リンゲルマン効果(社会的手抜き)を考えて保育現場の適正な配置基準を計算してみる

人は共同作業を行う際、必ず怠けてしまうものらしいです。それは保育現場でも避けられません。保育現場で働いているのも人ですから。この記事では、リンゲルマンの実験で明らかになった数字が本当だとして、それを保育現場に当てはめてみると適正な配置基準がどうなるか…という具体的な計算をしています。

リンゲルマン効果とは

まずは、この記事で取り上げている言葉について、簡単におさらいしておきましょう。ウィキペディアさんの力を借りてしまいます。

社会的手抜き

社会的手抜き(しゃかいてきてぬき、Social loafing)とは、集団で共同作業を行う時に、一人当たりの生産性が人数の増加に伴って低下する現象。リンゲルマン効果、フリーライダー(ただ乗り)現象、社会的怠惰とも呼ばれる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

1人当たりの生産性が人数の増加に伴って低下する現象を、「社会的手抜き」と言うんですね。

リンゲルマン効果

社会的手抜きに関して、実験をした人が何人かいるんですけど、その中でも有名なのがリンゲルマンという人です。

20世紀初頭のフランスの農学者マックス・リンゲルマンは、綱引き、荷車を引く、石臼を回すなどの集団作業時の一人あたりのパフォーマンスを数値化した。実験の結果、1人の時の力の量を100%とした場合、2人の場合は93%、3人では85%、4人では77%、5人では70%、6人では63%、7人では、56%、8人では49%と、人数が増える毎に1人あたりの力の量は低下した。リンゲルマンは、集団が大きくなるほど集団全体のアウトプットと個人のアウトプットの合計の差は拡大するリンゲルマン効果という現象を明らかにした。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

他にも、「ラタネとハーディの実験」というものもあります。こちらは、2人の場合は94%ということで、リンゲルマンが行った実験とほぼ同じ数値となっていますね。

保育現場に当てはめてみると

では、リンゲルマンの実験を、保育現場に当てはめて考えてみますね。

1歳児クラス、2歳児クラスにいる大人が5人の場合

1歳児クラスや2歳児クラスに大人が5人いたとしましょう。子どもの人数がちょっと多いクラスや、支援の必要な子どもがいるとき、手厚い配置にしているときなどは、大人が5人になる場合もありますよね。

ここで、配置基準のことを考えてみます。「大人1人に対して子ども6人」という配置で100%の力を出しているとしましょう。この1:6を単純に5倍すると、「大人5人に対して子ども30人」となります。ですが、リンゲルマンの実験で、5人で共同作業をする時は1人の時の70%しか力を出さないということが分かっています。ということは、実際に見ることができる子どもの数は、30人ではなくて、30人の70%の21人になるはずです。

興味深いのは、「では、大人5人に対して子ども30人が無理なら、もっと大人の人数を増やそう」とした場合です。たとえば、1:6を単純に8倍すると、「大人8人に対して子ども48人」となります。リンゲルマンの実験で、8人で共同作業するときは1人のときの49%しか力を出さないことが分かっていますので、計算してみると…

48×0.49=23.52

…大人が5人から8人に増えたのに、見ることができる子どもの数は3人増えません。

これはあくまでも机上の計算ですが、子どもの人数が多い場合、見落としている子どもがこれだけたくさんいるという可能性があると思うと恐くありませんか?

実際に何人必要か

人は、全力を出しているつもりでも、人数が多い場合は、実際には手を抜いてしまいます…というリンゲルマンの実験を保育の現場に当てはめて計算したものを、改めてスッキリ書きますね。大人1人で6人の1歳児、2歳児を保育することが適正(この時点で無理がありますが)だとして、リンゲルマンの実験通りに保育者が手を抜くと考えると…

  • 大人2人だと子ども11人
  • 大人3人だと子ども15人
  • 大人4人だと子ども18人
  • 大人5人だと子ども21人
  • 大人6人だと子ども22人
  • 大人7人だと子ども23人
  • 大人8人でも子ども23人

この数字を見てみると、どうやら1歳児・2歳児での1クラスの子どもの人数は、20人くらいを上限にするのが良さそうですね。2歳児24人を、1:6の配置基準を単純に4倍して4人の大人で保育しているとしたら、常に6人の子どもを見落としている…という見方もできます。あくまでも机上の計算ですが。

現場の人間としてどうするか

では、実際に働いている側としてどうするかを考えてみましょう。

とにかく、1部屋にいる人数が多くなりすぎないようにすることが必要です。「そんな権限はない」という人がほとんどでしょうから、せめて、部屋を区切る、コーナーに分けるなどして、「みんなでやっている」という状況を変えましょう。

それもできない場合は、「予想以上に見落としている子どもがいるだろう、できてない仕事があるだろう」ということを常に頭に入れておく必要があります。でも、そんなことしていると疲れてしまいますよね。普通に保育をするだけでも大変なことですから。そんな余裕が無い状態で、なんとかなっているとしたら、「他の人の100%以上の力」で誰かがフォローしてくれているだろうということを忘れないようにしておきたいところです。

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管理人うち@uchi70794834|Twitter)

保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。

ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・

そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。

ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。