あなたは「カラーバス効果」という言葉を聞いたことがありますか?「人は自分が意識している何かについて、無意識に見たり情報収集したりしてしまう」という効果だそうです。これを保育に当てはめて考えると、ちょっと意識しただけでいろいろと変わっていきますよ。ということを今回はお伝えします。必要なのは、ほんのちょっとした意識です。
日常生活の中のカラーバス効果
ある日曜日、小学生が何人かで集まったときのことです。「帰りはおばあちゃんが迎えに来ます」というお宅がありました。そのおばあちゃんから連絡があって、電話で道案内をしたのですが、「あそこのところにUFOがありますでしょう?」「キンダイの方ですか」「ああ、丸三の」などと、確認のためにパチンコ店の名前を出されて困ったことがあります。私はパチンコ店があるのは覚えていても、名前は分からないんですよね。反対に、そのおばあちゃんには、飲食店や車屋さん、コンビニの名前は全く通じませんでした。
私はパチンコ店に興味が無いため、名前までは覚えてなかったんです。そのおばあちゃんは、パチンコ店には行くけど、道中にある飲食店やコンビニは少しも目に入っていませんでした。人は、自分が意識している何かについて、無意識に見たり情報収集したりしてしまいます。これがカラーバス効果です。
車を買い換えるとき、次に買おうと思っている車が意外とたくさん走っているのに気付くことってありませんか?「あそこのスーパーは卵の特売が水曜日、こっちのスーパーはここら辺で1番安く買えるけどクーポンが必要」ということは分かるけど、1番よく行く店のローズマリーやタイムの値段は分かりませんよね。このように、人は気になるものに自然と目が向くんです。
保育で考えるとどうなるか
「人は気になるものに自然と目が向く」を保育で考えてみます。保育中に気になるものってなんでしょうか。もちろん人によって違います。違いはあるんですけど、次のようなことがあると気になってしまうと思いませんか?
- 担任しているA君のことを上司に「あの子は絶対何かもってる」と言われた
- 保護者さんに「発表会、毎年すごいですよね。楽しみにしてます」と言われた
「あの子は絶対何かもってる」と言われた場合
担任しているA君を見た上司に「あの子は絶対何かもってるよね」と言われたとしたら、「専門家でもないのに、軽々しくそんなことを言わないでください」などと言い返せる人は、極少数ですよね。おそらく、「確かに、そう言われると納得」と感じる人のほうが多いでしょう。そうなると、もうそこばかりが目についてしまいます。「A君はこういう子」という、バイアスがかかってしまうんですよね。思考や判断に偏りができるんです。
上司の言葉は、思っている以上に影響が大きいです。「A君って、目の前に行って話をすると分かりやすいみたいだから、試しにやってみて。もしそれで上手くいかなかったら、また次の方法を考えよう。」と言われた方が助かります。「何かもってるよね」の他に思い付かないのだとしたら、言わない方が得策です。
「発表会、毎年すごいですよね。楽しみにしてます」と言われた場合
これについては、どうなるか分かりやすいのではないでしょうか。「毎年すごい。楽しみにしている。」と言われたら、例年と比べて見劣りするわけにはいきません。「年を追う毎に子どもは発表会に特化して成長する」なんてことはありませんから、「衣装を豪華にして、みっちり練習をするにはどうするか」「嫌がる子にどうやってさせるか」ということばかりに目が向くことになります。
発表会に見栄えを求めると、それが全てになってしまいます。「可愛い格好をしたら子どものやる気がアップする」というくらいなら、援助としてアリなんですけど。もちろん、「子どもが考えて、子どもが作りたくなって、劇よりもファッションショーをしたくなった」ということなら、見栄えを求めると育ちにつながりますよね。子どもの育ち、子どもの思いに意識を向けたいですね。
「どんな育ちにつながるのか」「子どもは何を思っているのか」「子どもは何を学んでいるのか」…これらを意識するだけで、そこに目が向いていきますよ。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
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