「子どもを落ち着かせる」という表現について、あなたはどう思いますか?
先日、保育塾のブログ記事を読んだ方から、保育日誌や記録などに「落ち着かせる」という表現を使って良いのかという問い合わせをいただきました。園で普通に使われている表現だそうですが、そのことについて疑問に思われたようです。
また、「促す」という表現についても、違和感を覚えることがあるそうです。「~を促す」という表現は、普通に使っている人も多いのではないでしょうか。なぜ、違和感を覚えることになるのだと思いますか?
結論を簡潔に言うと、保育塾でオススメしているような保育では「~させる」という表現を使うことはありません。「~を促す」という表現を使うことはあります。ですが、違和感の正体は「~を促す」という言葉の表現とは別のところにあります。
では、なぜそう言えるのか、説明していきますね。
保育で「促す」「~させる」という表現は適切なの?
まず、いただいたメールを引用しますね。前後は省略しています。
※もちろん、問い合わせのメールを引用することについては許可をいただいています。
「体験」と「経験」の違いについての内容を読み、普段の保育日誌や個人記録、実習日誌等を思い浮かべ、ふんわりと疑問に思っているけれど解決していない言葉使いについて、改めて考えました。
引用:ブログ保育塾「お問い合わせ」より
もし、具体的に教えていただけるものがあればお願いします。
1.「促す」の使い方
トイレに促す?整列を促す?ハサミで切るよう促す???
「~するよう促す」という言葉を見る度に、違和感を覚えることが。
2.「落ち着かせる」という表現は良いのか
手遊びをして落ち着かせる
落ち着いたら話を始める
…私が使い慣れてないせいか、あまり肯定的な言葉に感じず使い方がわかりません。
このメールに登場する「体験」と「経験」の違いについてという記事はコチラです。
「体験」と「経験」の意味と違い-実は幼い子どもの方が○○するんです
「~させる」は強制的
まず、「落ち着かせる」という表現は良いのかというほうから質問にお答えします。
「~させる」という表現は、学校現場ではよく使われています。「記述させる」「考えさせる」「並ばせる」等々です。でも、「考えさせるっておかしいよね」という動きも、何年も前から出てるんですよ。
これは、子どもの主体性にも関わる話です。「さあ、考えなさい」と言って考えさせようとしても、実際に考えるかどうかは子どもが決めることですよね。じゃあ、指導案の表現は「考えさせる」ではなくて、「考えることができるようにする」「考えられるようにする」としよう。というように意識が変わっている学校の先生方もいらっしゃいます。ただ、表現を変えたからといって、教師からの働きかけが具体的にどう変わるかは、また別の話です。
さて、「手遊びをして落ち着かせる」について詳しく考えてみましょう。
「落ち着かせる」という表現は、「落ち着く」の部分は子どもがすることで、プラス「させる」なので、強制的な感じがありますよね。だから、肯定的に思えないのでしょう。「着替えさせる」「並ばせる」など、他の「~させる」も同様に強制的です。
実は、「させる」という言葉は、「命令する」の類語なんですよね。
命令するの類語・言い換え一覧
引用:Weblio類語辞書
あれをせよこれをせよと人に言いつけること
指示する 指図する するようにと言う させる 命じる 言いつける 頤使する 使役する 言い付ける 命令する 指令を出す 申し付ける 申しつける 申し渡す 言い渡す 仰せ付ける 仰せつける
では、「手遊びをして落ち着かせる」を違う表し方にするとどうなるのでしょうか。たとえば、「落ち着けるように手遊びをする」「手遊びで子どもの気持ちを引きつける」などが考えられます。文末は「(大人が)◯◯をする」となっています。さらに、「落ち着けるような手遊びってなんだろう?」「気持ちを引きつけるって、具体的にどうやるんだろう」と考える必要がありますよね。
「促す」はそこまで強制的ではないはずだけど…
次に「促す」の使い方についてお伝えします。
先ほど、「~させる」について、強制的だという表現をしました。実は、「促す」も、「子どもの行動をある方向に向けようとする働きかけ」という点では、「~させる」と似たような言葉なんですよね。ただ、「命令する」や「指示する」とは強制力が違います。
ですが、「トイレに行こうね」「並ぼうね」と促した結果、子どもに断る選択肢が無かったらどうでしょう?「行け」「行きなさい」「行きましょう」「行こうね」と、言葉の使い方が違っても、求める行動が同じだったら、「命令する」も「促す」も似たようなものです。そうなると、「促す」に違和感を覚えられることもあるでしょう。
違和感の正体は「強制的に感じるから」
実際に、問い合わせをくださった方の「違和感」は、「落ち着かせる」「促す」が強制的に感じるからだったようです。ちょっとしたことですが、保育案や記録の表現を見直すことって、単に適切な言葉を使うということだけではなく、保育を見つめ直すきっかけにもなります。また、子どもに寄り添った保育をしているのに、保育案の表現で誤解され、マイナスの先入観をもって保育を見られてしまったら損ですよね。
保育塾では、保育指導案の書き方に関しての記事をいくつも書いています。言葉の使い方を深く考えてみる記事もいくつかありますので、リンク先の記事を読んでみてくださいね。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。
保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
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