「子どもの自己肯定感を育むために、しっかり褒めましょう」というように言われることがあります。これ、本当でしょうか。実は、褒めるだけだと自己肯定感は低くなってしまう可能性があるんですよね。「自己肯定感」と「褒める」の意味を考えてみると分かります。その上で、ではどうすれば良いかということを考えていきましょう。
「自己肯定感」とは
自己肯定感とは、言葉の通り「自分自身を肯定する感覚」です。他者がどうとか、周りがどうとか、そんなことは関係ありません。「今」「自分が」「いいよね」と思えることです。「安心だなあ」が安心感、「幸せだなあ」が幸福感、「自分っていいなあ」が自己肯定感です。難しく考えるのはやめましょう。言葉通りです。
と考えると、「褒める」という言葉が入っていないことが分かります。
「褒める」とは
「褒める」を辞書で調べると、次のように解説してあります。
ほ・める【褒める/▽誉める】 の解説
出典:デジタル大辞泉(小学館)
1 人のしたこと・行いをすぐれていると評価して、そのことを言う。たたえる。「勇気ある行動を―・める」「手放しで―・める」「あまり―・めた話ではない」⇔そしる/けなす。
「褒める」って、「人のしたこと・行い」に対してすることなんですよ。その人そのもの、その人の存在を肯定するものではないんです。そして、「すぐれていると評価すること」が「褒める」なんですよね。すぐれていないときには「褒める」ができません。
すぐれていることを「褒める」だと全然足りない
「褒める」というのは、「否定する」よりもずっと良いことなんでしょうけど、「褒める」だけだと全然足りないんですよね。図に表してみるとよく分かります。
すぐれていると評価することが「褒める」なので、「すごい自分」の部分しか褒めてもらえないんですよ。中には過程を褒めることができる人もいて、「頑張る自分」の部分も褒めてもらえるかもしれません。それでも(この図には書いてないですが)、「ほどよく手を抜く自分」とか「あっさりと諦める自分」「心の平穏を保つために見ないようにしておく自分」などが褒められることは少ないでしょう。
たくさん褒めれば褒めるほど、褒められている部分だけが肯定されることになります。自分自身を肯定する感覚が「自己肯定感」ですので、褒められるだけでは足りないんですよね。足りないどころか、褒められた部分とはかけ離れた「ダメな自分」を否定されていると感じることにもなります。
ではどうするか
「褒める」だけでも難しいのに、じゃあ一体どうすればいいの?これ以上無理。
と思う人もいるかもしれませんが、褒めようと思うから難しいんです。すぐれた部分を見つけないといけませんから。見つからないと、「うちの子には褒めるところが無い」というように、落ち込むことになります。
褒めること、上手くできた部分を見つけることから、ちょっと目を離してみましょう。「褒める」とか「否定する(注意する、悪い部分を指摘する、直してほしいところを伝える等も含みます)」ではない、他の言葉を子どもにどれくらいかけていますか?と言われてもまだ難しいですよね。
一言で表すと、「子どもが今見せている姿そのものを大事にする」ということになります。
子どもの姿を「見守る」。ちょっとドキドキするような遊び方だけど、肝心なときはなんとかやってるし…と「受け入れる」。同じような関わりでは「受容する」「認める」「尊重する」など。子どもが感じているであろうことを「言葉に表す」。それから、子どもに「寄り添う」「共感する」。できること、かける言葉はたくさんあります。
これについては、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「子どもが今見せている姿そのものを大事にした援助」をどうするか具体的に考える
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
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