「これが10の姿(言葉による伝え合い)に関わっています」と言える指導要録・保育要録の書き方

「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」を考慮して、指導要録・保育要録を書こうとしているみなさん。

意識し過ぎて、フリーズしていませんか?

まずは、「これが10の姿です」と言える指導要録・保育要録の書き方を読んでみてください。「これが10の姿です」と言える指導要録・保育要録の書き方を読んで、さらに詳しいことを知りたくなった人は、この記事も続けて読んでみましょう。

この記事は、「この姿は、10の姿で言うと、言葉による伝え合いについて書いてあります。」と、自信をもって言える書き方を紹介しています。「何を」「どのように」詳しく書けば良いのかを、この記事を読んで見付けてくださいね。

 

指導要録・保育要録は10の姿のそれぞれについて書くものではない

大事なことなので、複数の記事で言っていますが・・・

指導要録・保育要録は、「言葉による伝え合いについては、○○のような育ちがある」「協同性では、このような姿がある」というような書き方をしません。

最終年度の記入に当たっては、特に小学校等における児童の指導に生かされるよう、幼稚園教育要領第1章総則に示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を活用して幼児に育まれている資質・能力を捉え、指導の過程と育ちつつある姿を分かりやすく記入するように留意すること。その際、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が到達すべき目標ではないことに留意し、項目別に幼児の育ちつつある姿を記入するのではなく、全体的、総合的に捉えて記入すること。

幼稚園及び特別支援学校幼稚部における指導要録の改善について(通知)

これは、文部科学省から、全国の教育委員会などに向けて、通知されたものの一部です。引用したのは、「指導に関する記録」に書くことの部分です。
「項目別に幼児の育ちつつある姿を表すのではなく」って書いてあります。

「言葉による伝え合いについては○○である」「自立心は、こうである」「道徳性に関しては、こんな姿である」
というような書き方はしないということです。
保育所やこども園でも、同じように書きます。

保育所児童保育要録に記載する事項

幼保連携型認定こども園園児指導要録に記載する事項

 

「育ちつつある姿」の書き方

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」のことを考えて、5歳児の場合は、小学校以降につながる、育ちつつある姿と、指導してきたことを書きましょう。

これも、先ほど紹介した、文科省の資料に書いてあることです。

  1. 以前は、こんな姿でした
  2. そこで、こんな援助をしてきました
  3. 今は、こんな姿が育ちつつあります

というように書きます。

 

10の姿(言葉による伝え合い)をふまえて要録を書くと

まずは、「10の姿」の言葉による伝え合いについての文を確認しましょう。

言葉による伝え合い 保育士等や友達と心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付け、経験したことや考えたことなどを言葉で伝えたり、相手の話を注意して聞いたりし、言葉による伝え合いを楽しむようになる。

出典:保育所保育指針解説

幼稚園教育要領解説幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説にも同じように書いてあります。

言葉による伝え合いをふまえて要録を書くのなら、この文の中にある言葉を使って子どもの姿を書けば良いと思いませんか?

そっくりそのまま使うのも気が引けるので、少しだけ文を変えて書きますよね。

たとえば、「友達が話しているとき注意して聞くようになった」とか「思いや考えを伝え合う姿がある」とか。

このような書き方ばかりだと、誤解を生むことがあります。

「書くスペースが少ないから」といって、10の姿のことだけを書いてしまうのであれば、なおさら誤解は強まります。

 

「子どもの姿」「援助」は具体的に書く

保育に携わる身としては、子どもの良いところをたくさん書きたい気持ちは分かります。

要録は、子どもの肯定的なところを書きますが、良いところだけを並べて書くと、誤解を生んでしまいます。

誰に誤解されるかというと、特に、小学校の先生です。

「思いや考えを伝え合う姿があるって書いてあるのに、授業中に手を挙げようとしないんですけど。」

とか

「思いや考えを伝え合う姿があるって書いてあるのに、自分ばっかり話してるんですけど。」

などと思われてしまいます。

 

みんなの前でも話せるようになったのに・・・

修了制作のときなんか、みんなの中心となるくらいだったのに・・・

などと思っても、その姿を知っているのはあなたしかいません。

「子どもの姿」や「保育者の援助」は具体的に書きましょう。

  1. 以前は、こんな姿でした
  2. そこで、こんな援助をしてきました
  3. 今は、こんな姿が育ちつつあります

というように書きます。

 

◯絵を描くことや工作が好きで、一人でじっくりと遊ぶことが多かった。そこで、担任も一緒に作りながら会話をつなげたり手を貸し合えるような遊び方を提案したりし、本児と側にいる子ども達との気持ちがつながるようにしてきた。友達と一緒に工作するようになってからは、作るものが大きくなり、手を貸し合う姿が増えた。特に、修了製作では、周りの大勢の子ども達と、作りたい物のイメージを伝え合う姿も見られた。

