あなたは「教育課程・全体的な計画」と「カリキュラム」の違いが分かりますか?
「カリキュラム・マネジメント」という言葉が出てきて、気になっている方も多いと思います。
(保育所保育指針には、「カリキュラム・マネジメント」という言葉は出てきませんが、するべきことは一緒です。)
【本当はみんな知っている】幼稚園・保育所のカリキュラム・マネジメントとは
さらに、小学校の教育課程とのつながりも考えないといけないのに、小学校と幼稚園の教育課程は別物なんです。
これらの違いが分からないまま、詳しい話はできませんよね。
この記事では、教育課程・全体的な計画とカリキュラムとの違い、幼稚園の教育課程と小学校の教育課程の違いを、簡単に説明しています。
びっくりするくらい簡単なので、難しく考える必要は全くありません。とにかく読んでみてください。
幼稚園の教育課程・保育所の全体的な計画と、小中学校の教育課程、カリキュラムの違いを一発で図解すると
幼稚園の教育課程や保育所の全体的な計画と、小中学校の教育課程、カリキュラムの違いを、一発で図解すると、こうなります。
カリキュラムが一番広い意味をもっています。
その一部が教育課程なんです。
小中学校の教育課程より、幼稚園の教育課程や保育所の全体的な計画の方が、多くのことが書かれています。
ただ、具体的な数字(この活動を何時間するか)については、小中学校の方が詳しいです。
ということで、幼稚園の教育課程と小中学校の教育課程は、「教育課程」という名前は一緒ですが、別物です。
名前は違いますが、幼稚園の教育課程と保育所の全体的な計画の方が似ています。
違いについては、以上で終わりです。
ざっくりと、
小中学校の教育課程<幼稚園の教育課程・保育所の全体的な計画<カリキュラム
ということと、
小中学校の教育課程と幼稚園の教育課程は別物
ということを覚えておきましょう。
もっと詳しく知りたい人は、続きを読んでください。
カリキュラムの意味
「じゃあ、カリキュラムって何?」って思いますよね。
カリキュラムは、教育課程、指導計画などで、目に見えるようにしてあるものだけではありません。
「ヒドゥンカリキュラム(隠れたカリキュラム)」「潜在的カリキュラム」という言葉があります。
たとえば、
- 外国の伝統的な学校で、寮によって風紀が違う
- 男女によって、生徒会や学級での係が違う
- 先輩から受け継がれた習慣で、この学校はあいさつが素晴らしい
などのように、明確に示されていないのに、教えられ、学んでいくようなものを「ヒドゥンカリキュラム」と言います。
このような、学校の雰囲気、環境なども加えたものを、全部合わせて「カリキュラム」と呼びます。
ここまで読んで、「幼稚園の教育課程って・・・」と、疑問を持った人もいますよね。
人間関係や環境って、小中学校で言う、ヒドゥンカリキュラムなんです。
小中学校の先生に、幼稚園の教育課程を見せると、「小学校の教育課程と全然違うね。」「これって教育課程なの?」などと言われます。
幼稚園の教育課程や保育所の全体的な計画は、小中学校の先生にとってのカリキュラムのようなものだからです。
違って当然です。
別物だから、保幼小連携や一貫教育のときに、安易に様式を統一しようとしてはダメなんです。
このことについては、【WARNING!】保幼小連携や一貫教育で絶対にやってはいけない4つのことも合わせてご覧ください。
- スタートカリキュラム
- アプローチカリキュラム
- 食育カリキュラム
- 年間カリキュラム
などの言葉がありますよね。
これらは、「小学校に入学するとき」「年間」などと、カリキュラムを一定の期間で区切ったり、「食育」などとカテゴリーで分けたりしたものです。
英語や運動などを、時間を決めて取り入れている幼稚園・保育所の場合、「カリキュラム」は、小中学校で言う「カリキュラム」と同じ意味で使われているようです。
各園で独自の理論があると思いますので、詳しくは直接問い合わせなどをされると、教えてもらえるかもしれません。
教育課程の意味
小中学校の教育課程
「じゃあ、教育課程って、結局何なの?」と思いますよね。
小学校や中学校の教育課程を見たことがありますか?
