「ねらい」の意味と「目標」「目的」「めあて」との違い【保育では「ねらい」が特別です】

「ねらい」「目標」「目的」「めあて」どれも似たような言葉です。

保育関係者は、保育指導案で「ねらい」を考えます。

だから、「ねらい」が特別なのは分かりますよね。

他の「目標」「目的」「めあて」との違いが分かりますか?

「ねらい」「目標」「目的」「めあて」の違いで一番大事なこと

「ねらい」「目標」「目的」「めあて」の4つは、何が違うのでしょう。

保育の世界では、「ねらい」だけは、他の言葉と違う特別な意味をもっています。

「目標」「目的」「めあて」は、普通の日本語として使ってあります。

「ねらい」だけ、幼稚園教育要領、保育所保育指針で、定義されています。

保育での「ねらい」の意味

幼稚園での「ねらい」の意味

幼稚園教育要領では、第2章の最初に、次のように書かれています。

第2章 ねらい及び内容

この章に示すねらいは、幼稚園教育において育みたい資質・能力を幼児の生活する姿から捉えたものであり、内容は、ねらいを達成するために指導する事項である。

保育所での「ねらい」の意味

保育所保育指針には、次のように書かれています。

第2章 保育の内容

この章に示す「ねらい」は、第1章の1の⑵に示された保育の目標をより具体化したものであり、子どもが保育所において、安定した生活を送り、充実した活動ができるように、保育を通じて育みたい資質・能力を、子どもの生活する姿から捉えたものである。また、「内容」は、「ねらい」を達成するために、子どもの生活やその状況に応じて保育士等が適切に行う事項と、保育士等が援助して子どもが環境に関わって経験する事項を示したものである。

保育所保育指針のほうは、文が長くて難しいですね。

幼稚園と保育所で共通しているのは

「幼稚園教育において育みたい資質・能力を幼児の生活する姿から捉えたもの」

「保育を通じて育みたい資質・能力を、子どもの生活する姿から捉えたもの」

という部分ですね。

資質・能力については、

「3つの柱」「5つの領域」「10の姿」と「ねらい」との関係

【保育だけ特別!】「資質・能力の3つの柱」でみんなが誤解してしまうこと

に詳しく書いてあります。

ねらいの意味に「資質・能力」と書いてあるのに、「ねらい」を考える時には「資質・能力」を意識しなくても良いんです。

という話は「ねらい」の書き方はどう変わる?改訂前と改訂後に書いてあります。

資質・能力というと難しいので、すごく省略すると、

「こんな風に育ってほしいな、育てたいな」というのを表したのが「ねらい」です。

一般的な意味とは違いますね。

一般的な意味を考えて整理すると、保育の「ねらい」について、もっと良く理解することができます。

一般的な意味を考えながら、保育で使われる「ねらい」「目標」「目的」「めあて」について考えてみましょう。

「ねらい」「目標」「目的」「めあて」の一般的な意味と保育での使われ方

一般的にはどのような違いがあるか、考えてみましょう。

もく‐ひょう〔‐ヘウ〕【目標】の意味

 そこに行き着くように、またそこから外れないように目印とするもの。「島を目標にして東へ進む」

 射撃・攻撃などの対象。まと。「砲撃の目標になる」

 行動を進めるにあたって、実現・達成をめざす水準。「目標を達成する」「月産五千台を目標とする」「目標額」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

分かりやすく言うと、ねらいと目標は大きさが違います。

「目標は的、ねらいは的の一部」「目標はゴール、ねらいはゴールテープをもった保育士」という感じです。

実際、ゴールテープを持っている保育士を目指して、斜めに走る姿がよくありますよね。

「ゴールテープを切らなくても、保育士のところまで一生懸命走ったから満足する」も、よくあります。

でも、それでOKですよね。

「ねらい」は、もちろんゴールまで到達しても良いですが、ねらうこと自体を表しているんです。

保育所保育指針には、次のように書かれています。

保育所の保育士等は、遊びの中で子どもが発達していく姿を、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を念頭に置いて捉え、一人一人の発達に必要な体験が得られるような状況をつくったり必要な援助を行ったりするなど、指導を行う際に考慮することが求められる。
実際の指導では、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が到達すべき目標ではないことや、個別に取り出されて指導されるものではないことに十分留意する必要がある。

