保育要録・指導要録を書いているみなさん、どのように書くか指導しているみなさん、まずは、お疲れ様です。
想像したことは無いかもしれませんが、みなさんが苦労しているのと同じように、小中学校の先生達も、要録を書くのに苦労をしています。
ですが、学校現場の状況は、この数年で大きく変わっています。2020年に小学校、2021年に中学校の新しい学習指導要領が全面実施されることに伴って、さらに変わっていくでしょう。幼稚園・保育所・こども園は、現状、大きく取り残されています。
この記事では、小中学校における指導要録等の状況に触れ、保育現場が変わっていける可能性を探っています。専門的な言葉はなるべく使わないようにするので、気楽に読んでみてくださいね。読んだ後は気楽になれないかもしれませんが。
小中学校も要録は手書きが普通だった
小中学校も、以前は要録を手書きで記入するのは普通のことでした。ですが、「手書きは大変だ」「そんな時間があるなら授業の準備にあてたい」という声は当然ありました。「手書きの方が温かみを感じる」という意見があがるのも、保育の現場と同じです。
そんな状況が大きく変わったのは平成24年頃から。
平成24年、大阪市が公立小中学校の校長、教頭を除く全教員、約12,000人に翌年から業務用パソコンを配備することを決めました。校務用パソコンの配備率が、全国平均の99.2%を大きく下回る37%だったからです。
これに関して、次のような記事があります。
大阪市教委は数字の理由について、「学校の耐震化やエアコン設置など、優先課題が多く財源確保が困難だった」ことに加え、「現場の教員の“子供の大事な記録は手書きで心を込めて書きたい”という声に配慮してきたため」と説明する。
出典:大阪市教員パソコン配備率37%“心を込めて手書きしたい”NEWSポストセブン
さらに、記事はこのように続きます。
大事な記録とは、児童・生徒の「卒業証書授与台帳」や、成績や出欠を記録する「指導要録」を指す。市教委は、これらの文書は手書きを原則としてきた経緯がある。これを橋下市長が「無駄な労力だ」とバッサリと切り捨てた。
出典:大阪市教員パソコン配備率37%“心を込めて手書きしたい”NEWSポストセブン
「卒業証書授与台帳」や「指導要録」は、基本的にしまい込まれて誰の目にも触れません。そこに「温かみ」を本気で求めているのかは分かりませんが、平成24年頃までは、大阪市の小中学校も、多くの保育現場と同じことをしていたんです。
ここであなたの園のパソコン配備率を計算してみましょう。もし職員が40人いて、パソコンが3台だったとしたら、3÷40=0.075で7.5%です。小中学校だとニュースになってしまう37%の、さらに5分の1です。
平成24年から、すでに7年経っていますが、この間、保育現場のパソコン状況はどのくらい変わったでしょうか?完全に取り残されていますよね。
小中学校のICTは一気に変わっている
先生達の仕事はこう変わっている
大阪市教育委員会は、平成25年3月からクラウドシステムを31校で試験導入、平成26年度に全校稼働しています。
- 会議の開催回数を減らす、会議時間の短縮
- 日々の情報発信
- 効率化された時間を授業の準備や子供と触れ合う時間に充てる
といった成果につながっているようです。
また、北海道教育庁の例では、
「全道の校務標準化により、さらに負担軽減(異動時も新たなシステムを覚える必要なし)」
という利点も挙げられています。
※大阪市では年間224時間以上(クラス担任の場合)、北海道で年間約117時間の勤務時間減効果を実現。
出典:学習評価に関する資料 (平成30年10月1日 教育課程部会 資料1-3)
リンクを開いて資料を読むのが面倒な人のために、簡単に説明しますね。
「都道府県単位で、学校の校務を支援するシステムを導入しましょう。そのために、補助をしますよ」
っていう話があるんです。大阪市と北海道の例は、「導入すると、こんな成果がありましたよ。」ということで紹介してあります。リンクの資料を開くと最後の方に書いてあります。
保育所や幼稚園には、こんな話は出てこないですよね。
子ども達の環境はこう変わっている
ICT化が進んでいるのは、先生達の仕事だけではありません。子ども達の環境も大きく変わっています。目標がまず保育現場の現状とはかけ離れています。
- 学習者用コンピュータを3クラスに1クラス分程度整備
- 普通教室における無線LANの100%整備
- 超高速インターネットの100%整備
- 教師のICT活用指導力の改善
保育の現場では、1台のパソコンを何人もの先生達が順番待ちしているのに、学校では、子供用のパソコンが生徒・児童数の3分の1整備されるってことです。あと、電子黒板も1クラス1台が目標です。
多くの都道府県で目標に届いてないから、平成30年7月に通知も出されました。
第3期教育振興基本計画を踏まえた,新学習指導要領実施に向けての学校のICT環境整備の推進について(通知)
