【保育だけ特別!】「資質・能力の3つの柱」でみんなが誤解してしまうこと




幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領が改訂されました。

そこで、よく聞くようになった言葉が「3つの柱」です。

でも、「3つの柱」という言葉については、誤解をしている人もいるのではないかと思います。

幼稚園教育要領や保育所保育指針、解説には、「3つの柱」という言葉は出てきません。

出てくるのは「育みたい資質・能力」という言葉です。

ついでに言うと、小中学校の学習指導要領にも「3つの柱」という言葉はありません。

次のような、文部科学省の資料には「3つの柱」という言葉が出てきます。

幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント  (PDF:245KB)

こんなちょっとしたことから、とても大事なことまで、誤解をしている人もいるかもしれません。

「育みたい資質・能力」について、本当に大事なことはなんなのか、考えてみましょう。

少し難しいかもしれないので、すごく簡単に知りたい人は、先に「3つの柱」「5つの領域」「10の姿」と「ねらい」との関係をご覧ください。

「資質・能力の3つの柱」を理解する上で大事なこと

「資質・能力の3つの柱」を理解する上で大事なことは、次の3つです。

・「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」を意識し過ぎないこと

・幼稚園教育要領や保育所保育指針で「育みたい資質・能力」について定義してある前半の言葉を意識すること

・これまでの保育と基本的には変わらないこと

「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」を意識し過ぎないこと

文部科学省の「幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント」には次の文が載っています。

①知識及び技能、②思考力、判断力、表現力等、③学びに向かう力、人間性等の三つの柱で再整理。

出典:幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント  (PDF:245KB)

幼児教育と小学校以降の学校教育を貫く3つの柱として、この表現が使われています。

小・中学校の学習指導要領にも

「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つが載っています。

幼稚園教育要領や保育所保育指針に載っている言葉は少し違いますよね。

「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」「学びに向かう力、人間性等」

この3つです。

「学びに向かう力、人間性等」は、小・中学校と一緒です。

「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」は、小・中学校と違う表現です。

どこが違うかは、すぐに分かりますよね。

「の基礎」の部分です。

これが一番大事なんです。

「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」と聞いたときに、

「基礎」の方よりも「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」に意識が向いていませんか?

「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」に意識が向きすぎると、「基礎」の部分に目が行かなくなります。

そうすると、これまでの保育とは異なったものになってしまいます。

じゃあ、どうすれば、「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」が思い浮かぶのでしょうか。

幼稚園教育要領や保育所保育指針で定義してある前半の言葉を意識すること

幼稚園教育要領、保育所保育指針には、次のように載っています。

豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする「知識及び技能の基礎」
気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする「思考力,判断力,表現力等の基礎」
心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力,人間性等」

