「合奏を教えるのが苦手」
「保育でここまでやることないのに」
「求められるレベルが高くて、どんな教え方をすればいいのか分からない」
なんて思っている人・・・いますよね。
管理人UCHIは、子どもから大人まで、いろんな年齢層に20年ほど音楽を教えていますが、幼児に上手な演奏を求めようと思ったことはありません。
ですが、
あっという間に上手になる方法、何度やっても楽しくできる方法は知っています。
この記事では、「どうしても子ども達に上手な演奏をしてもらわないといけない」という人のために、子ども達が楽しく合奏をし続けられる方法をお伝えします。
保育での「楽しい」合奏の教え方3つのポイントとは
子ども達が「楽しい」「またやりたい」と思えるような教え方をするために、次の3つのことを実践してみましょう。
- 子どもが食いつく言葉の厳選
- リズム遊びはしっかりと
- 何度でもしたくなる反復練習
それでは、1つずつ、詳しく説明しますね。
子どもが食いつく言葉の厳選
まずは、次の楽譜を見てください。
このリズムを子どもに教えるとしたら、あなたはどのように教えますか?
うちの子ども(年長児)に教えてみたら、30秒程でできました。そして、忘れることはないでしょう。もちろん、これまで音符の長さについて教えたことは1度もありません。保育所などでも習ったことはありません。
「言葉の厳選」って言っているので、何となく分かりますよね。
音符に言葉を当てはめて覚えるんです。
「タンタン」や「タタタタ」ではないですよ。
音楽教室では音符の長さを動物の鳴き声で「ワンワン」「チチチチ」などと教えているところもあるようです。大きな動物ほど長い音符で、小さい動物は短い音符で・・・とやると、ある程度のイメージはできますが、正確にはできません。
基本の当てはめ方
たとえば、こんな音符には、どんな言葉を当てはめたらいいでしょう?
この楽譜には5つの音があります(真ん中の2つはタイでつながっているため、合わせて1つと数えています)。
「オムライス」だと5文字ですね。
だけど、音符の長さに合わせて言ってみると「オームラーイス-」になります。
子どもが好きなものを選ぶと取り組みやすいですが、実際に話す言葉と違う長さだと丸暗記になるので覚えづらいです。
「オムライス」は次のようなリズムのときに言いましょう。
もう一回、先程のリズムを確認してみます。
一般的には、4分音符を「タン」、8分音符を「タ」で表すことが多いですよね。この楽譜を「タン」と「タ」で表すと、「タンタタンタタン」になります。音は5つですが、文字は8文字になりました。
音符の数と文字の数を合わせてしまうと、リズムを無視することになります。
「タンタタンタタン」なのに「オームラーイス」って当てはめてしまうんです。
実際に声に出して、リズムを取りやすい言葉を探しましょう。
たとえば、「みんないっしょに」。
「ん」の部分と、小さい「っ」、小さい「ょ」の部分は音を出しません。四分音符の「タン」の「ン」の部分は音を出さないのと同じことです。声に出して確認してみてください。
たとえば、「どうぞタンバリン」。
これも声に出して言ってみましょう。「どうぞ」の「う」は、はっきりと「う」とは言いませんよね。「ど」「う」を8分音符2つに当てはめるよりも、「どう」で4分音符1つに当てはめる方が自然です。
「みんないっしょに」とか「どうぞタンバリン」という言葉を当てはめると、次は誰が演奏するかのスタートの合図にできます。子ども達が、次のパートの子ども達へ気持ちを向けることにもなりますよ。
上手く言葉が見付からないときは
ぴったりの言葉が見付からないときは、リズムの方を変えてしまいましょう。
楽譜に子どもを合わせると大変。
子どもに楽譜を合わせましょう。
子どもが考えた言葉でリズムをつくると、子ども達は忘れませんよ。
ゲーム要素のある当てはめ方
この記事の最初の方で「このリズムを子どもに教えるとしたら、あなたはどのように教えますか?」って聞きました。
思い付きましたか?
