保幼小連携や一貫教育に取り組んでいるときには、いろいろと難しいことが起こるでしょう。
分からなくて、他の先生に任せたくなるときもあると思います。
しかし、保幼小連携や一貫教育では、絶対にやってはいけないことがあるんです。
安易に任せてしまうと、その後も「前例があるから」と、やめることが難しくなる場合があります。
この記事では、保育に関わる人たちが、あまり知らない、小学校や中学校の様子を紹介しながら、保幼小連携や一貫教育でやってはいけないことをお知らせしています。
少しでも分かった上で、保幼小連携や一貫教育に取り組んでくださいね。
保幼小連携や一貫教育でやってはいけないこととは
保幼小連携や一貫教育で、絶対にやってはいけないことは次の4つです。
- 指導案の様式や文章表現を安易にそろえること
- カリキュラムの様式を安易にそろえること
- 評価の仕方を安易にそろえること
- 小学校の先生にお任せすること
特に、一貫教育では、指導案やカリキュラムの様式をそろえたくなります。
一目見て、「一貫してる」っていうように見えますから。
でも、これらを安易にやってしまうと、保育が保育ではなくなります。
指導案の様式を安易にそろえてはいけない
小学校の指導案を、きちんと読んだことがありますか?
各学校や教科によって違いますが、だいたいこんな感じで書かれています。
1 単元名
2 単元の目標
3 単元の評価規準
4 展開計画
5 指導上の立場
○単元観○児童観○指導観
6 本時案
保育との一番の違いは、「子ども主体」か「単元主体」かです。
だから小学校では「1 単元名」となっています。
小学校の指導案では、「5 指導上の立場」の中に、やっと「児童観」として子どもの姿が登場します。
しかも、「この単元に関連したことを以前やったときには、このような姿が見られた」という姿しか書かれません。
こんな様式で保育指導案が書けますか?
「順番変えるだけでしょう。」「この方が読みやすいでしょう。」と、小学校の先生は言われます。
でも、安易にそろえてはいけません。
「順番変えるだけ」が通用するなら、もっといろんな形の保育指導案が存在しているはずです。
それに、「読みやすい」と勧めた先生以外の人は読みませんから。
「保育指導案を誰のために書くのか」ということを考えましょう。
まずは、保育をする子どものためですよね。
そして、自分の考えをまとめるため。
それから、保育を見てくれる人たちのためです。
保育指導案を読まない小学校教員のために様式を変えてはいけません。
それに、指導案の様式をそろえられるものなら、先人達がとっくにやっています。
全国各地の一貫校や大学の附属では、ある程度、小学校の指導案と様式がそろえてあることがあります。
でも、小学校の指導案と様式をそろえてしまうと、保育として足りない部分がたくさん出てきます。
だから、補足資料がたくさん必要です。
様式はそろえるけど、保育関係者にもなるべく分かりやすいように書いて、足りない部分の補足資料を用意して、「これじゃ分からない。もっとそろえられないの?」って小学校の先生に言われたら書き直して、さらに足りなくなった部分の補足資料を追加して・・・ってことをやる時間で、もっと保育のことを考えた方が良いです。
一貫校や大学の附属では、小学校や中学校の先生が、幼稚園の配属になることがあります。
幼稚園と小学校の両方に通じた人達が満足にできなかったことを、あなたはできますか?
指導案の様式や文章表現を、安易に小学校とそろえてはいけません。
表面上だけそろえて、意味のない指導案になるか、しっかりしたものにするために、とんでもなく大変な思いをするかのどちらかになります。
カリキュラムの様式を安易にそろえてはいけない
カリキュラムの様式をそろえてはいけない理由は、指導案の様式をそろえてはいけないのと同じです。
幼稚園、保育所のカリキュラムは、小学校のものとは別物なんです。
それに加えて、もう一つ理由があります。
カリキュラムのことが分かっていない人たちが集まって、安易にカリキュラムの統一をしてはいけません。
カリキュラムってなんのことだか分かりますか?
