子供の「供」という字には「お供」という意味があるが、子供は大人に従う存在ではない。また、「お供え物」という意味もあり不謹慎だ。だから「子供」ではなく「子ども」と書きましょう。…というように学校で習った人もいるようですね。これは俗説で、「子供」の「供」にそんな意味はありません。それよりも、もっと別の問題があるんです。
子供の「供」が意味することは
数年前の話になりますが、国語辞典編纂者の飯間浩明さんは、まいどなニュースの記事を引用して次のようにツイートしてらっしゃいます。
「子供」「子ども」はどっちでもいいです。「子供」は「子共」と書くと複数形にとられるためににんべんをつけたものであり、「供=付属物、お供」ということではなかったと考えられます。▽「子供」or「子ども」どっちで書く?新聞は「子ども」派が多数 専門家の見解は https://t.co/6wnzGBeqEy
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) August 1, 2020
ということで、「子供」の「供」は当て字なんですよね。「亜細亜(アジア)」とか「伯剌西爾(ブラジル)」のような当て字です。元々、一人の場合は「子」、複数の場合は「子共」と表されていたようですが、1人の場合も「こども」と言うようになったそうです。1人の場合に「子共」と表記すると複数形にとられるため、区別する意味でにんべんをつけた「供」を使おう。「子供」と書いてあっても、それは1人の子を表している。というのが「子供」が意味するところです。
「付属物、お供」という意味ではないということで、文部科学省も「子供」と表記をするようになっています。
「供える」ではない他の問題とは
子供という表記に「供」が使われるようになった経緯を考えたとき、「供」に「付属物、お供」という意味は無いということは分かりましたが、今度は他の問題が浮かんできます。元々の意味である複数を表す「共」が、見下す意味を含んでいるんですよね。
「共」は「私共」という使い方をします。これは、自分や自分が所属する集団をへりくだって表す言葉です。反対に、相手を呼ぶときに「共」をつけると、見下した言い方になります。「野郎共」とか「者共、くせ者じゃ、出合え、出合え~」という使い方です。手下に向かって使う表現ですよね。
というように密かに思っていたところ、似たような話が文化庁の国語分科会の議事録にあるのを見付けました。
あるいは,「供」は複数を表わす接尾語の「ども」から来ているとすれば,そもそも「ども」自体が見下す意味を含んでいるわけで,そうすると,この「供」の漢字の字義よりも,こっちの方が問題ではないかと思ってしまいます。
引用元:第6回国語分科会国語課題小委員会・議事録
この「ども」が意味するところについては、これ以上に話が深まることはなかったようですが、この後で次のようにも話されています。
表記・表現に差別的な意味合いがあって,それが実態を映し出しているとしたら,では,その表記を変えることが,かえってその実態を覆い隠したり,あるいは,実態が改善されたという欺瞞まんを作り出したりする,そういうことにもなりかねないのではないか。
引用元:第6回国語分科会国語課題小委員会・議事録
「障害」もそうですよね。表記を変えたからといって実態が改善されたということにはなりません。
「障害」「障碍」「障がい」はもっと話題になっても良いのではということで表記について改めて考える
そして、今の時点での表記は今後もそのままということではなく、変わっていくかもしれないですね。
【言葉は変化する】保育の現場で「正しい言葉」を気にし過ぎると窮屈になるのでもう少し楽にしても良いのではという話
各機関の表記はどうなっているか
実は、こども家庭庁設立準備室から、次のような文書が出ています。
こども基本法(令和4年法律第77号)において、「こども」とは、「心身の発達の過程にある者」と定義している。 同法の基本理念として、全てのこどもについて、その健やかな成長が図られる権利が等しく保障されること等が定められており、その期間を一定の年齢で画することのないよう、「こども」表記をしている。 これを踏まえ、下記の判断基準により、行政文書においても「こども」表記を活用していく。
引用元:「こども」表記の推奨について(依頼)
令和4年9月15日に出されたものです。行政文書においても「こども」表記を活用していく…となっていますね。1年ほど経って、「こども」という表記は浸透してきたのでしょうか。もちろん、こども家庭庁のホームページは「こども」という表記で溢れています。ただ、先ほど引用した「こども」表記の推奨についての中でも、法令に根拠がある場合や固有名詞などでは特別な場合として「子供」「子ども」を使用することが記載されているように、全てが「こども」となっているということではありません。
この記事を書いた時点では、文部科学省のホームページでは、「子供」という表記が続けられています
以前に作られた文書の「子ども」を「子供」に直すようなことはしていないので、「子ども」と「子供」が混在しています。
あえて足並みを揃えない方が、それぞれに適した取り組みになるのかもしれませんね。あ、文部科学省のサイトのキッズページはけっこう面白いですよ。リンク先を見てみてください。無料で学べるものがいろいろとあります。キッズは英語で「子ヤギ」を意味するので、人間のこどもには使わない方が良いという話もありますけどね。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
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