うちの子ども(年長児)が30秒程でできたときは、
「おしりおしり」って言いながら、「お」のところだけ音を出してみて
と伝えました。
ポイントは、「ちゃんと声に出しながらやること」です。
頭の中で「おしりおしりおしり」って言いながらだと、子どもはできません。
先程のリズムは、楽譜で見ると難しそうに見えますが、子ども達にはとてもなじみのあるリズムです。「おしり探偵」を見たことある子どもなら、一発で覚えます。
ゲームをして覚えると、こんなアクセントのつけ方もできます。
しかも、何回繰り返したか分かる言葉の当てはめ方があります。
もちろん、楽譜は見せませんよ。
楽譜を見ると難しいですから。
知りたい人はお問い合わせからご連絡ください。
交互に演奏するとき
交互に演奏するときは、当てはめる言葉もちゃんと応答するものにしましょう。
この楽譜だと、2~3分もあればできるようになります。
当てはめる言葉は
「パンケーキ食べたい」
「おひとつどうぞ」
「パンケーキ食べたい」
「おかわりどうぞ」
「パンケーキ食べたい」
「まだまだどうぞ」
「パンケーキ食べたい」
「もうないよ」
返事の方の言葉を変えていくと、何回繰り返したか分かりやすいです。
振り付きでやったら、もう忘れません。「おひとつどうぞ」のパートの人も、同じ振りでどうぞ。「来年は使えない」と思う人は、次に流行るネタのリズムを使いましょう。
リズム遊びはしっかりと
合奏を教えるのに苦労している人は、子ども達がどれくらいの発達をしているのか、把握していますか?
口に出す言葉と同じタイミングで手を叩けないうちは、合奏をしても合わせることはできません。
たとえば、「つみき」と言いながら手を「タタタ」と叩きます。
「カレーライス」なら、「タタータタタ」と手を叩きます。
「クラリネット」なら、「タタタタッタ」と叩きます。
言葉を言いながら手を叩いてくださいね。
これは、言葉の獲得にも関係してくることなので、やったことがない人は、ぜひ試してみてください。
できない子どもがいるとしたら、
「合奏とは、みんなで楽しく楽器を鳴らすこと」という意識に変えましょう。
子どもの発達を無視して、高い要求をしてはいけません。
具体的には、次のような遊びをしっかりしましょう。
手遊び、遊び歌、わらべ歌
「おおきくなったらなんになる」の手遊びは、「4分音符を3つ叩き、4拍目は休む」を繰り返しますよね。しかも、歌いながら手は違うリズムを叩いています。けっこう高度なことをやってるんですよ。
「キャベツのなかから」や「おべんとうばこの歌」は、アウフタクト(弱起)で歌が始まります。その感覚が身に付いてない人や、テンポ感がおかしい人が子どもの前でやると、ガタガタになってます。
「なべなべそこぬけ」はリズムに合わせて手を揺らします。「ひらいたひらいた」は、曲に合わせて横や前後に歩きます。みんなで手をつないでいるので、隣の人とタイミングを合わせないとできません。これも合奏につながっています。
リトミック
ダルクローズは、そのために楽器の演奏訓練を早期から闇雲にやらせるのではなく、音を聞き、それを感じ、理解し、その上で楽器に触ってみる、音を組み合わせて音楽を作ることの楽しさを身体全体で味わわせ、その喜びの中で、音を出し、奏で、そこから旋律を作っていくことへの興味と音感を育んでいこうとした。
出典:ウィキペディア「リトミック」
ウィキペディアでは書きかけの項目なので補足をすると・・・
リトミックは、元々は幼児向けではなくて、音楽家を育てるための教育法です。音楽家を育てるときにすら、「楽器の演奏訓練を早期から闇雲にやらせるのではなく」なんですよ。
合奏が訓練になってしまわないよう、楽しく教え方を工夫しましょう。
かといって、リトミックを本格的にやらなければならないかというと、そうでもありません。
「イス取りゲーム」は「音楽が止まるとイスを取る」ということも楽しいですが、小さいうちは「音楽に合わせて歩く」だけでも楽しいです。いろんな曲を聴いて、それに合わせて感じたように動くのは、リトミックと通じるところがあります。
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リズムのまねっこ遊び
保育者が叩いたリズムを、まねして同じように叩きます。
ちょっとした空き時間や、集中したいときの手遊びの代わりなど、いつでもできる遊びです。
慣れてくると、子どもがリズムを考えて、みんなの前で保育者の代わりをすることもできます。
やりようによっては、10分~15分くらい楽しめるようになりますよ。
導入での使い方は、次の項で説明します。
何度でもしたくなる反復練習
合奏をするとき「ここが出来てないからもう1回」「こうした方がもっと素敵だよ」という、「できないことを直す」やり方をしていませんか?
