「○○について記録」をしたいときには「○○について書かれていることを要約」から始めると上手くいく話

こちらは、「5領域に分けて記録することになっているけど、よく分からなくて書くのに時間がかかる」という人のために書かれた記事です。研究テーマに合った事例が見つからない人、何を書けば良いか分からずに、とにかくたくさんのことを書くから辛い人、記録の様式に従って、スペースが埋まったら終わりにしている人にもオススメの方法です。

「要約する」から始めると上手くいく理由

「普段の記録を5領域に分けてすることになっているから難しい」「園の研究テーマに沿った子どもの姿が分からない」などという人には、まず、それを要約することから始めるようにオススメしています。

たとえば、5領域の場合、詳しく書いたものが手元にありますよね。保育指針とか、保育指針解説です。多くの識者によって作成されたバイブルであるため、要約するなんて考えたことが無いと思います。でもね、読み込んでいても文の表面をなぞっているだけで、案外分かってないものです。

難しい文を読んで難しく考えるから分からなくなります。1度、できる限りシンプルに考えてみましょう。やってみて足りない部分があれば、追加すればすむことです。どれだけスッキリするか、試しに書いてみますね。

イ 社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」について内容を簡単に表す

ここでは、乳児保育に関わるねらい及び内容より イ 社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」について、内容を簡単に表してみますね。ねらいは、もちろんとても大事なんですが、具体的な姿が見えてこないので、内容を一言で表します。でも、本当に一言で表すことができるのであれば、最初から保育所保育指針にも、解説にも、一言で表してあるはずです。

分かりやすさを優先して、強引に一言で表すだけなので、これが正解だとは思わないようにしてくださいね。「具体的にどんなことを記録するのか」を覚えやすいように、あなたの言葉に直してください。

と、長く前置きをした上で要約します。まずは実際に書いてあることを引用しますね。

イ 社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」
受容的・応答的な関わりの下で、何かを伝えようとする意欲や身近な大人との信頼関係を育て、人と関わる力の基盤を培う。
(ア)ねらい
① 安心できる関係の下で、身近な人と共に過ごす喜びを感じる。
② 体の動きや表情、発声等により、保育士等と気持ちを通わせようとする。
③ 身近な人と親しみ、関わりを深め、愛情や信頼感が芽生える。
(イ)内容
① 子どもからの働きかけを踏まえた、応答的な触れ合いや言葉がけによって、欲求が満たされ、安定感をもって過ごす。
② 体の動きや表情、発声、喃語等を優しく受け止めてもらい、保育士等とのやり取りを楽しむ。
③ 生活や遊びの中で、自分の身近な人の存在に気付き、親しみの気持ちを表す。
④ 保育士等による語りかけや歌いかけ、発声や喃語等への応答を通じて、言葉の理解や発語の意欲が育つ。
⑤ 温かく、受容的な関わりを通じて、自分を肯定する気持ちが芽生える。

引用:保育所保育指針

たとえば、ねらい➀について、「身近な人と共に過ごす喜びを感じている場面を記録する」と考えると難しいんですよ。「喜びを感じているって、具体的にどんな姿なのかな…」から考えて、悩んでいるうちに日々が過ぎてしまいます。また、「安心出来る関係の下で」とは、具体的にどんな関係なんでしょう?

ねらい➂の「愛情や信頼感が芽生える」とは、具体的にどういう場面なんでしょう?そもそも「愛情」とは?「信頼感」とは?…と考えてみると、「ねらい」ってハッキリと「こんな姿だ」と言えないんですよね。ですので、どんな場面を具体的に記録すれば良いかを覚えやすいように、内容をできるだけ簡単に表します。

内容
①~④応答的なやり取り
⑤温かく受容的な関わり


これくらいなら覚えやすいでしょう?

イ 社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」について、どんなことを記録するのか(どんな姿を気持ちが通じ合っている、または、気持ちが通じ合うことにつながるとするのか)、と考えたときに、「(子どもと保育者との)応答的なやり取り」と、「(保育者の)温かく受容的な関わり」を記録しておけばOKです。

簡単に表した根拠

思い切り簡単に略したので、一応、そのように略した根拠も書いておきますね。

実は、イ 社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」については、他のものよりも具体的な姿を表すのは難しいです。難しい理由の1つ目は、「身近な人と気持ちが通じ合う」というように、気持ちのことを言っているから、2つ目の理由は、内容の①~④が時系列で、同じような内容について時期を変えて書いているだけだからです。

実際に、保育所保育指針解説には、内容①については「誕生間もない子どもは」、②については「首がすわり、手足の動きが活発になると」、③については「6か月頃には」、④については「9か月頃になると」という言葉が書いてあります。

①を思い切り短くすると「安定感をもって過ごす」になります。なにをもって「安定感を持って過ごす」と言えるかというと、具体的には、「応答的なやり取り」です。

②を思い切り短くすると「保育士等とのやり取りを楽しむ」です。これも、楽しんでいるかどうか、何を見て分かるかというと「応答的なやり取り」です。

③も同様に、「身近な人への親しみの気持ち」を何で見るかというと「応答的なやり取り」です。

④の「意欲」も、何を見て「意欲がある」と判断するかというと、「応答的なやり取り」を見ると、「意欲があるかどうか」が分かります。

⑤だけ、①~④とは違います。「自分を肯定する気持ちが芽生える」ということは、目で見て分かりません。前半部分の「温かく、受容的な関わりを通じて」というところは、保育士等の方を見れば分かります。

ということを踏まえて、内容を一言で表し

内容
①~④応答的なやり取り
⑤温かく受容的な関わり

としました。これらについて記録すればいいんです。

もちろん、①~④は「時系列」とお伝えしたように、それぞれの月齢に応じた姿を書きます。というより、表情や動き、喃語など、保育者等とのやり取りに関して、一人一人の姿をそのまま書くだけです。

具体的な記録

では、「応答的なやり取り」と「温かく受容的な関わり」について、具体的に記録風に書いてみますね。

○オウム返しよりも、相づちやこちらからの話しかけを多くした応答をした。いつもより長く、5分ほどやり取りが続いた。

○「いっぱい汗かいたね」「うん、さっぱりしたね」などと会話をしながら、午睡後に着替えをした。

「温かく受容的な関わり」は、保育士等からの働きかけになるので、子どもと保育士等の、両方の姿や言葉を記録することになります。

これらの例は、ずいぶん簡単に見えるのではないでしょうか。それでいいんです。「これについて足りないのではないか」などと言われたときには、追加すればすむことです。難しく考えて難しい言葉を使っても、それっぽく見えるだけで、内容を伴わないものや筋が通っていないものになりかねません。難しそうな表現をしてあると、難しそうに見えるから指摘されないだけなんです。

今回お伝えした、イ 社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」以外について、具体的に短くしたものを知りたい人は、「保育塾ベーシック」についての詳しい内容を読んでみてください。「ア」「ウ」についても、5領域についても、全ての例をお伝えしています。3日に1度、10分ほどでできる無料のプチ研修がメ-ルで届くメルマガです。

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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

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ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。