あなたは、目の前で見られる子どもの姿が、5領域の「ねらい及び内容」とどのようにつながっているか考えたことがありますか?今回は、砂場での並行遊びを取り上げ、1歳以上3歳未満児の「ねらい及び内容」と照らし合わせてみます。保育塾のメルマガ「保育塾ベーシック」の試し読みとしてお伝えしますので、メルマガ風の文章となっています。
前回の振り返り
それでは、保育塾ベーシックの第6回目を開始しましょう。
第5回目では、子どもの遊びを見るときに「何を学んでいるか」を具体的に考えてみました。場面としては、「砂場で遊んでいるときに、周りに砂をかけてしまう」という状況です。「周りに砂を飛ばしているのに気付かないくらい、遊びに没頭していた」と考えると、「自分はあの遊び方をしたら、すごく楽しめるんだ」と客観視できる「メタ認知能力」が育っていると捉えることもできます(そのように意識する手前の状態ですが)。
他にも、砂を飛ばさないようにする力加減や、「乾いた砂は散らばりやすい」「水が混ざると砂は固くなる」など砂の性質を知ることにもなる。砂をかけてしまってからは、「周囲の状況に気持ちを向ける」「相手の表情を見る」「相手が嫌がることをしてしまったときは、謝った方がいいことを知る」「謝り方を知る」など、主に人間関係について学ぶことができる。ということを、お伝えしました。
これを踏まえて、第5回目の課題を考えていきたいと思います。
前回出された課題
第5回目は・・・
☆「砂をかけてしまう」とは別の場面で、砂場での遊びについて、子どもが何を学んでいるかを考えてみましょう。
ヒント
具体的な場面が思い浮かばない人は、次の場面で考えてみましょう。
・道具の貸し借りや順番待ちをしている場面
・並行遊びをしている場面
・一緒に山や川を作っている場面
・年長児が、ずっと一人で砂型を使って形を作っている場面
という課題でした。この中から「並行遊びをしている場面」を取り上げて、何を学んでいるかを考えてみますね。
並行遊びを1歳以上3歳未満児の「ねらい及び内容」と照らし合わせる
それでは、砂場での並行遊びを、1歳以上3歳未満児の「ねらい及び内容」と照らし合わせてみます。
健康
砂型に砂を詰める、それをトントンと調度いい力加減で出す、スコップで砂をすくう、手ですくう、手で掘る、熊手で掘る、砂に絵を描く、水を汲む、水を流す、山を崩す、砂をかける、足で踏みしめる・・・まだいくらでも挙げれるほど、砂場の遊びには多くの動きがあります。
これは、「健康」にある「(ァ)ねらい」の②自分の体を十分に動かし、様々な動きをしようとする。
につながっていますね。
人間関係
「人間関係」については、言うまでもないですよね。「(ァ)ねらい」の②周囲の子ども等への興味や関心が高まり、関わりをもとうとする。関わりをもとうとするから、別々の場所ではなく、隣で遊びます。
遊んでいるのを見る、近くまで行く、近くで見る、他の子どもの近くで保育者と一緒に遊ぶ、保育者がいなくても他の子どもの隣で遊ぶ、似たような遊び方をする、隣の子どもと同じものを使おうとする・・・
「並行遊び」といっても、その前後でいろいろな遊び方があります。
環境
砂場での遊びは、「環境」のねらいと多くのつながりがあります。
① 身近な環境に親しみ、触れ合う中で、様々なものに興味や関心をもつ。
② 様々なものに関わる中で、発見を楽しんだり、考えたりしようとする。
③ 見る、聞く、触るなどの経験を通して、感覚の働きを豊かにする。
①身近な環境は、砂場での環境そのものですね。遊んでいく中で、「砂」「水」「砂場道具」「遊び方」「友だち」など、様々なものに興味や関心をもちます。
②「砂はサラサラしているときと、そうではないときがある」「水はこぼれる」「水が砂に吸い込まれて無くなる」など、発見もたくさんあります。
③砂や水の動きを見る。スコップを砂に突っ込んだ音や、バケツをひっくり返して流れる水の音を聞く。「サラサラ」「ベチャベチャ」「トロトロ」「冷たい」「温かい」などを感じる。感覚の働きを豊かにするものは、いくらでもあります。
言葉
「言葉」のねらいとも、多くのつながりがありますね。
① 言葉遊びや言葉で表現する楽しさを感じる。
感触を楽しんで、思わず声が出るところから始まり、水の冷たさや砂を触る心地よさなどを、言葉で表現するようになりますね。擬音の響きを楽しむこともあります。
② 人の言葉や話などを聞き、自分でも思ったことを伝えようとする。
道具の取り合いで、「ダメ」「やだ」とか言うのも、思ったことを伝えていますよね。「トラブル」「いざこざ」「ケガをさせない」などとばかり考えていては、子どもの成長を見逃すことになります。
表現
もちろん、「表現」とも、多くのつながりがあります。
① 身体の諸感覚の経験を豊かにし、様々な感覚を味わう。
これは「環境」のねらいとそっくりですね。5領域は、それぞれが独立したものではなく、多くの部分で重なりがあります。「環境」のところで説明したように、砂場では、砂や水を通して、様々な感覚を味わう経験がたくさんあります。
② 感じたことや考えたことなどを自分なりに表現しようとする。
これは、「言葉」のねらいとそっくりです。ただ、表現は言葉だけでなく、身体表現もありますね。身を乗り出す、立ち上がる、跳びはねる、言葉に手振りをつけるなど。並行遊びをするくらいの子どもだと、隣の子どもに対しての表現は、あまりないかもしれません。見ている保育者に対しては、いろいろと表現しますよね。
始まりは見取り
その気になれば、5領域の全てのねらいについて、砂場での並行遊びとのつながりを書くことはできます。ただ、つながりの多少はあるので、主なものだけをお伝えしました。
子どもが何を楽しんで、何を望んでいるか。それがはっきりしないと、何を大事にして、ねらいや内容をどうするかは決まっていきません。だから、子どもをしっかり見取っていく必要があるんです。少なくとも、どこかの雑誌やサイトから例文を拾ってくることは、全く意味がありません。
今回の課題
では、第6回目の課題です。
☆砂場での遊びが、5領域のねらいとどうつながるか、3歳以上児で考えてみましょう。
ヒント
1場面で考えると、範囲が狭すぎて難しいでしょうから、砂場での遊び全部で考えてみましょう。
本当にしつこいようですが、まだ砂場での遊びを例に挙げます。他の遊びにも応用できることですので、しっかり砂場での遊びについて考えてみましょう。次回から3歳以上児の話です。3歳未満児については、第10回から、改めて触れたいと思います。
思考をはっきりさせるためにも、何かに書き出してみてください。10分だけ、集中して考えてみましょう。本当に集中するのであれば、5分でもかまいません。集中すると、10分って結構長いんです。そのうち、「10分で子どもの見取りを書く」「10分でねらいをたてる」「10分で内容を決める」「10分で保育者の援助を書く」ってできるようになってきますよ。
雑務を集中して終わらせ、10分を作り出す。それを1日2回、2日やれば、保育指導案を書き終わります。
保育塾ベーシックの第7回で、今回の課題について具体例を考えていきます。
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ここまでが、保育塾ベーシックの第6回目の内容です。
第1回から、ずっと砂場の遊びについて考えています。「子どもをどう見取るか」ということを20回ほど、記録についても20回ほど、その後、ねらい及び内容、援助、要録と、それぞれ20回に分け、3日に1度メルマガでお届けしています。無料です。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。
保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。