幼稚園教育要領解説や保育所保育指針解説を読んでいるとき、単純な表現なのに「あれ?これってどういう意味?」と思うこと、ありませんか?気になり始めると、「これでいいんだろうか?」って、保育するときに迷ってしまいます。かといって、いろいろ調べても分からないし、誰に聞けばいいのかも分からないですよね。
この記事は、幼稚園教育要領解説や保育所保育指針解説を読んだときに感じる、ちょっとした疑問への答えやヒントが書いてあります。今回とりあげるのは「美しい言葉」です。
「美しい言葉」という表現はどのように登場するか
保育所保育指針解説 には、次のような表現があります(幼稚園教育要領解説、幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説にも同じように書いてあります)。領域「言葉」の「内容の取扱い」を開いてみてください。
保育士等は、このような子どもの言葉の発達や人との関わりを捉えそれに応じながら、正しく分かりやすく、美しい言葉を使って子どもに語りかけ、言葉を交わす喜びや豊かな表現などを伝えるモデルとしての役割を果たしていくことが大切である。
出典:保育所保育指針解説
「正しく分かりやすく、美しい言葉を使って子どもに語りかけ」と書いてありますね。「正しい言葉」というのは理解できます。言葉の使い方が、間違っていなければ大丈夫です。それから、子どもに相応しくない言葉を使わなければいいんです。「分かりやすい言葉」を使うという事も、実際にできているかどうかは置いといて、理解できます。「美しい言葉」って何なんでしょう?
言葉を獲得する時期である幼児期にこそ、絵本や物語、紙芝居などを通して、美しい言葉に触れ、豊かな表現や想像する楽しさを味わうようにしたい。
出典:保育所保育指針解説
じゃあ、「美しい言葉」が出てくる絵本や物語、紙芝居を選ぼうかなって思ったときに、「美しい言葉って具体的にどんな言葉なんだろう?」って思いませんか?
また、絵本や物語、紙芝居の読み聞かせなどを通して、お話の世界を楽しみつつ、いろいろな言葉に親しめるようにすることも重要である。 特に語り継がれている作品は、美しい言葉や韻を踏んだ言い回しなど子どもに出会わせたい言葉が使われていることが多い。繰り返しの言葉が出てきて、友達と一緒に声を出して楽しめるものもある。
出典:保育所保育指針解説
「いろいろな言葉」に親しめるようにすることも重要・・・という表現があって、その次に、「美しい言葉や韻を踏んだ言い回し」「繰り返しの言葉」と、「いろいろな言葉」の具体例が出てきます。
「美しい言葉」の具体例
「特に語り継がれている作品は、美しい言葉や韻を踏んだ言い回しなど子どもに出会わせたい言葉が使われていることが多い」ということなので、ちょっと思い出してみると・・・
たとえば、「ぐりとぐら」のシリーズは、リズムよく繰り返される表現がとても多いですよね。特に、「ぐりとぐら」と「くるりくら」は、名前からそっくりで、他にも似た言葉がたくさん繰り返されています。「おおきなかぶ」は「うんとこしょどっこいしょ」とか「まだまだ かぶは ぬけません」とか、話の中のほとんどが繰り返される表現です。
絵本ではないですが、超定番の手遊び「ひげじいさん」は「トントントントン」と「~さん」の繰り返し、「お弁当箱の歌」も「~さん」の部分が繰り返しです。繰り返しの表現、韻を踏んだ表現って、子ども達は大好きなんですよね。
それで、肝心の「美しい言葉」って、具体的にはどんな言葉でしょう?
