「子どもが話を聞かないのは、話が面白くないからです。」
「『話を聞いたら楽しかった』という経験をすると、子どもは話を聞きたくなります。」
「先に子どもの話をじっくりと聞きましょう。」
などと言われることがあります。
ハッキリ言って、これだけを言われても、「じゃあどうするの?」って思いませんか?
「それは正論だけど、具体的にどうするの?」
「楽しい経験って言っても、真面目な話のときはどうするの?」
「全員の話を聞いてたら1日終わりますけど」
って思った人。
その通りです。疑問が浮かぶのは、あなたが前向きに考えているからです。
この記事では、子どもが話を聞くようになるために、
あなたが今すぐにできること
を紹介しています。
一度に全部はできないでしょうから、少しずつ、明日から試してみましょう。
子どもが話を聞くようになるためにベテランの先生がしていること
多くの場合、ベテランの先生がしているのは、「面白い話題で話す」ではなくて「話を聞きたくなるような話し方」です。
よく考えてみてください。
「球根を植える話」を、あなたがしても聞かなくて、ベテランの先生がすると聞きますよね。
「背筋を伸ばして座る話」を、あなたがしても聞かなくて、ベテランの先生がすると聞きますよね。
ベテランの先生は別に「面白い話題」を取り上げているのではありません。
「話を聞きたくなるような話し方」をしているから、話を聞く態度が変わるんです。
子どもが話を聞きたくなるような話し方で大事なこと
子どもが話を聞きたくなるような話し方で大事なことは次の3つです。
- 目的に視点を当てて話す
- 本気で話す
- 理解できる言葉で話す
どういうことか、詳しく説明しますね。
目的に視点を当てて話す
球根を植える場合、あなたは、植え方の話ばかりしていませんか?
たとえば、旅行に行くとき、
「8時に空港に集合ね。で、羽田に着いたら京急の方に乗って、それから山手線に乗り換えたら早いでしょ。早めに予約すれば、新幹線よりも安くなるんじゃない?」
という「行き方」の話と、
「このカフェ、すごいインスタ映えするらしいから。あと、スカイツリーが川に映って、ダブルで見えるところがあるらしいよ。」
という「目的(行ってからのこと)」の話と、
話を聞きたくなるのはどっちですか?
多くの人は、東京への
「行き方(飛行機や電車にどのように乗るか)」よりも、
「行ってからのこと(きれいなんだろうな。いっぱい写真撮ろう。)」のほうに期待をもつはずです。
だから、提案した人の話を聞いた上で、会話も弾みます。
(行き方のほうに興味をもつ人も、当然います。)
それと同じで、
多くの子どもは、球根の
「植え方(鉢底石や土をどのように入れるか)」よりも、
「花が咲いてからのこと(きれいなんだろうな。どんな花かな。)」のほうに期待をもつはずです。
だから、先生の話を聞いた上で、会話も弾みます。
(植え方のほうに興味をもつ子どもも、当然います。)
同じ話題でも、目的に視点を当てることで、人は話を聞くんです。
話をするときには、目的に視点を当てて話しましょう。
さらに、お得なことに、目的に視点を当てて話すことは、
ねらいと直結してるんです。
先程は、「植え方」よりも「花が咲いてからのこと(きれいなんだろうな。どんな花かな。)のほうに期待をもつ」という話をしていましたよね。
結果、話を聞いた上で、会話も弾むという話でした。
ねらい
◯どんな花が咲くか、期待をもって球根を植える。
こうしてみると、「目的を視点にした話」と、「ねらい」が、そっくりなことが分かりますよね。
「最初はこんな石を入れるんだよ。それから、土をふんわり入れるからね。」
という話し方よりも、
「どんな花が咲くと思う?」
「じゃあ、元気に咲くように、お花のおうちを作ろうか。」
という話し方のほうが、子どもが興味をもてます。
植え方は、その都度、伝えればいいんです。上手く伝わらないとしたら、個別に伝えればいいし、補助の先生がフォローしてもいいですよね。
本気で話す
先程の、「目的を視点にして話す」は、保育のプロならではの話です。言うのは簡単ですが、やってみると上手くいかないかもしれません。
今度は、その気になれば誰でもできる方法です。
子どもに話をするときは、本気で話しましょう。
子どもが話を聞かないのは、話す人が本気ではないからです。
「いや、本気だし(怒)。」という人も、当然いると思います。
では質問です。
また球根を植える話をしますね。
あなたが球根を植える話をするとき、次のようなことを思っていませんか?