ハッキリ言って、それだと楽しくなるはずがありません。
楽しい反復練習(本音を言うと、「反復練習」という言葉は嫌いですが)のためには、「褒めること」と「導入」「できない部分を追求しないこと」が必要です。
とにかく褒める
以前、アメリカの小学校で、吹奏楽の授業を見学した後に、演奏の録音を聞かせてもらったことがあります。正直、「これ本番の演奏なの?」と思ってしまいましたが、演奏が終わるとものすごい拍手と指笛が聞こえてきました。
「国民性」と言ってしまえば、それまでですが、「こうやって自己肯定感たっぷりの、ポジティブな大人になっていくんだな」と感じた出来事でした。日本人は高みを目指しすぎている気がします。
というわけで、「できない」を見るのではなくて、とにかく褒めましょう。
「できない」ということを褒めるのではないですよ。そのままにしておくのでもありません。
褒めるコツは、次の2つです。
- 「できない」は気にせずに他のことを褒める
- 少しでも変わったときに見逃さず、きちんと褒める
たとえば・・・
「◯◯君の音だけ大きすぎ」と思っても、それには触れず、
「☆☆ちゃん、優しく叩いてて、いい雰囲気だね。」と、他の子どものいいところを褒めます。
「みんな聞いてた?」「もう一回聴かせて。」と言うと、
「◯◯君ができなくてもう1回やらされる」ではなくて、「☆☆ちゃんの素敵な演奏をもう一回聴ける」になります。
すると、◯◯君は☆☆ちゃんの叩き方をまねしようとします。
たとえ、まねしようとしてなくても褒めればいいんです。
2回目の演奏で、全く変わってなかったとしても、「◯◯君、☆☆ちゃんみたいに優しく叩いてたんじゃない?」と言ってしまえばいいんです。
優しく音を出すつもりは全然なかったとしても、褒められると、◯◯君もその気になってきます。「◯◯君の叩き方、どうだった?」と他の子どもに聞いてみると、「そんなだったかな」と思いながらも、「優しく叩いてた。」などと言うはずです。
「優しく叩いてなかったよ。」と誰かに言われたらチャンスです。「え?!優しく聞こえなかった?ちょっともう一回やってみて。」と言えます。もう一回やったら、◯◯君は本当に優しく演奏するはずです。もちろん、改めて褒めましょう。
これは合奏に限らず、どんな場面でも褒めることができる、褒め方のコツです。褒めるのが苦手な人は、ぜひやってみてください。
楽しくするには導入が命
出来ないことを出来るようにするためには、どうしても、何度も繰り返す必要があります。
子どもが必要感をもってやっていますか?