教育課程を英語で言うとカリキュラムです。
あまり使い分けをされていないこともあります。
でも、実際はカリキュラムのほうが広い意味をもっています。
この図を見て、「あれ?」と思った方もいることでしょう。
保育って、「何を教えたいか」だけではなく、「何を学びたいか」も入っています。
例えば、「自分でできることは自分でやろうとする」というのは、「何を教えたいか」というより「何を学びたいか」の方ですよね。
ということは、大雑把に言うと、幼稚園の教育課程や、保育所の全体的な計画は、小学校や中学校で言うカリキュラムなんです。
ちょっと待ってよ。
小学校だって、「何を学びたいか」ということがあるでしょう。
と思いませんか?
小学校や中学校の教育課程って、各教科や行事を何時間教えるかということが、一覧表のように並んでいるものです。
だから、「何を教えたいか」だけなんです。
上のリンクを開いて、「小学校版(例)」「中学校版(例)」を見るとよく分かります。
もっと詳しい教育課程でも、単元名が並んでいるくらいです。
ということは、小学校の教育課程と、幼稚園の教育課程、保育所の全体的な計画は、全く違うものなんです。
だから、カリキュラムの様式を安易にそろえてはいけません。
これらの違いについては
幼稚園・保育所の「教育課程・全体的な計画」と「カリキュラム」の違いとは【小中学校とは違います】を読んでください。
意味を分かっていない人が集まって話をしても、すれ違うだけです。
評価の仕方を安易にそろえてはいけない
小学校の指導案の話をしたときに、「3 単元の評価規準」と書いてあるのに気付きましたか?
小学校の指導案には、評価のことも書きます。
ということは、指導案の様式をそろえたら、「評価も書いてよ。」ってことになります。
評価の仕方も、安易にそろえてはいけません。
詳しく話すと長くなるので、【大問題!】「3つの柱」で子どもの評価を求められる可能性と対応法を読んでください。
簡単に言うと、保育には保育の評価があります。
指導案やカリキュラムの様式をそろえてはいけないのと同じことです。
何十年もかけて、保育にとって最良のやり方になっているんです。
だから小学校と安易にそろえてはいけません。
小学校の先生にお任せしてはいけない
「連携や一貫が難しいから」「小学校の先生が頼りになるから」といって、小学校の先生にお任せしてはいけません。
小学校のやり方になってしまうからです。
もし、お任せした場合、合同で小学校の先生と保育&授業をするのであれば、それは授業になり、小学校の先生の助手をすることになります。
ここまで、「指導案とカリキュラムと評価を、小学校とそろえてはいけません」と言ってきました。
「小学校のやり方はできません。でもお任せします。」
というのも無責任な話ですよね。
勉強して、分からないことは調べて、少しずつでも参加しましょう。
まとめ
保幼小連携や一貫教育では
- 指導案の様式や文章表現を安易に小学校とそろえてはいけません。
- カリキュラムを安易に小学校とそろえてはいけません。
- 評価の仕方を安易に小学校とそろえてはいけません。
保育所や幼稚園の指導案、カリキュラム、評価は、小学校のものとは違うからです。
何十年もかけて、保育所や幼稚園に合ったものに改良されているからです。
そろえたつもりでも、表面上だけで、意味のないものになります。
もしくは、意味あるものにするために、ものすごい労力を費やすことになります。
「新しいものを自分が創ってみせる」という覚悟を決めて、本気でやるのであれば、どうぞ頑張ってください。
だから、「安易にそろえてはいけません。」と、「安易に」という言葉を書いてきました。
そして、難しいからといって、
- 小学校の先生にお任せしてはいけません。
小学校の先生にお任せすると、小学校のやり方になっていきます。
分からなくても、難しくても、小学校の先生と対等に渡り合えるように、少しずつ頑張りましょう。
連携や一貫をする上で、分かっておいた方が良いことは、いろいろとあります。
「10の姿」で語っても小学校の教員に通じない3つの理由と対処法
【大問題!】「3つの柱」で子どもの評価を求められる可能性と対応法
幼稚園・保育所の「教育課程・全体的な計画」と「カリキュラム」の違いとは【小中学校とは違います】も
ご覧ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「もっといろいろと知りたい」という方は、