「保育課程」と「(保育所の)全体的な計画」と「(幼稚園の)全体的な計画」との違い

これまで、「保育課程」と言ってたはずなのに、「全体的な計画」って名前になりましたよね。

「何が違うの?」って思いませんか?

この記事では、「保育課程」と「全体的な計画」の違いに視点を当てて、どのように作成すればいいのかをお伝えします。迷っている人だけではなく、作成が終わって一息ついている人も読んでみてください。

これまで、おそらく誰も言わなかったことが書いてあります。

保育所保育指針解説に書いてある「保育課程」と「全体的な計画」の違い

「保育課程」と「全体的な計画」の違いは書いてある

保育所保育指針解説をしっかり読んでいる人は気付いていると思いますが、はっきりと書いてありますよね。

また、「保育の計画及び評価」についても総則で示すとともに、改定前の保育所保育指針における「保育課程の編成」については、「全体的な計画の作成」とし、幼保連携型認定こども園教育・保育要領及び幼稚園教育要領との構成的な整合性を図った 。

出典:保育所保育指針解説 序章 5改訂の要点(1)総則

実は、「保育課程」という言葉は、ここにしか出てこないんです。ということは、ここに書いてあることが全てです。

改定前の「保育課程の編成」については、「全体的な計画の作成」とし、

って書いてあります。

「保育課程」と「全体的な計画」は同じってことです。

でも、「全体的な計画」の内容については、ちょっと考えなければならないことがあります。

今までの「保育課程」では足りない部分がある

また、「保育の計画及び評価」についても総則で示すとともに、改定前の保育所保育指針における「保育課程の編成」については、「全体的な計画の作成」とし、幼保連携型認定こども園教育・保育要領及び幼稚園教育要領との構成的な整合性を図った。

出典:保育所保育指針解説 序章 5改訂の要点(1)総則

幼保連携型認定こども園教育・保育要領及び幼稚園教育要領との構成的な整合性を図った。

と書いてありますよね。

これについて、よく考えてみると、今までの「保育課程」では、ちょっと足りないということが分かります。

「今までの保育課程」イコール「全体的な計画」だと足りないこととは

保育所保育指針解説には、全体的な計画について、
「幼保連携型認定こども園教育・保育要領及び幼稚園教育要領との構成的な整合性を図った。」と書いてあります。

ということは、
こども園や幼稚園の「全体的な計画」と同じような構成にした
ってことですよね。

保育所保育指針解説に書いてある全体的な計画作成の手順

保育所保育指針解説に載っている、全体的な計画作成の手順については次の通りです。

全体的な計画作成の手順について(参考例)
1)保育所保育の基本について、職員間の共通理解を図る。
・児童福祉法や児童の権利に関する条約等、関係法令を理解する。
・保育所保育指針、保育所保育指針解説の内容を理解する。

2)乳幼児期の発達及び子ども、家庭、地域の実態、保育所に対する社会の要請、保護者の意向などを把握する。

3)各保育所の保育の理念、目標、方針等について職員間の共通理解を図る。

4)子どもの発達過程を長期的に見通し、保育所の生活全体を通して、 第2章に示す事項を踏まえ、それぞれの時期にふさわしい具体的なねらいと内容を、一貫性をもって構成する。

5)保育時間の長短、在籍期間の長短、その他子どもの発達や心身の状態及び家庭の状況に配慮して、それぞれにふさわしい生活の中で保育目標が達成されるようにする。

6)全体的な計画に基づく保育の経過や結果について省察、評価し、課題を明確化する。その上で、改善に向けた取組の方向性を職員間で共有し、次の作成に生かす。

出典:保育所保育指針解説 第1章総則 3保育の計画及び評価(1)全体的な計画の作成

「3)各保育所の保育の理念、目標、方針等について職員間の共通理解を図る。」というように「図る」と書いてあります。「これとこれを記載する」ではないんです。でも、理念や目標は書きますよね。
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「1)保育所保育の基本について、職員間の共通理解を図る。」 でも「図る」という言葉が使ってありますが、こちらは全体的な計画には書かないですよね。

