「月案は週案よりも作成するのが難しいのはなぜか」を改めて考えると作成の仕方や様式が見えてくる話

月案は、週案よりも作成するのが難しいですよね。なぜ難しいのかを考えたことがありますか?「週案よりも書く量が多い」「1ヶ月も先のことを考えるから」などはもちろんとして、そこをもう少し深く考えてみると、作成の仕方や様式を見直すことにもつながります。もしかすると、作成の負担が大きく変わるかもしれませんよ。

月案を作成するのが難しい最大の理由は

月案を作成するのが難しい理由はいろいろあるのでしょうが、最大の理由は「位置づけが曖昧だから」です。「なんのために作成するのかがハッキリしていない」とも言えるかもしれません。子どものため、保育をするために作成するのは当然なのですが、作成するのを当たり前のこととして、「具体的に何を書くか」「どう書くか」を分からないまま作成していませんか?

「月案の位置づけが曖昧」とはどういうことか

「月案の位置づけが曖昧」と私がお伝えするのには、2つ理由があります。1つは、「月の変わり目が子どもの発達とも生活のリズムとも関係がほとんど無い」ということです。「7月1日(土)になりました。今日から月が変わるので、新しいねらいになります。」って、子どもにとってはなんの脈絡も無いですよね。

もう1つの理由は、「月案が長期の計画だと言い切れるのか」ということです。特に、幼稚園の場合は、短い年には7月の登園が2週間ほどで終わりますよね。週案が短期の計画なら、2週間ほどの月案は長期の計画と言えるのでしょうか。この、「長期の計画」「短期の計画」のどちらであるかということの違いは、おそらく、あなたが思っている以上に大きいです。

「長期の計画」「短期の計画」の違い

文部科学省から、幼児の思いをつなぐ指導計画の作成と保育の展開(令和3年2月)というものが出されているのをご存知ですか?そこには、指導計画について、次のように書かれています。

指導計画には、年間指導計画や学期ごとの指導計画等の長期の指導計画と、それと関連を保ちながらより具体的な幼児の生活に即して作成する週の指導計画(週案)や日の指導計画(日案)等の短期の指導計画があります。

引用:幼児の思いをつなぐ指導計画の作成と保育の展開(令和3年2月)文部科学省

不思議なことに、月案について書かれていませんね。「学期ごとの指導計画等」に書いてある「等」の部分でしょうか。ここでは、月案が登場しないことは一旦置いといて、続きを見てみますね。

長期の指導計画は、教育課程に沿って園生活を長期的に見通しながら、具体的な指導内容や方法を考えていきます。例えば、幼児の生活や発達を考慮して園行事を位置付けたり、園内外の四季折々の自然環境を生かして幼児の遊びの環境を見直したりします。したがって、長期の指導計画は幼稚園の全教師が協力して作成することが一般的です。全教師で話し合って作成することで、教師間で幼児の見方や保育の進め方について共通理解ができ、教師一人一人が長期的な見通しをもって日々の保育を考えることができます。 短期の指導計画は、長期の指導計画を基に、学級の実態を踏まえて学級担任が責任をもって作成することになります。

引用:幼児の思いをつなぐ指導計画の作成と保育の展開(令和3年2月)文部科学省

注目して頂きたいのは、「長期の指導計画は幼稚園の全教師が協力して作成することが一般的です」という部分と、「短期の指導計画は、長期の指導計画を基に、学級の実態を踏まえて学級担任が責任をもって作成することになります」という部分です。

なぜ、「全教師が協力して」と「学級担任が責任をもって」という違いが出てくるかというと、長期の指導計画と短期の指導計画がもつ役割が違うからです。「長期の指導計画は、教育課程に沿って園生活を長期的に見通しながら…」ということなので、文字通り「計画」の部分が大きいですね。一方、短期の計画は、「学級の実態を踏まえて」なので、より子どもの姿に沿ったものとなります。
※もちろん、長期の計画も学級の実態を踏まえますが、短期の方はよりその色が濃くなるということです。

月案は長期の計画なの?

さきほど引用した部分から前に戻って、リンク先のPDFだと29ページに図が描いてあります。その図の中で、「ここまでが長期の指導計画」「これらは短期の指導計画」ということが分かるのですが、月案は長期の計画になるように見えますね。…でも、短期の指導計画のくくりも一番上が月案にギリギリかかっているようにも見えてしまいます。手元にあった、平成25年度の「指導計画の作成と保育の展開」を見てみると、ハッキリと長期の計画であるように見えますが。

月案をどのような位置づけにするか

さて、月案が長期の指導計画だとしたら、週案とは違う書き方が必要です。単に書く量が多くなるのではなくて、長期の指導計画として、週案よりもさらに「計画」の部分が大きくなります。週案は、より子どもに沿ったものになります。ここの区別がついてないと、月案と週案が似たような内容になり、「同じようなことを何回も書く意味あるの?」となりかねません。

おまけ

これはちょっと難しい話になるので、読み飛ばしてもらってもかまいませんが、実は、今回紹介した幼児の思いをつなぐ指導計画の作成と保育の展開(令和3年2月)では、「期」についてもちょっと曖昧な部分があります。

指導計画には、年間指導計画や学期ごとの指導計画等の長期の指導計画と、それと関連を保ちながらより具体的な幼児の生活に即して作成する週の指導計画(週案)や日の指導計画(日案)等の短期の指導計画があります。

引用:幼児の思いをつなぐ指導計画の作成と保育の展開(令和3年2月)文部科学省

ここには、「学期ごとの指導計画等」と書いてありますよね。しかし、リンク先の29ページの図では、「期の指導計画」の部分に3年間で10個の期があって、斜めの線で区切ってあります。これは、学期の「期」ではないですよね。おそらく、発達の「期」を表しているのでしょうが、発達の期についてはどこにも書いてありません。ですので、私が書いた記事を紹介しておきます。難しいので、その気になった人だけ読んでみてください。
教育課程・全体的な計画の「期」とは【ちゃんとした意味を知っていますか?】

月案と週案についてはこちらの記事を読んでみてください。
伝わりやすい保育指導案の書き方【週案の「ねらい」と月案の「内容」の関係】

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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

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ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・

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ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。