち一校は「当校」と書かれていますので、ちょっと多く見えるよう細工がしてあると思ってください。実際はどのような割合だと思いますか?
グラフに騙されないために
当校と書かれた学校の生徒募集担当の人は、このグラフを作るときに、おそらく「なるべく我が校の割合が多く見えるといいな…」と思うはずです。たぶん。あ、今さらですけど、これは全てフィクションで、私が勝手に作ったものです。改めて画像を載せますね。
円グラフには要注意
「当校から多数の合格者が出ています」などという言葉も入れてみました。これ、別に嘘を言っているわけではないんですよね。ただ、他校と比べることができるような、具体的な数字を示してありません。「実際は、A中学校と当校はA中学校の方が多いのでは?」くらいに見えますね。
実際の数字は次のようになります。こちらは、パワポで円グラフを作ったときに、数字を入れたところをスクショした画像です。
A中学校は40、当校は25という数字が入れてありますが、グラフでは同じくらいに見えます。円グラフを立体にしているので、手前の方にあるものが大きく見えるんです。おそらく、もっと意外に思われるであろうことも、このグラフの中にあります。C中学校も25で、当校と同じ数字だということです。
ということで、立体の円グラフを見るときは要注意です。「立体の方がなんとなく見栄えがする」という理由で、数字の印象を変える意図なく使われる場合もあるでしょう。私も、このサイトのどこかで立体の円グラフを使った記憶があります。
他のグラフも誤解がいろいろ
次に棒グラフも見てみましょう。こちらは、立体の円グラフと違ってどこででも見かけますが、見え方で誤解が生まれることが多々あります。
赤いのが当校のグラフです。B中学校とはあまり差があるように見えませんが、A中学校、C中学校とは大きく違うように見えます。ところが、左側の数字を見てみると、当校は1300、A中学校は1220、C中学校は1200で、実際にはあまり差はありません。私のように老眼が進んでいる人は、数字がぼやけて見る気にもならない場合がありますよね。グラフの長さだけが印象に残ります。
また、折れ線グラフでは、横軸の幅を変えてある場合があります。「内閣支持率が緩やかに下がっている」…と見せたいような場合は、横軸の幅を広げてあるんです。横軸の幅が狭いと、急落しているように見えます。画像のグラフは左右とも全く同じ数字を入力してあります。
アンケートに騙されないために
アンケートについては、あまり信用できないことが多いです。分かりやすいように極端な話をしますね。私が保育仲間5人にアンケートをとったとすると、保育指針を読みこんでいる率は100%になるでしょうが、これで「保育士はみんな保育指針を読んでいます!」とはなりませんよね。読んでない人はそこら中にいます。「私の保育仲間5人に聞きました」と言っても、サンプル数が少なすぎるし、偏りすぎています。
同様に、SNSでのアンケートは、答えてくれる人の多くが普段から関わりのある人なので偏りがあります。個人ではない、どこかのサイトが行うアンケートでも同様です。たとえば、転職のサービスをしているサイトを見る人は、そのような気持ちがどこかにあるからそのサイトを見ているはずです。「転職をしようと思ったことがある」という設問に「ハイ」と答えるのは当然です。「当社調べ」などと書いてあるアンケートは偏りがあるということです。
さらに、公的な機関が調べた、十分にサンプル数があるものでも、見方によっては誤解が生まれます。たとえば、厚生労働省が行っている賃金構造基本統計調査 を基に、「保育士の賃金は全産業平均よりも◯万円安い!」のような記事が話題になったことがありました。しかし、そのとき比べられていた全産業平均の賃金が保育士の賃金よりも高かったことは事実ですが、保育士より年齢も高かったんですよ。
若い人と経験を積んだ人の賃金を比べると、若い人の方が安くなるのは当然です。また、全産業平均ということは、大企業も含まれています。保育士と同じような年齢、中小企業、専門学校・短大卒で比べると、保育士と全産業平均の賃金はほぼ同じなんですよ。
アンケートの分析については、いくつも論文が書かれているくらい専門的な知識が必要となるものです。簡単に信じて、損をしないようにしてくださいね。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。