出典:保育所保育指針

意識するべきは前半部分です。

豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする

気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする

心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする

この部分です。

「知識及び技能の基礎」

豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする

もう少しコンパクトにしてしまうと「体験を通じて何かを得る」ということです。

「何かを得る」の中身が「感じる」「気付く」「分かる」「できるようになる」などです。

他にも「見付ける」「発見する」「納得する」などがあると言えそうです。

「豊かな体験を通じて」なので、「ただ情報を与えられて知る」ことは、この場合当てはまらないでしょう。

「思考力、判断力、表現力等の基礎」

気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする

もう少しコンパクトにしてしまうと「体験で得たことを基に、次の行動をする」ということです。

「体験で得たことを活かして、次の行動をする」と言うこともできるでしょう。

消極的に見えても、「考えた結果、やめておく」という選択や、「言葉を選んで発言する」ということもあります。

見た目にとらわれないようにしましょう。

「学びに向かう力、人間性等」

心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする

大事なのは、もちろん「心情、意欲、態度」の部分です。

「資質・能力」について話し合いをされている段階では、小学校以上が3つの柱を横並びにして表していました。

でも、幼児教育では、「学びに向かう力、人間性等」を、基礎や土台のようにして、丸が重なったベン図で表していました。

3番目に書いてあるからといって、「心情、意欲、態度」が3番目に大事だということではありません。

3つの資質・能力は、別々にではなく、一体となって育っていくからです。

これまでの保育と基本的には変わらないこと

「資質・能力」という言葉が出てきても、これまでの保育と基本的には変わりません。

これが一番大事なことです。

「基本的には変わらない」ってことは、少しだけ変わります。

保育を振り返るときや事例を書くとき、小学校との接続を考えるときに、「資質・能力」の視点で話をすることがあります。

普段の保育ですることは変わりません。

というか、変えてはいけません。

幼稚園教育要領や保育所保育指針は改定されました。

でも、今回の改定の前から、資質・能力の話はあったんです。

改定前の教育要領や保育指針も、はっきり言葉に表してないだけで、資質・能力の考えを入れて書かれています。

だから、「資質・能力とか言われたら、ねらいはどうするの?」などと考えなくて良いです。

これまで通りです。

今回の改定までには、次のような話がされています。

○ 幼児教育においては、幼児期の特性から、この時期に育みたい資質・能力は、小学校以降のような、いわゆる教科指導で育むのではなく、幼児の自発的な活動である遊びや生活の中で、感性を働かせてよさや美しさを感じ取ったり、不思議さに気付いたり、できるようになったことなどを使いながら、試したり、いろいろな方法を工夫したりすることなどを通じて育むことが重要である。

出典:次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ

「小学校以降のような、いわゆる教科指導で育むのではなく」って、わざわざ書いてあります。

「幼児の自発的な活動である遊びや生活の中で」育むんです。

この文章に続いて、3つの資質・能力が書いてあって、さらに次の文章が続きます。

○ これらの資質・能力は、現行の幼稚園教育要領等の5領域の枠組みにおいても育んでいくことが可能であると考えられることから、幼稚園教育要領等の5領域は引き続き、維持することとする。なお、幼児教育の特質から、幼児教育において育みたい資質・能力は、個別に取り出して身に付けさせるものではなく、遊びを通しての総合的な指導を行う中で、「知識・技能の基礎」、「思考力・判断力・表現力等の基礎」、「学びに向かう力・人間性等」を一体的に育んでいくことが重要である。

出典:次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ

ここでも、「個別に取り出して身に付けさせるものではなく」って、わざわざ書いてあります。

遊びを通しての総合的な指導を行う中で

一体的に育んでいくことが重要である

ということです。

資質・能力を育む事例

3つの資質・能力は、遊びを通しての総合的な指導を行う中で一体的に育んでいくことが重要です。

じゃあどうすれば良いかというと、今までと保育を変える必要はありません。

一体的に育んでいくというか、もともと一体的で、分けることはできないと思います。

具体例を知りたい人はこちらを見てください。

幼児期の非認知的な能力の発達をとらえる研究

文部科学省に委託されて、お茶の水女子大学附属幼稚園が、全国の附属幼稚園の事例をまとめたものです。

1つの事例が2ページほどにまとめられていて、環境と援助についても書いてあります。

「認知的な能力」「非認知的な能力」という言葉は、今回の改訂では外されました。

でも、ざっくり言うと、「3つの資質・能力」と似たようなものです。

ある能力を育むために、特別なことをするのではありません。

上のリンクの、それぞれの附属幼稚園でも、事例を書くために特別な取り組みをしたのではありません。

いつものような遊びをしている中で、見られた姿をまとめただけです。

いつものような保育をしていると、「3つの資質・能力」は、育っていきます。

保育を振り返るとき、事例を書くときに、「3つの資質・能力」の視点で見るだけです。

新しい言葉に混乱して、自分の保育を見失わないようにしてくださいね。

教育課程・保育課程を見直すときにも、同じことが言えます。

新しい言葉に混乱して、これまでの見直し方を変えてしまってはいけません。

詳しくは、「3つの柱」「10の姿」を踏まえた教育課程・保育課程の見直し方を読んでください。

要録を書くときにも、無理に「資質・能力」に使ってある言葉を書く必要はありません。

「基礎」の部分を意識して書きましょう。

【超シンプルな視点で書ける】指導要録・保育要録の意味と書き方

さらに、もう一つ、「3つの柱」で大変な問題が起る可能性があります。

詳しくは、【大問題!】「3つの柱」で子どもの評価を求められる可能性と対応法を読んでください。

この記事に書いてあることが難しくて、分からなくなってしまった人は、もう一度「3つの柱」「5領域」「10の姿」と「ねらい」との関係を読んでみましょう。

「保育指導案などの書き方をもっと詳しく教えてよ」という人は、「保育塾ベーシック」についての詳しい内容を読んでみてください。

保育塾ベーシックの紹介

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ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。