ショックなお知らせです。
どれだけ一生懸命「10の姿」「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」で語っても、小学校の先生達には通じません。
正確に言うと、通じたつもりになっていても、伝えたいことがそのまま伝わることはありません。
「いや、ちょっと待ってよ。『幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を手がかりにして話しましょう』って風に、保育所保育指針に書いてあるでしょ。」と思った方。
その通りです。
あくまでも、「10の姿」「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は手がかりなんです。
この記事では、小学校の先生と話をするときに、「10の姿」をどのように使って話せばよいかをお伝えしています。
子ども達の具体的な姿を思い浮かべながら読んでくださいね。
「10の姿」で語っても小学校の教員に通じない3つの理由
まずは、「10の姿」の健康な心と体についての文を確認してみます。
健康な心と体 幼稚園生活の中で、充実感をもって自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせ、見通しをもって行動し、自ら健康で安全な生活をつくり出すようになる。
保育所保育指針解説、幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説にも同じように書いてあります。
ここに出てくる言葉を使って、
「今年の年長の子ども達は、やりたいことに積極的に向かって、見通しをもって行動することができていますよ。」
とか言うと、100%誤解されます。
入学してから数ヶ月後に、
「あの時は『見通しをもって行動することができている』と言われたけど、全然そんなことないですよ。」
なんて言われるかもしれません。
こんな誤解が生まれてしまう理由は次の3つです。
- 同じ子どもを見ていても捉え方が違うから
- そもそも幼稚園・保育所での姿を見てないから
- 伝える側が「10の姿」を理解していないから
同じ子どもを見ていても捉え方が違う
幼・保と小学校の違い
小学校の教員と、保育に携わる人たちとでは、子どもの捉え方が違います。
大事にしているものが違うので、捉え方が変わるのは、ある意味、当然のことです。
「そろそろ片付けだな」「大体片付いたから次は掃除だな」
これが分かって、実際に行動すれば、それは見通しをもった姿ですよね。
でも、それは保育での感覚です。
小学校では、チャイムを合図に、時間通りに始まらないといけません。
(チャイムが無いところも、もちろんありますが)
片付けの途中でチャイムが鳴ったら、
そのままにしておいて後から怒られるか、
最後まで片付けて授業に遅れて怒られるか、
主にこの2択です。
小学校で見通しをもって行動するためには、時計を正確に読む力と、片付けなどにどのくらい時間がかかるかを予測する力が必要です。
そんなことは、上の学年になっても、すぐにはできません。
そうすると、
「幼稚園の先生は『今年の子ども達は見通しをもって行動する』って言ってたけど、全然できてないな」
と思われることになります。
「10の姿」をどう使うか
「10の姿」は、あくまでも手がかりです。
「見通しをもって行動できます。」と言うためにあるのではありません。
健康な心と体 幼稚園生活の中で、充実感をもって自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせ、見通しをもって行動し、自ら健康で安全な生活をつくり出すようになる。
保育所保育指針解説、幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説にも同じように書いてあります。
これを参考にして、
- 見通しをもって行動するというのは、幼稚園では具体的にどのような姿なのか
- 小学校ではどのような姿なのか
- 小学校では、子どもが見通しをもって行動するために、どのような指導をしているのか
- 1年生の段階では、具体的にどのような指導が適切なのか
というようなことを話すために、「10の姿」はあるんです。
子どもの発達と学びの連続性を確保するためには、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を手がかりに、保育所の保育士等と小学校の教師が共に子どもの成長を共有することを通して、幼児期から児童期への発達の流れを理解することが大切である。すなわち、子どもの発達を長期的な視点で捉え、保育所保育の内容と小学校教育の内容、互いの指導方法の違いや共通点について理解を深めることが大切である。
保育所保育の内容と小学校教育の内容、互いの指導方法の違いや共通点について理解を深めることが大切である。
この部分が重要です。
幼稚園・保育所と小学校が違うのは当然です。
そこは絶対にそろえることができません。
それなのに、安易に様式などを統一しようとするから、保幼小連携や一貫教育がおかしなことになってしまいます。
このことについては、【WARNING!】保幼小連携や一貫教育で絶対にやってはいけない4つのことをご覧ください。
そもそも幼稚園・保育所での姿を見ていない
これは、説明するまでもないですよね。
小学校の先生が、幼稚園・保育所での子どもの姿を見ていなかったら、いくら「10の姿」を手がかりとして話をしても、受け取り方は違います。
入学してくる全部の園を見るのは大変です。
でも、いくら忙しくても、少なくとも1~2園は、修了前の姿を見てほしいですよね。
そうすれば、修了前の子ども達が、どれだけ育っているかがよく分かります。
伝える側が「10の姿」を理解していない
これも、説明するまでもないですね。
伝える側が理解していなかったら、相手に伝わるはずはありません。
「10の姿」について、他の人の事例や例文に頼っている状態では、「10の姿」で語ること自体ができません。
小学校の先生と話をする前に、「10の姿」について、しっかりと考えてみてくださいね。
【10の姿】「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」のとらえ方と具体例
まとめ
「10の姿」は、あくまでも子どもを語るための手がかりです。
きっかけにすぎません。
「10の姿」を手がかりとして、そこからどれだけ具体的な姿で話すことができるかがポイントです。
そう考えると、教育課程・全体的な計画で、3、4歳の姿を「10の姿」と結びつけるのは、あまり意味がありません。
教育課程・全体的な計画は、期間が細かく分かれていないから、具体的な姿で表しませんよね。
「3つの柱」「10の姿」を踏まえた教育課程・全体的な計画の見直し方でも、「10の姿」を無理して取り入れないでということを書いています。
指導計画も同じことです。
文を書くスペースがほとんどないような一覧表を作っても、具体的な姿にはなりません。
具体的な姿で語ることができるように、実際の子どもの姿をしっかりと見てくださいね。
「10の姿」と同じように、「3つの柱」でも小学校の先生とのすれ違いは起ります。
【大問題!】「3つの柱」で評価を求められる可能性と対応法も読んでみてください。
さらに、次のことにも気をつけましょう↓
幼稚園・保育所の「教育課程・保育過程」と「カリキュラム」の違いとは【小中学校とは別物です】
【WARNING!】保幼小連携や一貫教育で絶対にやってはいけない4つのこと
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務経験あり。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。