幼稚園も保育所もこども園も、跳び箱を取り入れているところって、けっこうありますよね。おそらく、ほとんどの園が取り入れているでしょう。
ところで、あなたは「跳び箱(開脚跳び)を指導するときに1番大事なこと」を知っていますか?
1番大事なことを知って指導すると、安全な上に、10分くらいで跳べるようになるんです。
正直な話、10分くらいで跳べてしまったら、面白くないですけどね。
この記事では、跳び箱(開脚跳び)を指導するときに知っておきたい、1番大事なことを紹介しています。また、1番大事なことにつながる運動や遊びもお伝えします。
あなたの保育に、どれを取り入れることができるか、考えながら読んでみてください。
跳び箱(開脚跳び)の指導で1番大事なこととは
跳び箱(開脚跳び)の指導で1番大事なことは、
子どもが自分の体を腕で支えることができるかどうか
これだけです。
なぜなら、子どもが自分の体を腕で支えることができると
- 安全だから
- ほんの10分ほどで跳ぶことができるようになるから
どういうことか、詳しく説明しますね。
子どもが自分の体を腕で支えることができると安全だから
改めて気にかけてほしいのは、「跳び箱は危険」ということです。
正確に言うと、指導する側に知識が無いまま、子どもに跳び箱をさせることが危険なんです。
跳び箱では、相当数の事故が起こっています。
「跳び箱」は組体操より危険 事故件数「最多」でも安全対策進まず
体育の跳び箱で下半身不随に 校長は謝罪もなく「公表しないで」
これらの多くは、きちんと安全な指導ができてないことから起こった人災です。
20センチもあるマットを使用しているのに、中学生が5段の跳び箱で開脚跳びをしているだけなのに、事故が起こるんです。
小学校でも、体育の時間に開脚跳びをするのは3年生から。
低学年のうちは運動遊びです。
跳び箱を使った運動遊びにおける目指す動き(第1学年、第2学年)
体育の時間には、全員が跳び箱をしますよね。1、2年生のうちは、十分に発達をしていない子どももいるんです。きちんと手をつくことや、自分の体重を支えることができないと、頭から落ちてしまいます。
というわけで、幼稚園・保育所では、やりたい子どもだけが跳べれば十分です。全員が開脚跳びをできる必要は全くありません。というか、十分な発達をしていない状態で跳ばせるのは、不適切な指導です。事故が起きてからでは遅いです。全員に開脚跳びをさせるのは、やめましょう。
跳び箱を安全に跳ぶためには、子どもが自分の体重を手で支えることができる必要があります。
できれば、下の記事を読んでから、もう1度この記事を読み直してください。
【事故数ケタ違い】跳び箱の指導で気をつけるべき10のこと
ほんの10分ほどで跳ぶことができるようになるから
自分の体を手で支えることができるのであれば、跳び箱(開脚跳び)は、10分ほどで跳ぶことができるようになります。
実際の方法は、次のようになります。
体重移動の動き
- 跳び箱をまたいで座る。
- 跳び箱の端に手をつき、両腕で身体を持ち上げて跳び箱の前方に降りる。
注意点
- 最初は、なるべく前の方に座る。
- 腕に体重がかかるように、ゆっくりやる。
- うまく体重移動ができるまで、数回繰り返す。
踏切りの動き
- 足でジャンケンをする
- 「ジャン・ケン・グー」に合わせて、「右足、左足、グー」または「左足、右足、グー」で前に進む
- 実際に踏み切り板を使い「ジャン・ケン・グー」の、「グー」のタイミングで踏み切り板に乗る
注意点
保育者のタイミングではなく、子どものタイミングに合わせて「ジャン・ケン・グー」と言う。
実際に跳ぶ動き
- 保育者は跳び箱の横に立つ。
- 子どもは「ジャン・ケン・グー」の分だけ助走し、跳び箱に手をつく。
- 保育者は左手を子どもの胸に当てて支える。
- 跳びにくいときは、右手でお尻を支えて前に送る。
- 保育者の手にかかる重さが軽くなってきたら、少しずつ子どもの動きに任せる。
注意点
- 3段くらいから始める。低すぎて勢いをつけすぎると、前に落ちるから。
- 最初の、体重移動の動きが身に付いていないと跳べない。
- 手をつくタイミングは「ジャン・ケン・グー・トン」などと言葉で表すと伝わりやすい。
「向山式跳び箱指導法」TOSSランド
向山洋一(むこうやまよういち)さんという、超有名な元小学校教師の方が考案された指導法です。この指導法は、上で紹介した方法とほぼ同じです。ここでも、「腕で体を支えること」の大切さが述べてあります。
「向山式跳び箱指導法」では、踏切りの動きについては触れてありません。
実際に跳ぶときは、「2~3m助走する」と書いてありますが、別の場所には「最初は1,2歩で十分」と書いてあります。
また、支えは「左上腕をつかむ」と書いてあります。しかし、もし子どもが落ちた時に、腕をつかんで支えていると、腕が抜ける可能性があります。幼児の場合は体が小さいので、胸まで手が届きます。子どもの胸に手を当てて支えましょう。
