防犯標語の「いかのおすし」を知っていますか?これ、幼児にとっては難しいです。もちろん、この言葉に触れて知っておくことは必要でしょうけど、言葉だけ覚えようと思っても難しいんですよね。「幼児がやってみて身に付くこと、実際にできることは何か」を具体的に考え、経験できるようにすることが大事です。
いかのおすしとは
この記事を読もうという方は、知ってらっしゃるとは思いますが、一応確認として書きますね。
- いか→「いかない」
- の→「のらない」
- お→「おおきなこえでさけぶ」
- す→「すぐにげる」
- し→「しらせる」
知らない人について行かない、知らない人の車に乗らない、危ないときは大きな声で叫ぶ…ということを、分かりやすいように頭文字をとって並べ、「いかのおすし」としているんですよね。
幼児にとって難しい理由
分かりやすく並べたはずの「いかのおすし」ですが、幼児にとっては難しいです。「いかのおすし」という言葉を知っていると答えた子どもに内容を尋ねてみると、この標語の難しさがよく分かります。
「か」が分からない
「いかのおすし」という言葉自体は覚えやすいですが、「い」「か」の2文字で「いかない」としているため、それを覚えていないと、い→「いかない」、か→「???」となるんですよね。この時点で混乱します。
「~しない」と「~する」が混在している
「いかのおすし」の最初の2つは「いかない」「のらない」と、やってはいけないことなのに、その後は「おおきなこえでさけぶ」「すぐにげる」「しらせる」と、やるべきことが並べられています。やってはいけないのか、やるべきなのか、どちらか分からなくなります。
「おはしもち」と混ざる
「いかのおすし」の「お」と「し」は、避難訓練の時に使う「おはしもち」と混ざります。「おはしもち」とは、避難のときに「おさない」「はしらない」「しゃべらない」「もどらない」「ちかよらない」です。こちらは、全部「~しない」なので覚えやすいですね。これと混ざって、「いかのおすし」が、「いかない」「のらない」「おさない」「す…??」「しゃべらない」になってしまいます。
「おおきなこえでさけぶ」「すぐにげる」が長い
「さけぶ」「にげる」だけだと標語にならないので、「すぐ」や「おおきなこえで」がくっついたのでしょうが、動詞以外のものがくっついているので、これも覚えづらい原因の1つです。す→「すぐしらせる」とか、お→「おとなのひとにしらせる」なんて言葉も子どもから聞かれます。もちろん、それらも大事なことなんですけどね。
これらはみんな、年長児でも普通にある姿です。年齢が低いならなおさらですね。「いかのおすし」と聞いた時点で、お寿司やさんに思いを馳せて、その世界からなかなか帰ってこない子どももいることでしょう。
言葉を覚えるよりももっと大事なこと
「いかのおすし」という言葉を覚えるよりも大事なことがあります。念のため、この記事は「いかのおすし」を否定しているわけではなくて、「幼児が言葉で覚えようとしても難しいので、身に付くこと、実際にできることを具体的に考える」という話をしているということを改めてお伝えします。
分かりやすいよう、実際にあった話をしますね。
20年ほど前、私の地元で、小学生が連れ去られかけた事案がありました。下校中、車の中から声をかけられ、小学生は逃げたのですが、2人の大人が車から降りてきて、走って追いかけられたそうです。さらに逃げて、田んぼのあぜ道を走ったので逃げ切れたそうですが、車に乗らなくても、逃げても、それだけでは済まなかった話です。
では、幼児なら、どうすれば良いのでしょうか。
不審者と呼ばれるような人がいることを知る
まずは、「不審者と呼ばれるような人がいることを知る」です。子どもに話をすることも大事ですが、紙芝居でも分かりやすいですよね。もちろん、いかのおすしの紙芝居もあります。とにかく知ることが大事です。不審者と呼ばれるような人がいるから、「じゃあ、被害に遭わないよう、どうすればよいだろうか」という順番ですね。
・あかリボンちゃんきをつけて
・いかのおすし
・うさぎおばけのパトロール
・しらないひとにきをつけて
・まいごうさぎのポッキー
・おまじないはなあに?
・しらないおじさん こんなとききをつけようネ!
・ひゃっと3にんぐみ こんなとききをつけようネ!
こちらは、レファレンス共同データベースさんで調べた紙芝居一覧です。
1つ覚えておくなら「はなれない」
実は、「いかのおすし」には落とし穴があります。「知らない人について行かない」の「知らない人」は、親と子では想像する人が違うそうです。「1回か2回、公園で見かけた人」は、子どもにとっては「知ってる人」という認識だったりします。その点でも、「いかのおすし」は難しいんですよね。
幼児の場合、基本的に保護者が一緒にいるので、覚えておくことは1つ、「はなれない」ですね。年齢や状況によりですが、「手を離さない」や「そばにいる」「見える所で遊ぶ」「急に走って逃げない」など、1つだけ、必ず守る約束をしておくと分かりやすいです。考えることができる年齢であれば、1つだけ絶対守る約束を、子どもが考えると記憶に残りやすいですね。
実際にやってみる
警備会社や警察の方にお話を頂いた場合も、この「実際にやってみる」ということを勧められます。言葉だけ覚えていても、その場になったらできないんですよね。なにを実際にやってみるかというと、「叫ぶ」です。たとえば、普段は落ち着かないような子どもが、叫んでみると大声を出せるかもしれません。誰かが周りのみんなに認められるチャンスですよ。
「不審者役の人に話しかけられてついて行くのを断る」とか、「逃げる」などは、それだけでも怖い思いをしてしまうかもしれないので、実際にやってみることはお勧めしません。
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保育塾代表
2人の娘の父親
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ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。
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