【リレー最大の悩み】折り返しからトラックへの移行をスムーズにする2つのアプローチ

保育でリレーをするときに、一番大変なことの1つが、トラックでのリレーに、どのように移行するかです。 「順番が分からない」「ラインの内側を走る」「いつも同じチームが1位になる」など、 悩みはいくらでも出てきますよね。 この記事では、折り返しのリレーから、トラックのリレーに移行するときに、スムーズに移行をするための2つのアプローチを紹介しています。 あなたが担任している子ども達が、どのような状態なのか、どの方法を取り入れれば上手くいくのかを、考えながら読んでみてください。

折り返しのリレーからトラックのリレーへの移行をスムーズにする2つのアプローチとは

ただリレーを成功させるだけなら簡単です。 走るコースと並び方を教えて、分かるようになるまで何度もやるだけで、できるようになります。 でも、それだと、リレーができたとしても、保育としてはちょっと・・・ですよね。 トラックのリレーにスムーズに移行するためには、2つのアプローチがあります。 1つは子どもの意識を高めること。 もう1つは環境を整えることです。 「何言ってるの?当たり前でしょ。」と思った人も、詳しくお伝えしますので、もう少しお付き合いください。

子どもの意識を高める

子どもの意識を高める必要性

まずは、子どもの意識を高める必要性を説明します。 ドイツの心理学者リンゲルマンが行った、綱引きに参加する人数と、綱を引く力の関係を調べた実験があります。 1人で綱を引いたときに、その人が出すことのできる力を100%とします。 2人で綱を引いたときは、2人とも100%の力を出すでしょうか? 2人で綱を引いたときには、93%だったそうです。 3人だと85%、8人だと49%です。 このように、「メンバーの人数が増えるほど本気を出さない」という現象が起きてしまうんです。 「いや、綱引きじゃなくって、リレーでしょ。」と思うかもしれませんが、リレーでも同じことです。 リレーでは、自分1人の力ではなく、チームみんなの力で順位が決まります。 しかも、「全員リレー」なんて種目もあるくらい、人数が多くなるときがあります。 だから、どうしても本気を出せなくなってしまいます。 しかも、折り返しのリレーも、トラックのリレーも、走っている途中は、子どもには順位が分かりにくいです。 「ルールは分からない」「順位も分からない」「自分がどれだけ貢献しているかも分からない」という状態で、子どもがトラックを走って上手くいくでしょうか? 心理的に、本気を出さなくなって上手くいかないのであれば、反対に、みんなの意識が高いと、全く状況は変わることになります。

意識が高まるとこうなる

  • 意識が高まると、子ども達が、自らリレーをしたくなります。
  • 好きな遊びをするときにも、自分達でリレーの特訓をします。
  • 順番が分からない子どもや、ラインの内側を走る子どもには、子ども同士で教えるようになります。
  • チームで話し合って作戦を立てて、走る順番を変えたり速く走る方法を調べたりします。