これは、「作成の手順」であって、「何を書くか」ということではありません。具体的なことは、これだけでは、はっきりと分かりませんね。

幼稚園教育要領解説に書いてある全体的な計画の作成

幼稚園教育要領解説には、全体的な計画の作成について、次のように記載されています。

各幼稚園においては,教育課程を中心に,第3章に示す教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動の計画,学校保健計画,学校安全計画などとを関連させ,一体的に教育活動が展開されるよう全体的な計画を作成するものとする。

出典:幼稚園教育要領解説  第1章 総説  第3節 教育課程の役割と編成等 6全体的な計画の作成

幼稚園では、
「教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動の計画,学校保健計画,学校安全計画などとを関連させ」全体的な計画を作成するんです。

具体的には、

  • 預かり保育(教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動の計画)
  • 健康診断・生活習慣の計画など(学校保健計画)
  • 避難訓練・交通安全指導・防災計画・防犯計画・危機管理など(学校安全計画)

しかも、
教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動の計画,学校保健計画,学校安全計画など
って書いてあります。

他にも、全体的な計画として、関連させることはいろいろあるということです。

これらの具体的な部分が、保育所保育指針解説には書いてありません。

幼稚園教育要領解説に書いてあることをもう少し詳しく言うと

幼稚園教育要領解説には、先程紹介した文の続きに、もう少し詳しいことが書いてあります。

したがって,学校安全計画を立てる際にも,こうした1日の幼稚園生活を視野に入れた計画が必要となる。例えば,幼稚園における安全教育として実施される避難訓練は,教育課程に係る教育時間にも,教育課程に係る教育時間の終了後にも実施する必要がある。一人の幼児が,その両方に戸惑いなく参加することができることが大切なので,当然のことながら,その指示や方法,配慮事項等の進め方は,共通にしておくことが必要となる。

出典:幼稚園教育要領解説  第1章 総説  第3節 教育課程の役割と編成等 6全体的な計画の作成

「避難訓練は、通常の保育のときだけでなく、預かり保育のときにも同じ方法で実施しましょう」ということですね。保育所で言うと、「延長の時間などにも避難訓練をしましょう」ということになるでしょう。

そんなこと言われても、「全体的な計画」が膨大な量になるでしょ???と思いますよね。幼稚園教育要領解説には、もう少し後に、こんなことが書いてあります。

その際,全体的な計画から具体化するというよりは,必要な計画をそれぞれの目的に応じて作成し,全体的な計画の中に置き,その上で,教育課程との関連,他の計画との関連などの観点から調整していくことになるだろう。最終的には,教育活動の全体図を描きながら,それぞれの計画を完成させていくことになるだろう。

出典:幼稚園教育要領解説(第1章 総説  第3節 教育課程の役割と編成等 6全体的な計画の作成)

「だろう」じゃなくて言い切ってほしいですが・・・それだけ、まだ流動的ってことですよね。一度作って終わりではなく、見直しが必要ってことですね。カリキュラム・マネジメントです。
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「保育課程」は、1枚の紙面で表してあるものを見かけますが、それが「全体的な計画」の全てではありません。

「全体的な計画」は、いろいろな計画を関連付けながら(幼稚園では教育課程を中心に)作成していくということです。

まとめ

言葉としては
保育所の「保育課程」と「全体的な計画」は同じです。

内容としては
「幼保連携型認定こども園教育・保育要領及び幼稚園教育要領との構成的な整合性を図った。」
ということから、幼稚園教育要領解説を参考にすると、詳しいことが分かります。

幼稚園教育要領解説には
「教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動の計画、学校保健計画、学校安全計画などとを関連させて、全体的な計画を作成する」ということが書いてあります。

実際には、膨大な量になるので、1枚の紙面の中にいろいろな計画の全てを項目として表すのではありません。いろいろな計画を関連付けながら(幼稚園では教育課程を中心に)作成するということです。

そして、1度作成して終わりではなく、見直しをすることが必要です。

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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。

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ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。