指導要録はどうなっていくのか
小中学校の指導要録は、実際どのような状況で、この先どうなっていくのでしょうか。
<指導要録をめぐる現場教師の声>
出典:小中学校の実態を踏まえた 指導要録等のあり方の提案(平成30年6月19日 教育課程部会 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ資料4)
●情報公開請求をうけると開示するので、無難なこと、 差しさわりのないことしか書けません。
●校長からは何度も書き直しを指示され、疲れます。
●いまだ・・・手書きです。(一部の例ですが)
●前の学年や前の学校(中学校であれば小学校)の指導要録は ほとんど見ません。偏見なく自分で子供をみたほうがよいし、 早いときもあるからです。
●まだ何かに活用されるなら、やる気になるんですけど・・・ 。
「いまだ・・・手書きです。(一部の例ですが)」という表現をしたくなるようです。ということは、手書きではない所が多数ですよね。
さらに、上のリンクで紹介した資料では、指導要録を簡素化する提案もされています。
2020年に小学校、2021年に中学校の新しい学習指導要領が全面実施されるまでに、議論は進み、指導要録のあり方も変わっていくでしょう。
保育所・幼稚園・こども園の現状
「学校のICT環境整備は自治体の喫緊の課題」と言われていますが、そこに幼稚園や保育所、こども園は入っていません。
保育所の保育指針、幼稚園の教育要領、こども園の教育・保育要領は、平成29年3月に改訂され、30年度から全面実施となりました。
小中学校の指導要領も、同じ平成29年3月に改訂されてるんです。でも全面実施は小学校が32年度、中学校が33年度です。(高校は30年改訂の34年度から実施)
小学校は2年、中学校は3年の移行期間があるんです。
その間に、いろいろと準備ができます。要録のあり方も検討されていきます。
一方で、保育の現場は、平成30年度も終わろうとしているのに(この記事を書いているのは2月11日)、実際に要録を書いている人もいるのに、まだ「10の姿って何?」「書き方分からないんだけど」と思っている人が、たくさんいますよね。
保育の現場は、準備が十分にできないまま、平成30年度になってしまったと思いませんか?
上で紹介した、「指導要録等のあり方の提案」みたいなことが、保育に対してはどれだけ行われたのでしょうか?市区町村で、要録の様式がどれだけの時間をかけて検討されたのでしょうか?
保育所・幼稚園・こども園にできること
今からでもできることはあります。
- 保育現場の働き方も変えられることを知りましょう。
- 知った人は、周りの人に知らせましょう。
- 小学校が移行期間のうちに、行動を起こしましょう。
保育現場の働き方も変えられることを知りましょう
大阪市では、校務をICT化すると、クラス担任の場合、1日あたり1時間の労働時間削減になりました。
保育現場の働き方だって変えることはできます。毎日30分でも労働時間が減ったら、いろんなことができますよね。睡眠時間が30分増えたら、それだけでも仕事の効率が上がって、さらに労働時間の短縮になります。
このことに関して、詳しくはこのサイトのお得な使い方を読んでみてください。このサイトの記事を読んで、少しずつ働き方を変えていきましょう。
今回の場合は、特に、要録をパソコンで作成することと、保育現場のICT化について考えてみましょう。興味のある人は、
指導要録・保育要録をパソコンで「無料」かつ「安全」に作成する方法 を読んでみてください。
知った人は周りの人に知らせましょう
「保育の仕事が大変だ」と思っていても、それを「仕方がない」と受け入れてしまっている人が多いのではないでしょうか。まずは、働き方を変えることができると知りましょう。次は、周りの人にも知らせましょう。とりあえず、この記事で知ったことを知らせましょう。それが状況を変える第一歩です。
小学校が移行期間のうちに行動を起こしましょう
小学校が新指導要領の移行期間のうちに行動を起こしましょう。小学校の移行期間が終わるようになってからではなく、できるだけ早くです。
小学校の移行期間が終わり、新指導要領が全面実施されるようになってから声をあげても、「今さら何言ってるの?」ということになってしまいます。
今ならまだ、「保育の場合は、移行期間も無いまま全面実施されたため、改善の余地があると分かった」と訴えることができます。
申告しないと戻ってこない還付金と同じことです。誰もが何も言わなければ、何も問題がないと受け取られます。
まとめ
「自分には何にもできない」なんてことはありません。この記事で知ったことを周りの人に知らせましょう。今すぐできるのは、この文の少し下にあるボタンを押してシェアすることです。広まっていくと、そのうち誰かが声をあげてくれます。とにかく何か行動を起こしましょう。
この記事に対する質問やご意見があれば、お問い合わせから連絡くださいね。