意識を高めるには

  • いろいろなリレーを楽しんでから、トラックでのリレーに移行する
コーンを回る、障害物を置く、スプーン競争のようにする、ボールを使うなど、いろいろなリレーを楽しみましょう。年長にもなれば、そのうち、「丸いところを走りたい。」などと、自分たちから言ってきます。自分たちがやりたくなって始めると、説明されたらすぐに理解できますよ。
  • 小学校や中学校などの運動会を見る
トラックでのリレーを見たことがあっても、なんとなく見るのと、やりたくなってから見るのとでは、理解度が全く変わります。もし、可能であれば、小学校や中学校の運動会で、トラックを走っているところを見てみましょう。
  • バトンをまっすぐのものにする
保育で「バトン」と言えば、丸いものです。持ちやすいし、安全だからです。でも、子ども達にとって、本物はまっすぐのバトンです。押せば折れ曲がるくらいの、柔らかい素材でできたバトンもあるので、試してみてはいかがでしょうか。素材が違うからか、普通のプラスチックでできたバトンよりも滑りにくいですよ。
  • 少人数のチームでリレーをする
リンゲルマンの綱引きの実験のように、人数が増えるほど、人は本気を出さなくなります。少人数だと、それぞれの子どもが本気になりやすいです。また、人数が少ないと、周りが見えやすく、待つ時間も少なくなるので、リレーのルールを理解しやすくなります。2人、3人、4人と、少しずつ人数を増やしてリレーしてみましょう。
  • 実況する
「今、赤チームが2位になりました。青チームは3位です。緑チームは4位だけど、すごい勢いで追いかけています!!」などと、実況してみましょう。状況が分からないと集中することができません。リレーをしている最中に、どのような状況か分かっていると、意識が変わってきます。 実況するのは順位だけではありません。「〇〇ちゃんは、線の外側を走っています。」「黄色チームは、待っている人が上手に並んでいます。」など、ルールが自然に分かるように実況しましょう。運動会じゃなくても、マイクを使ったほうが聞こえやすいです。
  • 意識を向けることができるように声をかける
たとえば、次に走る子どもの名前を呼びながら、バトンを渡していた子どもがいたら、みんなの前で「なんで名前を呼んで渡してたの?」と聞きましょう。なんとなく名前を呼んでいたとしても、ちょっと考えて、「そのほうが分かりやすいと思ったから。」などと言うはずです。このような話をすると、バトンパスに対する子ども達の意識が変わります。並び方や待ち方なども同様です。
  • 作戦会議を開く
チーム毎に、作戦会議をしてみましょう。速くなるために効果的ではなかったとしても、子ども達の意識は大きく変わります。作戦会議を開いたら、できればすぐにリレーをしてみましょう。順位が全く変わらなかったとしても、「さっきは差がこんなに開いていたのに、今度はこのくらいしか差がなかったよ。」などと、次への期待がもてるように声をかけましょう。
  • 子ども達が走る順番やチームを決める
自分達で決めると、ものすごく意識が高まります。「何度走っても、青チームばかり1位になる」というような状況であれば、チーム自体を変えたくなるはずです。ただし、運動会の直前になってから変えられても、困りますよね。「何日までだったら変えても良い」ということを、前もって決めておきましょう。リレーの順位は、実際に足が速いかどうかだけではなくて、気持ちの問題も大きいですよね。メンバーに相当な偏りがない限りは、ある程度、順位の変動はあるはずです。
  • 本番と同じような状況にする
ハチマキ、ゼッケン、アンカーたすきやビブス(数字の入ったベスト状のもの)など、本番で使うものがあれば、本番前にも使ってみましょう。慣れることにもなりますし、意識が変わります。実況でマイクを使うのも、本番と同じようにするという意味があります。

環境を整える

トラックでのリレーをスムーズに上手くいくようにするには、環境を整えることが必要です。 何度も走って、説明を受けての繰り返しだと、子ども達は疲れてしまいます。 楽しく走って、自然にルールが身に付くと、他のことをする時間もできますよね。

トラックを走る感覚を身に付けるために

  • 徐々にトラックの形に近づける
折り返しのリレーとトラックとでは、走るコースが全く違います。まずは、コーンを1つ置いて、普通の折り返しリレー。次はコーンをもう1つ増やして、2つのコーンにタッチして帰ってくる。さらにコーンを増やす。コーンにヒモを張って、コーンの周りを走るようにする。というように、走るコースを徐々にトラックの形に近づけてみましょう。
  • コースを見やすくする
ラインを太くしたりカラーのラインを使ったりして、コースを見やすくしてみましょう。また、線の内側に入りやすい場所に、コーンやマーカーを置いたり保育士が座って促したりしてみましょう。ホワイトのラインは、保育教材ではなくて、ホームセンターなどで買うと安いです。保育教材のものは、小分けになっているだけで、内容物は同じです。安いものを買って、その分しっかり使って、見えやすいように線を引きましょう。

