【子どもが絵を描くときも対話をしよう】絵を褒めるのではなく「絵で語る」を大事にしたい話

あなたは、子どもが絵を描いているときに、どのような声をかけていますか?「上手だね」などと褒めているでしょうか。実は、褒められる意味が分からない子どもも、嫌がる子どももいるんですよ。大人だって、なんとなくグシャグシャと描いたペンでの試し描きを「上手に描けてるね」と言われたら意味が分かりませんよね。ではどう声をかけましょうか。

なぜ絵を描くのか

子どもはなぜ絵を描くのでしょうか。「今日は絵の具で遊ぶよ」などと、保育者に言われたから描いているかもしれませんね。特に絵を描いた経験が少ない場合は、「上手に描いてみよう」なんて思いません。そのそも、「上手、下手」とは何かが分かっていません。大概は、絵を描く場が用意され、目の前に画材が出てきたからやってみた。やってみたら、なんか楽しかった。なんか描けた。手にも色がついた。…という感じではないでしょうか。

始めは、用意されてるからなんとなく触るんですよ。目新しい物に触れて、さらに色が出ることも見て、なんか面白くなって続けてみる。ちょっと違うことを試してみる。そうしたら、いつの間にか絵ができていた。…というように、なんとなく描き始め、面白くなったら興味をもって描くことに向かうんです。上手下手ではないんです。

できたものを褒めるとはどういうことか

子どもが絵を描きました。保育者は、その絵を見て「上手に描けたね」と言いました。これって、学校に行くようになってからテストを持って帰ってきたときに「100点すごいね」と言うのと何が違うのでしょう?どちらも、できたもの、できたことを褒めていますよね。子どもが描いた絵を褒めるということは、テストの点を褒めるのと似たようなものなんですよ。

過程を褒めるとはどういうことか

「結果ではなく過程を褒める」とよく言われます。では過程を褒めることにして、子どもが絵を描いている途中で「上手に描いているね」と言ったとしましょう。まだ絵を描いている途中だとしても、その時点での絵のできを褒めているので、これも結果を褒めているのと同じことなんですよね。

では、過程を褒めるとはどういうことなんでしょうか。跳び箱で考えてみると分かりやすいです。「跳べたね。すごいね。」は結果を褒めていますよね。過程というのは、跳べるまでの過程です。ですので、「頑張ってるね」とか、「走り方格好良いよ」とかになりますよね。

子どもが絵を描いている過程を褒めようとするならば、「頑張ってるね」とは言わないですよね。描きたくない絵を我慢して描いているとか、思い通りに描けなくて投げ出したいけど描き続けているとか、そういう部分を褒めたいなら言うかもしれませんが。「丁寧に描いているね」とか、「素敵な色使いだね」という声のかけかたなら、過程を褒めることになりますね。ただ、丁寧に描くよりも、鮮やかな色を使うよりも大事なことはあります。

絵は褒めるものなのか

実は、保育指針解説や、幼稚園教育要領の解説には、絵を描く話はほとんど出てきません。「絵」という言葉が出てくるのは、ほぼ絵本の話なんですよ。そもそも、子どもが描く絵に上手さは求められていないんですよね。他の遊びと同じで、絵は楽しく描くものです。子どもが遊んでいるときに、遊びの出来を褒めることはあまりしませんよね。絵も同じです。絵を褒められることを、明らかに嫌がる子どももいます。

では、どう声をかけるかというと、他の遊びのときと同じです。絵を介して子どもと対話をしていきましょう。

  • 余計な声はかけない
  • 「ぐるぐる」「シューッ」など、オノマトペを声に出す
  • 「どこに描こうかな」「なんか面白くなってきたね」など、子どもが感じているであろうことを言語化する
  • 絵から分かる子どもの気付きを言語化する
    (たとえば、サツマイモを描いている場合、「あ、本当だ、サツマイモはヒゲみたいなのあるね」「よく見てたんだね。確かにそんな色してた」等)
  • 行事の絵など、過去にしたことを絵に描いているのであれば、その時にあったことを話題にする
  • 楽しさを感じて描いていたであろう部分、何かしらのこだわりをもって描いていたであろう部分に言及する

褒めてはいけないということではないですよ。褒める以外にも、絵を描くときに声をかける視点はいろいろあるという話です。ちょっと意識してみると、子どもへの働きかけが変わってきますよ。ぜひ試してみてください。

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保育塾代表
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公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

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ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。