保育所保育指針解説をもう一回見てみると
幼稚園教育要領解説や保育所保育指針解説には、次のような表現もあります。領域「言葉」の「内容」の7番目「 生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付く。」 に書いてあります。
言葉はただ単に、意味や内容を伝えるだけのものではない。声として発せられた音声の響きやリズムには、音としての楽しさや美しさがある。 例えば、「ゴロゴロ ゴロゴロ」というように言葉の音を繰り返すリズムの楽しさや「ウントコショ ドッコイショ」というような言葉の音の響きの楽しさなどもある。また「サラサラ サラサラ」というような言葉の音の響きの美しさもある。言葉を覚えていく幼児期は、このような言葉の音がもつ楽しさや美しさに気付くようになる時期でもある。
出典:保育所保育指針解説
「サラサラ サラサラ」というような言葉の音の響きの美しさ・・・これは分かります。人によって捉え方は違うかもしれませんが、「バタバタ」だと、騒がしいとか大変そうな響きで、「ハラハラ」だと、はかないとか。「ハラハラ」に美しさを感じる人もいるかもしれませんね。「ソヨソヨ」とか「しんしん」とか、自然を連想させる擬音は「美しい」と感じることも多いでしょう。
また、 保育士等の話す言葉に耳を傾けることにより、言葉の響きや内容に美しさを感じ、改めて言葉の世界の魅力にひかれることもある。さらに、同 じ意味を表す言葉であっても、その表現の仕方を変化させることが必要な場合もある。例えば、友達を呼ぶ時にも名前を呼んだり、愛称を呼んだりするなど、様々な呼び方がある。相手や状況に応じて言葉を使い分けることが、言葉の楽しさや美しさに通じることがある。
出典:保育所保育指針解説
「保育士等の話す言葉に耳を傾けることにより、言葉の響きや内容に美しさを感じ」って書いてあります。それから、「相手や状況に応じて言葉を使い分けることが、言葉の楽しさや美しさに通じることがある」とも書いてあります。
保育所保育指針で「美しい言葉」について書いてあることは、これくらいです。これまで分かったことは・・・
- 音の響きが美しい
- 内容が美しい
- 相手や状況に応じて言葉を使い分けることが、言葉の楽しさや美しさに通じることがある
「この言葉が美しい」というように、特に定義をしてないということは、一般的な意味で 「美しい」を使ってあるということです。じゃあ、一般的な意味で、「美しい言葉」を考えてみましょう。
一般的な意味で「美しい言葉」を考える
一般的な意味で「美しい言葉」ってどんな言葉でしょう?思いつくのは・・・
- 語調(話すときの調子、抑揚、イントネーション)が美しい
- 丁寧な言葉
- 多様な表現
- 古き良き日本語
とりあえずこのくらいでしょうか。
実際の保育の場面では
美しい言葉を使って子どもに語りかける
「美しい言葉を使って子どもに語りかける」というのは、具体的には「語調(話すときの調子、抑揚、イントネーション)に気をつけて、丁寧な言葉を使う」というように考えられます。常に意識をしていたら、声を荒らげることも少なくなりそうですね。
また、日本語には、特に自然を表す美しい言葉が多いです。年長ともなれば、「雪」の表現も、「粉雪」「牡丹雪」「べた雪」など、使い分けることができるはず。「泡雪」や「綿雪」なんかは、聞いたことがなくても、イメージしやすいので、使ってみてはいかがでしょうか。「覚えなければならない」ということではないですよ。「いろんな美しい表現があることを知る」というのが大事です。
絵本や物語、紙芝居を読む
保育所保育指針解説や幼稚園教育要領解説には、 「特に語り継がれている作品は、美しい言葉や韻を踏んだ言い回しなど子どもに出会わせたい言葉が使われていることが多い」と書いてあります。「美しい言葉」を 「日本語ならではの多様な表現、古き良き日本語」と考えれば、最近の作品よりも語り継がれている作品にたくさん使われていることでしょう。
「ちょっと間がもたないから、なんか絵本でも読もうかな」という絵本の選び方では、美しい言葉は分かりませんよ。絵本を選ぶときも、声に出して、じっくりと読んでみましょう。
たとえば、「ぞうくんのさんぽ」では、「やあ、かばくん」「おや、ぞうくん」という、あいさつが繰り返されます。「やあ」とか「おや」という言葉をスルーしてしまう人もいれば、美しいと感じる人もいます。 子どもがどう受け取るかは、あなたの読み方次第ですよね。
絵本や物語、紙芝居に加えて、歌や手遊びも、美しい言葉、楽しい表現がたくさんありますよ。たとえば・・・
YouTubeにリンクしてありますので、興味のある方はご覧ください。
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