跳び方について、これだけ説明してから言うのもなんですが・・・
「子どもが試行錯誤しながら、跳べるようになるまで自分で頑張る」というようなことが保育には必要です。10分ほどで跳べるようになってしまったら、面白くもなんともないですよね。
また、体操の先生に来てもらって、指導を受けている園もありますよね。その場合、長い期間をかけて跳び箱の指導をされます。子どもが跳び箱で開脚跳びをできるほど発達していないからです。十分に時間をかけて、跳び箱に親しむ必要があるからです。
自分の体重を腕で支えることができるまでの運動や遊び
跳び箱(開脚跳び)をするのには、自分の体重を腕で支えることが必要です。支えることができないと、いくら頑張っても跳ぶことができません。そして、とても危険です。跳び箱を跳ぶ前に、他の運動や遊びを十分に行い、自分の体重を支えることができるようにしましょう。
雑巾がけをする
「自分の体重をどれだけ手にかけるか」ということがコントロールできないと、雑巾がけってできません。どういうことかというと・・・
しゃがんで自分の周りを拭くときは、手に体重がかかってないですよね。両足で跳びながら雑巾をかける動きは、跳び箱を跳ぶときの動きと似ています。歩きながら雑巾がけをする、走りながら雑巾がけをするなど、雑巾がけの方法はいろいろとあります。
雑巾がけでも、腕で体を支えることができないと、顔から床に突っ込みますよ。腕で体を支えることができない子どもがいるのに、「ヨーイドン」のような雑巾がけをするのはやめましょう。
鉄棒をする
鉄棒にも、腕で体を支える動きがあります。一番先に思い浮かぶのは「ツバメ」です。実は、鉄棒でも「自分の体重を腕で支える」って、とても大事なことなんです。支えることができなかったら、小学生になっても苦手なままです。
鉄棒をするときに、肘を伸ばすことが無い子どもは、自分の手で体重を支えることができていないかもしれません。
手で歩く
足を持ってもらって手で歩く「手押し車」が1番最初に思い浮かぶかもしれませんが、手で体重を支えることができない状態では難しいです。
ほふく前進や、「アシカ」になって手で歩くこと、四つんばいになって手と足で歩くこと、カエル、シャクトリムシなど、手を使った、いろんな歩き方をしてみましょう。
木登りをする
手で体を支えることができない状態で高いところまで登るのは危険です。
ですが、少しだけ登るのであれば、ぜひやってほしい遊びです。遊具だと、直線が多く、ある程度の決まった動きしかできません。木登りだと、「つかむ」「引き上げる」「抱える」「支える」など、いろんな動きをする中で、自然と自分の体を扱うことができるようになります。
逆立ちをする
よくあるような、壁や支えてくれる人に向かって勢いをつけてする逆立ちは危険です。ひっくり返るから。
ここでオススメするのは、よく見る方法とは反対向きです。
- 壁に背中を向けて立ち、手を床につきます。
- つま先を壁につけて足を高いところに上げながら、手を少しずつ壁の方に移動させます。
壁を使って逆立ちするなら胸を壁につけて
壁逆立ちの段階的練習
小さい子どもは、むしろこっちの方で逆立ちをしましょう。
まとめ
跳び箱で1番大事なことは、
「子どもが自分の体重を手で支えることができるかどうか」です。
なぜなら、自分の体重を手で支えることができると、安全で、10分ほどで跳ぶことができるようになるから。
反対に言うと、自分の体重を手で支えることができない子どもに跳び箱(開脚跳び)をさせるのは、危険で、いつまで経っても跳ぶことはできません。
子どもに「やりたい」という気持ちがあるのなら、やってもいいですが、少なくとも、全員に跳び箱を跳ばせるということは、危険なのでやめましょう。
小学校では、開脚跳びをするのは3年生からです。ということは、それ以前に全員が開脚跳びをするのは、危険が伴います。
幼稚園・保育所では、鉄棒や手で歩くことなどをしっかりしましょう。そうすると、自分の体を手で支えることができるようになります。
手で体重を支えることができると、開脚跳びは10分ほどで簡単にできます。簡単すぎて面白くないので、方法を知った上で、あなたの保育にどのように取り入れるのか、よく考えてみましょう。
安全のことを考えると、跳び箱では、他にも気をつけるべきことはあります。
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【事故数ケタ違い】跳び箱の指導で気をつけるべき10のこと
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務経験あり。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。