 

「工作をしているときは」とか「好きな遊びのときには」「仲の良い友達と」などの言葉があると、いつもではなくて、生活や遊びの1場面で見られる姿だということが分かります。大人だって、研修会などでは、全体の場で発言する人は、ほんの一部です。でも、グループ協議だと、みんなよく話しますよね。保育でも、少人数の場面に目を向けると、伝え合っている姿がたくさん見付かりますよ。

 

◯年度当初から、思いや考えをはっきりと伝えることができ、クラスで集まる時も積極的に発言していた。しかし、周りの子ども達がたくさん話すようになってくると、考えの違いから、コミュニケーションしづらい場面も増えてきた。担任は、「どう言ったらよかったかな?」などと、話し方を考えられるように声をかけてきた。今では、相手によって話し方を変える、分かってもらえないときは違う言葉で表現するなど、伝え方を工夫するようになっている。

 

「相手の話を注意して聞く」ということを考えると、上の例文は「言葉による伝え合い」について書いてあると言えます。でも、分かってもらえないときに違う言葉を使うには、「相手の立場に立って行動する」必要があります。そうすると「道徳性・規範意識の芽生え」です。「社会生活との関わり」にも、「相手の気持ちを考えて関わり」という記載があります。「言葉による伝え合い」についてだけ書くってできません。

だから、10の姿のことは考えずに、書いてしまってから、「で、10の姿のどれと関連してるかな~。」って考えれば十分なんです。

 

言葉による伝え合い関わる「育ちつつある姿」を書くポイント

「育ちつつある姿」を書くポイントは、3つあります。

注意して聞く」とか「伝え合う」という姿が、

  • 「保育者の援助がある中、保育者や友達と心が通っている中で見られる姿である」ということが分かるように書く
  • 「生活の全ての場面ではなくて、ある1場面で見られる姿である」ということが分かるように書く
  • 「できる、している」と書くのではなく「やろうとしている態度、気持ちが見られる」と書く

3つの中のどれかを書いてあれば、

「思いや考えを伝え合う姿があるって書いてあるのに、授業中に手を挙げようとしないんですけど。」

とか

「思いや考えを伝え合う姿があるって書いてあるのに、自分ばっかり話してるんですけど。」
などという誤解は生まれません。

要するに、「育ちつつある姿」なので、「育ったよ」と言ってしまうと、おかしなことになります。

もちろん、「本当に育ったんだよ」ということであれば、自信をもって書いてください。

 

まとめ

指導要録・保育要録は、「言葉による伝え合いについては、○○のような育ちがある」「思考力の芽生えでは、このような姿がある」というような書き方をしません。

小学校以降につながる、育ちつつある姿と、指導してきたことを書きましょう。

  1. 以前は、こんな姿でした
  2. そこで、こんな援助をしてきました
  3. 今は、こんな姿が育ちつつあります

というように書きます。

基本的には、書いてしまってから「10の姿の、どれと関連があるかな?」と考えましょう。

 

言葉による伝え合いについて書きたいからといって、「友達が話しているとき注意して聞くようになった」とか「思いや考えを伝え合う姿がある」だけを書くと、誤解が生まれます。

子どもの姿も、保育者の援助も、具体的に書きましょう。

  • 「保育者の援助がある中、好きなことが自由にできる環境の中で見られる姿である」ということが分かるように書く
  • 「生活の全ての場面ではなくて、ある1場面で見られる姿である」ということが分かるように書く
  • 「できる、している」と書くのではなく「やろうとしている態度、気持ちが見られる」と書く

これらのどれかを取り入れて書くと、すでに育った姿ではなくて、「育ちつつある姿」だということが分かります。

 

この記事は、「どうしても言葉による伝え合いについて要録に書く方法が知りたい」という人のために書いたものです。

基本的には、「これが10の姿です」と言える指導要録・保育要録の書き方に書いてあることが理解できれば、十分だと思います。

 

「でも、どうしても10の姿のそれぞれについても知りたいんだよ」という人は

「これが10の姿(健康な心と体)に関わっています」と言える指導要録・保育要録の書き方
「これが10の姿(自立心)に関わっています」と言える指導要録・保育要録の書き方
「これが10の姿(協同性)に関わっています」と言える指導要録・保育要録の書き方
「これが10の姿(道徳性・規範意識の芽生え)に関わっています」と言える指導要録・保育要録の書き方
「これが10の姿(社会生活との関わり)に関わっています」と言える指導要録・保育要録の書き方
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10の姿については、
【10の姿】「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」のとらえ方と具体的な姿
をご覧ください。

さらに、要録をしっかり書きたい人は
指導要録・保育要録の内容と保育力をレベルアップさせる「援助」の書き方
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簡単に説明してありますが、内容としては高度です。

この記事が難しかった人、要録を思うように書けない人は、
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ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。