【効力感?自己受容?】保育をするなら「自己肯定感」を考え直した方が良い話

あなたは「自己肯定感」の意味を考えたことがありますか?

保育所保育指針解説にも登場する「自己肯定感」という言葉。「自分を役に立つ人間だと思う」という意味なのか、それとも、「できない自分も認める」という意味なのか。「ありのままの自分を受け入れる」ということなのか・・・。「自己肯定感を高める」と言われても、言葉の捉え方によって、保育のあり方も変わってきますよね。

実は、この「自己肯定感」という言葉は、あまり一般的ではないんです。

一般的な辞書には載っていませんから。

「自己肯定感」は辞書に載ってない?

「デジタル大辞泉」を利用して検索してみると、「自己肯定感」に一致する見出し語は見つかりませんでした。との表示が出てきます。近年、「自己肯定感」に関する本が何冊も出版され、「自己肯定感を高めるには?」のような記事もたくさん書かれているのに?

「weblio辞書」で調べてみると、「実用日本語表現辞典」に記載してある意味が表示されます。でも、実用日本語表現辞典は、投稿者が言葉の意味を書いていくウェブ上の辞典なんですよね。投稿者というのは、たとえば、私が書き込んでいるようなものです。書き込んだことはありませんが。ウィキペディアも、実用日本語表現辞典を参照しているようで、同じようなことが書いてあります。

MonikaPによるPixabayからの画像

「自己肯定感」は専門的な言葉

子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺度に関する文献検討
── 肢体不自由児を対象とした予備的調査も含めて──


という論文では、「心理学」「教育学」「特別支援教育学」の、計32冊の辞典やハンドブックで、「自尊感情」や「自己肯定感」などの、8つの言葉を調べています。32冊の中で、「自己肯定感」という言葉が出てくるのが4冊、定義してあるのは2冊だけのようです。

まず、1冊目に書いてあることを引用します。

Fでは,自己肯定感に近い概念として「自己有能感」という用語を用いて説明し,「自分の可能性を信じ,自分はできるんだという自信をもち,肯定的に自己を認識すること」としている。

引用元:子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺度に関する文献検討── 肢体不自由児を対象とした予備的調査も含めて──

この論文では、一覧表で、心理学の「こころの問題事典」を「F」としています。

続いて、もう1冊では次のように定義してあるようです。

Vでは,自己受容や自尊感情といった類似している概念との違いは明確ではないとしながら,自己肯定感は「ありのままの自分を受け止め,自己の否定的な側面もふくめて,自分が自分であっても大丈夫という感覚である」と定義し ~(後略)~

引用元:子どもの自尊感情・自己肯定感等についての定義及び尺度に関する文献検討── 肢体不自由児を対象とした予備的調査も含めて──

「V」というのは、「特別支援教育大事典」です。

同じ「自己肯定感」についての定義ですが、受け取り方によっては、保育現場での援助に大きなギャップが生まれそうです。では、保育所保育指針解説には、「自己肯定感」という言葉はどのように使われているのでしょう。

保育指針解説に書いてある「自己肯定感」

保育所保育指針解説では、「自己肯定感」を定義してありません。ここでは自己肯定感が育まれるために、どのように保育をしていくかということを挙げていきますね。

このことを踏まえ、保育に当たっては、一人一人の子どもの主体性を尊重
し、子どもの自己肯定感が育まれるよう対応していくことが重要である。

引用元:保育所保育指針解説 第1章 総則 1 保育所保育に関する基本原則 (3)保育の方法

まずは、「保育の方法」に「一人一人の子どもの主体性を尊重し、子どもの自己肯定感が育まれるように対応していくこと」と、ハッキリと書いてありますね。

「子どもの自己肯定感が育まれるよう対応」とは、具体的にはどうするんでしょう?ちょっと長くて大変ですが、次の引用を頑張って読んでみてください。

子どもは、保育士等をはじめ周囲の人からかけがえのない存在として受け止められ認められることで、自己を十分に発揮することができる。そのことによって、周囲の人への信頼感とともに、自己を肯定する気持ちが育まれる。特に、保育士等が、一人一人の子どもを独立した人格をもつ主体として尊重することが大切である。このように、乳幼児期において、他者への信頼感と自己肯定感が周囲の人との相互的な関わりを通して育まれていくことは、極めて重要である。

引用元:保育所保育指針解説 第1章 総則 2 養護に関する基本的事項 (2)養護に関わるねらい及び内容 イ 情緒の安定 

ここでも、主体性を尊重することが出てきます。主体性については関連して記事を書いていますので、そちらもご覧ください。
保育における子どもの主体性とは

引用している文章の上から下まで全部が大切ですが、保育として「自己肯定感とは」を考えたときに、信頼感と共に育つという部分が特徴的ですね。

まとめ

保育所保育指針解説での「周囲の人への信頼感」は、「みんなが自分をかけがえのない存在として受け止めてくれる、尊重してくれる」が基となって育つものですよね。信頼感と共に育つ、「自己を肯定する気持ち」も、「自分はかけがえのない存在として受け止めてもらえる、尊重してもらえる」が基になっています。

ということは、保育での「自己肯定感」を、この記事で紹介した論文に出てくる2つの定義と比べてみると、後者の「ありのままの自分を受け止め,自己の否定的な側面もふくめて,自分が自分であっても大丈夫という感覚である」の方に近いですね。

この記事の内容を、より深く理解し、実際の保育に生かしたいと思う方は、「保育塾ベーシック」についての詳しい内容を読んでみてくださいね。

保育塾ベーシックの紹介

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管理人うち@uchi70794834|Twitter)

保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。

ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・

そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。

ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。