○様式や内容は各教育委員会により異なるが、例えば、小中学校の場合には、
①教育目標
②指導の重点、方針
③各教科、総合的な学習の時間、学級活動等の時数
④学校行事および児童会・生徒会活動等の時数
などを、各教育委員会が定める様式等により、前年度の定められた時期までに届けることとされていることが一般的。
小中学校の教育課程は、このように、何を書くかがはっきりしています。
さらに、次のリンクを開いて、「小学校版(例)」「中学校版(例)」を見ると、小中学校の教育課程がどのようなものか、よく分かります。
もっと詳しい教育課程でも、単元名が並んでいるくらいです。
要するに、
教育目標を決めて、指導の重点と方針を決めて、教育委員会が定めた様式で、教科や行事を何時間するか記入する
というのが小中学校の教育課程です。
幼稚園の教育課程
幼稚園の教育課程って、ものすごく複雑です。
幼稚園教育要領解説には、「こういうことを考慮して書きなさい。」ということは書いてあるけど、
「これとこれを書きなさい。」って、はっきりと書いてないんです。
書いてあるかもしれませんが、私には上手く読み取れません。
一番分かりやすいのはこの部分でしょうか。
具体的な編成の手順について(参考例)
① 編成に必要な基礎的事項についての理解を図る。
・関係法令、幼稚園教育要領、幼稚園教育要領解説などの内容について共通理解を図る。
・自我の発達の基礎が形成される幼児期の発達、幼児期から児童期への発達についての共通理解を図る。
・幼稚園や地域の実態、幼児の発達の実情などを把握する。
・社会の要請や保護者の願いなどを把握する。
② 各幼稚園の教育目標に関する共通理解を図る。
・現在の教育が果たさなければならない課題や期待する幼児像などを明確にして教育目標についての理解を深める。
③ 幼児の発達の過程を見通す。
・幼稚園生活の全体を通して、幼児がどのような発達をするのか、 どの時期にどのような生活が展開されるのかなどの発達の節目を探り、長期的に発達を見通す。
・幼児の発達の過程に応じて教育目標がどのように達成されていくかについて、およその予測をする。
④ 具体的なねらいと内容を組織する。
・幼児の発達の各時期にふさわしい生活が展開されるように適切なねらいと内容を設定する。その際、幼児の生活経験や発達の過程などを考慮して、幼稚園生活全体を通して、幼稚園教育要領の第2章に示す事項が総合的に指導され、達成されるようにする。
⑤ 教育課程を実施した結果を評価し、次の編成に生かす。
・教育課程の改善の方法は、幼稚園の創意工夫によって具体的には異なるであろうが、一般的には次のような手順が考えられる。
ア.評価の資料を収集し、検討すること
イ.整理した問題点を検討し、原因と背景を明らかにすること
ウ.改善案をつくり、実施すること
上の文の中でも、「②各幼稚園の教育目標に関する共通理解を図る」などと書いてあります。
「教育課程には幼稚園の教育目標を書く」とは書いてないんです。
でも、実際は、教育課程には教育目標を書きますよね。
「① 編成に必要な基礎的事項についての理解を図る」ということを、みんなでやっていますか?
「③幼児の発達の過程を見通す」に関しては、教育課程に書いてない園もあるかもしれませんね。
特に、「どの時期にどのような生活が展開されるのかなどの発達の節目を探り」の部分は、手つかずの園も多いのではないでしょうか。
このことについて、取り組んでみようという方は、教育課程・全体的な計画の「期」とは【ちゃんとした意味を知っていますか?】を読んでみてください。
教育課程・全体的な計画に書かれることが多いのは「④ 具体的なねらいと内容を組織する」の部分ですよね。
ということで、「幼稚園の教育課程や全体的な計画にはこれを書きましょう」って、はっきり示されてないんです。
子どもの発達も、地域の実態も、各園で違いますから、書くことも変わります。
幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説では、「教育課程」「全体的な計画」にあたるものを、「教育及び保育の内容並びに子育ての支援等に関する全体的な計画」としてあります。
呼び方が長くなるほど、余計にややこしいですよね。
こども園も、「全体的な計画」という名前でいいような気がしますが。
最後に、具体例として、こちらを載せておきます。
お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター 『幼児教育ハンドブック』のリンクです。
平成13年度の例なので、少々古いですが、教育課程を編成する手順として、とても分かりやすいです。
まとめ
小中学校の教育課程<幼稚園の教育課程・全体的な計画<カリキュラム
ということと、
小中学校の教育課程と幼稚園の教育課程は別物
ということを覚えておきましょう。
幼稚園の教育課程や、全体的な計画は、小中学校で言うカリキュラムのようなものです。
幼稚園の教育課程と保育所の全体的な計画は、名前は違いますが、こちらの方が似ています。
教育課程の編成は、園長の責任のもと、全員で取り組むものです。
難しいかもしれませんが、少しずつ頑張ってみましょう。
続けて、【本当はみんな知っている】幼稚園・保育所のカリキュラム・マネジメントとはもご覧ください。
教育課程、全体的な計画は、毎年のように見直すものです。
発達の節目などは、子どもの姿を忘れないうちに、年度の途中にも少しずつ見直した方が、より正確ですよ。
教育課程・全体的な計画の「期」とは【ちゃんとした意味を知っていますか?】
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。
保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。