子どもが必要感をもっていれば、言われなくても自分からやりたがります。
でも、「もう十分だと思うけど、主任にチェックされるから・・・」などと思っている状況であれば、子どもも必要感をもつことはないでしょう。
そのような場合は、導入を楽しくしましょう。もちろん、そのような場合でなくても、楽しくしていいですが。
「私の名前はリズム仮面。◯◯組のみんなは、リズム名人だって聞いたから、勝負しに来たぞ。」
「このリズムが叩けるかな?」
などと言って、リズム勝負をします。
子どもが集中してきた頃に、以前の合奏で出来なかった部分のリズムを登場させます。
「もしかして、私の勝ちかな?」
「もう一回やるから、よく聞いてるんだぞ。」
と、出来てほしい部分は繰り返しましょう。
「このリズムも出来てしまったか。」
「私の負けではないぞ。また勝負しにくるからな。」
などと言って走り去り、
「今誰か来てた?」
と、とぼけて子どもの前に登場しましょう。
リズム仮面と勝負をしていたことを聞いて、
「じゃあ、今日はすごい合奏ができるんじゃない?」
と言って、合奏を始めましょう。
ここまで5~6分でできるはずです。
「また勝負しに来る」と言うところがポイントです。
「できないところは繰り返しやらされる」ではなくて、
「できないところがあるとリズム仮面と勝負ができる」になります。
別に、リズム仮面である必要はないですよ。
「メロディーキング」でも「ドレミの妖精」でも「音楽博士」でも、何でもいいです。作曲家(もちろん本物ではないですよ)に登場してもらって、指導をしてもらってもいいです。
できない部分を追求しない
先程の導入の場面では、前回できなかったことをしているのが分かりましたか?
大人としては、できないことをそのままにはしたくないですよね。
でも、できないことをできるまでしようとすると苦しくなります。
できない部分は、他のことを褒めて、繰り返すうちに自然にできるようにする。それでもできなかったら、その日のうちに追求することはやめましょう。
できるまで繰り返すと楽しいはずがありません。
「どうする?」とその場で大人が考えたり相談したりすると、子どものテンションは一気に下がります。その状態で続けようとするから辛いんです。
子どもができないとしたら、発達に合っていないことをさせようとしているか、大人の準備不足です。練習を繰り返せばできるかもしれませんが、大人の準備不足を棚に上げて子どもに求めるのはやめましょう。
もし、できない部分があるとしたら、その日は違うことをやって、子どもがいないところで「どうやったらできるか」の作戦を練り直しましょう。
まとめ
子どもが楽しく合奏をするための3つのポイントは
- 子どもが食いつく言葉の厳選
- リズム遊びはしっかりと
- 何度でもしたくなる反復練習
子どもが食いつく言葉の厳選
言葉を実際に言いながら、音の数だけではなくて、音の長さも考えて言葉を当てはめましょう。上手く言葉が見付からないときは、子どもに合わせて楽譜を変えてしまいましょう。子どもが考えた言葉だと、忘れにくいですよ。
ゲームの要素を取り入れると、いろんな言葉の当てはめ方ができます。テレビで流れているものや、子どもが知っている曲のリズムを取り入れると、あっという間に理解できますよ。
リズム遊びはしっかりと
言葉に合わせて手を叩けないとしたら、まだ十分に育っていないということです。合奏では、発達に合っていない、高いものを求めることはやめましょう。楽しんで楽器を鳴らすことができれば、それで十分です。
合奏の基礎となるのは遊びです。手遊び、遊び歌、わらべ歌、リトミックなど、合奏だけではなく、他の遊びをしっかりしておきましょう。
何度でもしたくなる反復練習
「何度でもしたくなるような合奏」をするのが、保育者の仕事です。何度でもしたくなるような褒め方をしましょう。繰り返すのが楽しくなる導入をしましょう。そして、できないことを子どものせいにせず、「どうすればいいのか」を子どものいない場所でしっかり考えましょう。
合奏については、
合奏・楽器を使った遊びで考える「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」
も参考にしてくださいね。
楽器を決める段階の話はコチラ
【子どもが最後まで楽しめるように】合奏や鼓笛隊の活動で楽器を決めるときに気をつけたいこと
「保育指導案の書き方をもっと詳しく教えてよ」という人は、「保育塾ベーシック」についての詳しい内容を読んでみてください。「子どもを見取る」「記録する」「援助する」「指導案を書く」「要録を書く」ということについて、3日に1度、10分ほどのプチ研修がメールで届きます。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。