保育塾の研修の1つに、「自分にとって必要な分だけ残しておける記録の書き方」があります。この記事では、その研修の1部を公開しています。今回は、特に「保育指導案を書くときに必要な記録」について、具体例を交えてお伝えします。「みんなの遊びを見ているばかりで参加しない」という子どもがいるとき、どう声をかけ、記録しますか?
自分に必要な記録だけを残しておきたい理由
自分に必要な記録だけを残しておきたい理由には、次の3つがあります。
- 書く時間が短くてすむから
- 探す時間が短くてすむから
- 質の向上につながるから
ただし、本当に必要なことかどうか、よく分からないことを少しだけ書いて終わりにするのであれば、それよりはたくさん書いた方が良いです。慣れないうちはとにかく量をこなしましょう。
買い物に行くときは必要な分だけ買いますよね
たくさん買ってストレス発散する…という方もいらっしゃるでしょうが、通常の場合は、必要な分だけ買い物しますよね。たくさん買うと、お金も時間もかかります。それから、冷蔵庫を整理整頓する時間も、取り出すときに探す時間もかかります。せっかく買ったものを腐らせてしまうかもしれません。
これって、保育の記録も似たようなものなんですよ。「あれも必要、これも念のために」をやりすぎると、記録をする労力、整理する労力が大きくなり(書いたきり整理せず、見返さない場合も多いかもしれませんが…)、せっかく書いた記録が埋もれたままになるかもしれません。
必要なことはなんなのかを意識して記録する
まだ買い物の話は続きます。たとえば、「夕ご飯は、たらこスパゲッティにしよう」「特売で国産の豚ロースがメチャクチャ安いから、豚ロースが主役のメニューにしよう」などと考えていれば、毎日大量に買い物をする必要は無くなります。買い物に費やす時間もお金も、冷蔵庫を整理整頓する時間も短くなりますよね。
さらに、「できるだけ美味しいたらこスパゲッティを作るためにどうすれば…」を考えながら買い物をすることにもなります。「やみくもに買い物をしない→時短」ばかりでなく、「何をするか決めておく→質の向上」にもつながるんですよ。
記録も同じです。「必要なことはなんなのか」を意識することで、子どもの姿をどう見取るかが変わってきます。
何を意識すれば記録が保育指導案につながるか
簡潔にお伝えすると、「ねらい」を意識して記録することで(子どもを見ることで)記録と保育指導案がつながります。当たり前のことに思えるかもしれませんが、とても大事なことです。ちょっと具体例を挙げますね。
たとえば、「友だちがしていることに興味をもって関わる」という「ねらい」だったとして、「みんなの遊びを見ているばかりで参加しない」という子どもがいるとしましょう。この場合、どう声をかけますか?もう少し様子を見てみますか?どのように記録しましょうか。
「興味をもって関わる」だから、一緒に遊んでほしい。と思うと、「入れてって言ってみようか」などと声をかけたくなるかもしれませんね。「一緒に遊んでほしい」から少し離れてみましょう。「ねらい」は「興味をもって関わる」なんです。「一緒に遊ぶ」だけではないんですよ。
大人に当てはめて考えてみるとよく分かります。いくら仲が良い友達が集まったときでも、少し様子を見てから輪に入っていくことはありますよね。何を話しているか、これまでの雰囲気はどんな感じなのか、何も分かっていない状態で、「何話してんの?私も入れてよ」というような言い方をするかどうかは別として、いきなり入って行く人の方が少ないのではと思います。
新しい場に行くときは、その場が本当に自分にとって落ち着くところなのか、楽しめる場なのか、立ち止まって判断することってありますよね。他に選択肢があるならなおさらです。大人ほどではないにしても、子どもも色々と考えます。そこを深く見てみましょう。
「見てるだけで参加しない」の「見てるだけ」がどこを見ているか、その時どんな表情をしているか、なにかつぶやいているのか、少しずつ近付いたりためらったりしているか等々。「一緒に遊ぶ」までの間に、「興味をもって関わる」という様子はいろいろとあります。
具体的な指導案や記録の例
さて、指導案と具体的な姿を記録したものがどうつながるか、スライド1枚分だけですが画像をはっておきますね。PDCAサイクルとも絡めて話をしている途中のスライドです。
左の薄い緑色の長方形内に書いてあるのが保育指導案の「ねらい」や「内容」「援助」、真ん中の緑色の長方形内に書いてあるのが記録の1例です。濃いグレーの網掛けが子どもの姿について書いてあるところ、薄いグレーの網掛けが保育者の援助です。
うまくいかなかったな…というところも、そのまま書けば良いです。振り返りをして、次につなげていきましょう。
画像の右側にある、トマト A「見て」 BJGDK反応…というのは、メモの例です。トマトに関わっているとき、A児が興奮した様子でトマトを指差しながら「見て」と言い…というように、詳しく書くのは保育中には無理ですよね。誰の言葉か、誰がその言葉に反応したか、それだけでもメモしておくと、後から思い出してまとめやすいです。
これは、あくまでも1例です。研修内では、他の様式もいくつか紹介しています。
記録は要録や連絡帳・おたよりともつながる
さて、記録は要録や連絡帳・おたよりともつながります。特に、個人の記録はまとめ方次第で、そのまま要録の下書きに直結します。要録を書く時期に、慌てて記録から関連したところを探す必要もほとんど無くなります。「個別の支援計画にもそのまま使えますね」という言葉を頂いたこともあります。日々の記録を工夫すると、まとめ直さなくてすむんですよ。要録や支援計画に直結する個人の記録をどうまとめるかは、研修内でお伝えしています。
保育塾では、研修・ワークショップの1部をメールでお届けする「保育塾ベーシック」というメルマガを配信しています。指導案や要録の書き方、子どもの見取り、援助、記録等々、実際に保育をしていく上で必要な様々なことを無料で学べるメルマガです。1回10分ほどでできるプチ研修が3日に1度メールで届きます。「保育塾ベーシック」についての詳しい内容を読んでみてください。
指導案や要録を実際に書き進めていく様子を見たり他の人の考えを聞いたりしたい方のために、
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。
保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。