- 「土の袋、開けておけばよかったかな」
- 「◯◯ちゃん、姿勢悪いな」
- 「えーと、次どう言うんだっけ?」
- 「けっこう時間が経ってるから急がないと」
- 「◯◯君、また砂を触ってるし」
- 「早くしないと、◯◯先生に叱られる」
- 「補助の先生、それ置く場所が違うって」
みたいなことを、思っていませんか?さらに、子どもの姿勢が悪かったり砂を触っていたりしたら、注意をしていませんか?
だったら本気ではないと思います。「球根を植える」ということ以外を考えていると、子どもに伝わりません。伝わらないから、話を聞いていても面白くないんです。
上手に話せなくても、本気だと伝わるんですよ。
誰かに本気で「好きだ」って言われたら、嬉しいですよね。
大事なところを少しくらい言い間違えたとしても、本気なら気持ちは伝わります。
告白の最中に、違うことを考える人は少ないでしょうが、違うことを考えていたとしたら、おそらく見透かされます。
さらに、「好きだ」って言ってくれている相手が、「ねえ、聞いてる?視線がこっち向いてないときがあるけど。」って言い出したら、「ハア!?何言ってるのこの人?」ってなりますよね。
「告白をしてくれた人」ではなくて、「告白の最中なのに視線のことに文句をつける細かい人」になります。話をしている最中に、話を中断して、相手の聞く態度を注意するって、こういうことです。
子どもも大人と同じように、嫌な気持ちになります。話の続きを聞けるはずはありません。
理解できる言葉で話す
子どもって、日本語をマスターしていないんです。
どんなによく話す子どもでも、知らない言葉がたくさんあります。
中学・高校時代の英語を思い出してください。
長文を訳すときに、どこか1つか2つの単語が分からないだけで、「質問の意味すら分からない」「全体の意味を全く反対に解釈していた」ということがありませんでしたか?
単語の1つや2つ、分からなかったところで、全体を推測することができる人もいます。だけど、1つや2つが分からないだけで、全体が分からなくなる人もいるんです。
子どもも同じです。いろんな子どもがいます。知らない言葉が1つか2つあるだけで、全体を理解できない場合があります。話が長いほど、分からない言葉が出てくることになるので、全てが分からなくなります。
子どもが理解できる言葉で話しましょう。
慣れないうちは、子どもには理解できない言葉を使っていることすら気付くことができません。
ですので、なるべく短い文で伝えるようにしましょう。説明することがあったら、長くならないように、その都度伝えましょう。
まとめ
子どもに話をするときには、子どもが聞きたくなるような話し方をしましょう。
ポイントは3つです。
1つ目のポイントは、「目的に視点を当てて話す」
「やり方」よりも、「やった結果どうなるか」のほうが、多くの人が興味をもちます。話を聞いてほしかったら、目的に視点を当てて話しましょう。
2つ目のポイントは、「本気で話す」
本気の告白は、たとえ上手くいかなかったとしても、気持ちが伝わります。本気なら、聞くほうも真剣に聞きます。保育でも同じことです。子どもと本気で向き合いましょう。
3つ目のポイントは、「理解できる言葉で話す」
みんな気付いていないだけで、子どもに理解できない言葉を相当使っています。分からない言葉が1つあるだけで、全体が分からなくなる子どももいます。なるべく、子どもが理解できる言葉を使いましょう。1つの文は短くしましょう。
「並び方を変える」「先生の立ち位置」「子どもの視界に余計な物は置かない」「声のトーン」「話すスピード」など、子どもが話を聞くようになるテクニックは、いろいろあります。
ですが、核となるのは、ここで紹介した3つです。
特に、1つ目の「目的に視点を当てて話す」は、プロとして意識したいところです。「ねらい」ともつながります。
できそうなことから、少しずつ試してみてくださいね。
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