順番を分かりやすくするために

  • 番号が書いてあるものを身に付ける
ハチマキ、ビブスなど、番号が書いてあるものを身に付けましょう。並ぶときも分かりやすくなります。どちらかというと、大人に分かりやすくて便利です。
  • 誰と一緒に走るかを確認する
走る前に、誰と一緒に走るかを確認してみましょう。「チームのみんなが順番に並んだら座る」ということは、よくすると思います。それと同じようなことを、横のラインでしてみます。全チームの第1走者が手をつないで、そろったら座る。次は第2走者が手をつないで、そろったら座る。次は第3走者、次は第4走者・・・ということを試してみてはいかがでしょうか。
  • 誰からバトンをもらって、誰に渡すかを確認する
並んだときに限りませんが、誰からバトンをもらうのか、誰に渡すのかを確認しましょう。全然覚えてなくて、なんとなくリレーをしている子どもが案外います。
  • 次の次の走者は立って待つ
座って並んだ状態から、バトンを受けるところまで移動すると、間に合わない場合があります。そのときは、バトンを受け取る子どもの、さらに次に走る子ども達は、立って待つという方法があります。第1走者が走っているときに、第2走者はバトンを受け取る所に並んでいます。第3走者が待機場所で立って待ちます。第4走者以降は、座って待ちます。こうすると、待機場所ですでに立っているので、バトンをもらう場所に移動しやすいです。
  • 走り終わった子どもは別の場所に並ぶ
走り終わった子どもが列の後ろに戻ると、ゴチャゴチャして分かりにくくなります。走り終わった子どもは、最初に並んでいた場所とは別の場所に並んでみましょう。でも、「違う場所に並ぶということがややこしい」と感じる人もいます。いろいろ試して、合うやり方を見つけましょう。
  • 並ぶ場所に印をつける
並ぶ場所にはコーンやラインなどで印をつけておきましょう。特に、支援が必要な子どもは、運動会のときは環境が変わるため、いつものように行動できないかもしれません。バスの形など、興味をもてるものにしても良いですね。

まとめ

折り返しのリレーからトラックのリレーに、スムーズに移行するためには、2つのアプローチがあります。 1つは、子ども達の意識が高まるようにすること。 意識が高まれば、子ども達は自分から積極的にリレーに取り組むようになり、余計な説明などをする必要はなくなります。 意識が高まるようにするために、次のことを紹介しました。
  • いろいろなリレーを楽しんでから、トラックでのリレーに移行する
  • 小学校や中学校などの運動会を見る
  • バトンをまっすぐのものにする
  • 少人数のチームでリレーをする
  • 実況する
  • 意識を向けることができるように声をかける
  • 作戦会議を開く
  • 子ども達が走る順番やチームを決める
  • 本番と同じような状況にする
もう1つは、環境を整えることです。 楽しんでリレーをしているうちに、ルールなどが自然と身に付くように、次のことを紹介しました。
  • 徐々にトラックの形に近づける
  • コースを見やすくする
  • 番号が書いてあるものを身に付ける
  • 誰と一緒に走るかを確認する
  • 誰からバトンをもらって、誰に渡すかを確認する
  • 次の次の走者は立って待つ
  • 走り終わった子どもは別の場所に並ぶ
  • 並ぶ場所に印をつける
いかがでしたでしょうか。 ねらいや内容に合わせて、取り組みやすいものから試してみてくださいね。 関連記事はこちら リレー・かけっこで考える「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 「もっといろいろと知りたい」という方は、 ホームページや、このサイトの記事が一覧になったサイトマップをご覧ください。
管理人うち@uchi70794834|Twitter) Follow @uchi70794834 保育塾代表 2人の娘の父親 公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。 ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。 保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。 ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・ そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。

ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。