注:実際は保育所保育指針では太字にしてありません。

これも、「到達するべき」ではなくて、「その方向に向かって進んでいる」ことが大事ということです。

保育所保育指針には、この章に示す「ねらい」は、第1章の1の⑵に示された保育の目標をより具体化したものと書いてありましたね。

「ねらい」は、「目標」をより具体化したものなんです。

ただ、「目標」が一般的な意味で使われているのに対し、保育で使われる「ねらい」は定義がしてありましたね。

幼稚園では、「目標」は、「教育目標」という使われ方をしています。

ここで使われている「目標」も、一般的な意味です。

また、保育所保育指針解説では「目標を目指してやり続けよう」「ともに協力して目標を目指す」という記述もあります。

子どもの姿に対しても、「目標」が使われているということです。

これも、一般的な意味での「目標」です。

長くなったので、「ねらい」と「目標」だけまとめます。

・「ねらい」は、幼稚園教育要領、保育所保育指針で定義してあり、特別な意味をもっている。

・「ねらい」は、「到達すること」ではなく、「ねらうこと自体」「その方向に向いていること」を表している。

・「目標」は、一般的な意味で使われている。

・「目標」を具体化したものが「ねらい」

もく‐てき【目的】の意味

 実現しようとしてめざす事柄。行動のねらい。めあて。「当初の目的を達成する」「目的にかなう」「旅行の目的」

 倫理学で、理性ないし意志が、行為に先だって行為を規定し、方向づけるもの。

[用法]目的・[用法]目標――「目的(目標)に向かって着実に進む」のように、めざすものの意では相通じて用いられる。◇「目的」は、「目標」に比べ抽象的で長期にわたる目あてであり、内容に重点を置いて使う。「人生の目的を立身出世に置く」◇「目標」は、目ざす地点・数値・数量などに重点があり、「目標は前方三〇〇〇メートルの丘の上」「今週の売り上げ目標」のようにより具体的である。

ビジネスの世界では、「目的」「目標」が使われることが多いようです。

目的達成のために、数値目標をたてます。

新規事業を開拓する(目的)ために、1ヶ月以内に1000人分の顧客リストを作成する(目標)。

みたいな感じですね。

目的の方が規模が大きく、目標の方が具体的です。

学校教育法でも、幼稚園の目的と目標が書かれています。

第22条に、幼稚園の目的が1つ、第23条に、目的を実現するために目標が5つ。

これも、目的の方が大きいです。

難しくて混乱するといけないので、ものすごく省略しています。

余裕のある人はこちらをどうぞ

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/026/siryo/07072701/002/001.htm

文部科学省のホームページです。

保育所も、目的として書いてあることは1つです。

「目的」の話のすぐ後で、保育の目標が6つ出てきます。

「目的を実現するための目標」という文にはなっていませんが、もちろん「目的」と「目標」に関係はあります。

これも、難しくて混乱するといけないので、ものすごく省略しています。

余裕のある人は、もう一度、保育所保育指針を読んでみてください。

幼稚園でも、保育所でも、「目的」「目標」は、一般的な意味として使われています。

幼稚園教育要領では「共通の目的の実現に向けて」「学級全体で目的をもって」などと、子どもの姿として「目的」が使われています。

この場合も、「目的」は、一般的な意味です。

め‐あて【目当て】の意味

 目標とするもの。目印。「真っ暗で目当てになるものがない」「灯台を目当てに進む」

 心の中で目指しているもの。行動のねらい。目的。「目当ての品」「金目当て」

 物事を行う場合などの基準。見当。「だれに頼めばいいか目当てをつけておく」「就職の目当てがついた」

 銃のねらいを定めるための突起物。照星 (しょうせい) 。

「めあて」は、幼稚園教育要領にも、保育所保育指針にも登場しません。

保育の現場で「めあて」を使うとしたら、一般的な意味として使われます。

小学校では、「今月のめあて」のように、よく使われています。

まとめ

・「ねらい」は、幼稚園教育要領、保育所保育指針で定義してあり、特別な意味をもっている

・「ねらい」は「到達すること」ではなく、「ねらうこと自体」「その方向に向いていること」を表している

・「目標」は一般的な意味で使われている

・「目標」を具体化したものが「ねらい」

・「目的」は一般的な意味で使われている

・「目的」のほうが規模が大きく、「目標」は具体的

・幼稚園の目的が1つ、目標は5つ

・保育所の目的が1つ、目標は6つ

・「めあて」は、幼稚園教育要領、保育所保育指針には登場しない

・「めあて」は一般的な意味で使われている

・「めあて」は小学校で使われることが多い

多過ぎて分からなくなった人は、「ねらい」が特別で、「目標」「目的」「めあて」は、一般的な意味ということを覚えておきましょう。

必要なときに、またこの記事を読んでください。

「ねらい」は、他にも関係を考えないといけないことがありますよね。

1つは、「3つの柱」「10の姿」との関係です。

おまけに5領域まで、ものすごく簡単にまとめているのが「3つの柱」「5つの領域」「10の姿」と「ねらい」との関係です。

チェックしてみてください。

もう1つは、「内容」との関係です。

「ねらい」と「内容」を書くと、似たような文になってしまう人や、新任の先生を指導してもうまくいかない人は、

伝わりやすい保育指導案の書き方【ねらいと内容の違いを自信をもって説明する】

を読んでください。

「保育指導案の書き方をもっと詳しく教えてよ」という人は、「保育塾ベーシック」についての詳しい内容を読んでみてください。

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ABOUTこの記事をかいた人

管理人のUCHI(うち)といいます。 公立幼稚園、幼保園、大学の附属で働いていた元幼稚園教諭。 現在、島根保育塾代表。仕事を効率化するだけなら簡単です。しかし、保育の質を落とさず(むしろ上げながら)効率化することは、現場を経験した人間でないと、なかなか上手くできません。「保育の質を上げる」「労働時間の短縮」これを両立させるための記事を書いていきます。あなたの園に合わせた方法を知りたい人は、お問い合わせくださいね。