「体験」と「経験」
この2つの意味と違いに、迷うときがありますよね。
迷うかもしれませんが、「体験」と「経験」の意味には、はっきりとした違いがあります。
特に、幼い子どもについて考えてみると、「体験」と「経験」の大きな違いが見つかります。
「体験」と「経験」の意味と違いを一言で表すと
すごく簡単に表すと
体験
身をもって感じること
個別的、主観的
経験
行動を通して実際に感じたり覚えたりすること
一般的、客観的
「体験」と「経験」の意味と違いを、もう少し詳しく表すと
「体験」と「経験」の意味
体験と経験を辞書で調べると、次のように載っています。
【体験】
自分で実際に経験すること。また、その経験。「貴重な体験」「戦争を体験する」
【経験】
実際に見たり、聞いたり、行ったりすること。また、それによって得られた知識や技能など。「経験を積む」「経験が浅い」「いろいろな部署を経験する」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
体験というのは、実際の行為を通して感じたことを指します。
それに対して、
経験というのは、得られた知識や技能も含みます。
経験の方が、使われる範囲が広いです。
使われ方を考えると違いが分かる
「体験」と「経験」の使われ方を考えてみると、2つの違いがよく分かります。
[用法]経験・[用法]体験――日常的な事柄については「経験(体験)してみて分かる」「はじめての経験(体験)などと相通じて用いられる。◇「経験」の方が使われる範囲が広く、「経験を生かす」「人生経験」などと用いる。◇「体験」は、その人の行為や実地での見聞に限定して、「恐ろしい体験」「体験入学」「戦争体験」のように、それだけ印象の強い事柄について用いることが多い。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
経験の方が、時間の積み重ねを感じられます。
「仕事の経験が・・・」と言うと、
何年もしてきたことのように感じられますね。
「仕事の体験が・・・」になると、
中学生の職業体験が思い浮かびます。
「経験値」という言葉もありますね。
経験は、積むことで身に付く知識や技能につながります。
経験を積み重ねることについては、
興味のある人はこちらの本も参考にしてください。
ジョン・デューイ
『学校と社会・子どもとカリキュラム』
保育での使われ方を考える
幼稚園教育要領解説(平成30年2月 文部科学省)には、
「体験」という単語が300回ほど使われています。
「(2)体験の多様性と関連性」という項もあります。
それに対して、「経験」は150回ほど。
「体験」の方が2倍程多く使われています。
保育所保育指針解説(平成 30 年2月 厚生労働省)には、
「体験」という単語が200回ほど使われています。
それに対して、「経験」は220回ほど。
こちらは、「経験」の方が多く使われています。
大人の方が経験を積んでいるので、
幼くなるほど、「経験」という言葉を使わない気がしませんか?
ですが、幼稚園より幼い子どもがいる保育所の方で、
「経験」という単語が多く使われています。
なぜでしょうか?
保育所保育指針解説の、次の部分を読むと、その理由がよく分かります。
⑤ おむつ交換や衣服の着脱などを通じて、清潔になることの心地よさを感じる。
清潔になる心地よさは、経験を通して学習されるものである。おむつが濡れているのを感じている時に、「気持ち悪いね」という気持ちの伴った言葉がけとともにおむつを交換してもらい、その結果、濡れていた時とは異なる乾いてさらさらした感覚を「さっぱりしたね」というやはり気持ちの伴った言葉とともに経験する。この経験が毎日何度も繰り返されることで、清潔に対する心地よさの感覚が育っていく。衣服の着脱や食事時に手や顔を拭いてもらうといった経験も、同様である。このような人としての根源的な部分に、心を込めて丁寧に対応され心地よさを味わう経験は、他者に自分の存在を肯定的に受容される経験であり、それは子どもが自身の存在を肯定的に受け入れることへとつながる経験でもある。出典:厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000202211.pdf
ここで言っているのは、「オムツが濡れた」と感じる体験ではないですよね。
かけられる言葉が一緒になっているから経験です。
幼いほど、親や保育士と密接な関わりがあります。
だから、幼い子どもの方が、経験することが多いんです。
「気持ちの伴った言葉」をいっぱいかけましょうね。
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