あなたはどのような状態を見て「この子は絵が描ける」「この子は描けない」と判断しますか?クラスの子ども達全員の絵が並べてあったら、「うちの子だけ描けてない」とか、「あの子は上手」などと思われることもあるでしょう。そのように言われたら子どもはどう思うでしょうか。今回は、子どもの絵を比べなくてもすむ方法を考えていきます。
子どもが絵を上手に描こうと思ったら
たとえば、母の日の前に「お母さんの顔を描きましょう」ということをすると、描けずに固まる子どもがいます。そのようなときに「うすだいだいのクレヨンで大きな丸を描きましょう」「次は黒いクレヨンで、ここのところに小さく丸を描いたら目になるよ」というように、顔の描き方を教える方法があります。そうすると、顔を描くことができるんですよね。
確かに描くことはできるんですよ。描くことはできるんですけど、そのように言われて描く絵しか描けなくなる可能性があります。まだ線がぎこちなくて、丸の最後が閉じていないような子どもが、眉毛まであるような顔の絵を描いているのを見たことがありますが、「いったいどれだけ練習したんだろう」「絵を描くのが楽しいんだろうか」としか思えませんでした。練習するから絵を描けるようになるのではなくて、発達するから練習などしなくても描けるようになるんですよね。
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また、コンテで色を塗って、それをひたすら指で伸ばしている子どもも見たことがあります。そうすると絵が上手に見えるということを教えてもらったようです。ただ、肝心の絵が描いてなかったんですよ。なによりも、楽しそうな様子ではありませんでした。
絵を比べなくてもすむ方法
子どもは楽しんで絵を描いていれば、発達に伴って上手になっていきます。比べてしまうから、「もうちょっとこう描いてみれば?」と子どもの絵を否定するから、苦手意識が生まれて描きたくなくなっていくんですよね。もし、もっと描きこんでほしいのであれば、話を聞き出してイメージを広げたり記憶を呼び起こしたりすると、描きたくなります。
さて、絵を比べなくてもすむ方法ですが、主に3つのことを考えてみましょう。
- そもそも絵を描かない
- 絵を描くことが苦手な子どもが上手く描けたときに飾る
- 他の子どもと比べなくてもよいことを保護者に伝える
そもそも絵を描かない
まず、自由に遊んでいるときに、好きなように絵を描いていれば自然に上手くなるので、「絵を教えなければならない」と思う必要はありません。「母の日にお母さんの顔を描きましょう」をやめてしまえばすむことですよね。母の日以外も同様です。何かを貼り合わせて花を作っても良いし、園庭に咲いている小さな花を組み合わせて本物の花束を作っても良いし、それを持って帰ることができなければ子どもが花束を持っているところを写真に撮れば良いし、「家でプレゼントするものを何にするかアイディアを出し合う」という活動でも良いし、絵ではない他のものを考えればすむことです。
絵を描くことが苦手な子どもが上手く描けたときに飾る
比べられて困るのであれば、パッと見て差が少ないときに絵を飾るようにしてみましょう。毎回はそうならないので、上手くいったときだけ飾れば良いですよね。冒頭で紹介したような子どもは、自由に描けるようになるまで時間がかかります。年度初めは絵ではないものを展示して、描けるようになってきてから飾りますが、なかなか上手くいかないのではと思います。その子どもが描きやすい、興味をもちやすい題材は何か、自由に描いているときに確認をしておきましょう。
他の子どもと比べなくてもよいことを保護者に伝える
他の子どもと比べなくてもよいことを保護者さんに伝えても、どうしても比べてしまうものです。できることなら、「絵を描く毎に家に持って帰る」をやめてみましょう。もちろん、子どもが持って帰りたがったときには持って帰りますが。他の子どもの描いた絵と比べるから、「この子は絵が描けない」になってしまいます。比べるのは、年度始めに描いた絵と、しばらく経ってから描いた絵です。どのような成長をしているか、絵を見ながら話をして、一緒に成長を喜びましょう。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。