ねらいと内容がそっくりになってしまう。
手本を見ながら書いているのに、いつも直される。
新任の先生をいくら指導しても、毎回同じような表現の間違いがある。
こんな風に思ったことはありませんか?
文法的な決まりをいくつか知るだけで、解決するかもしれませんよ。
文法に気を付けて、伝わりやすい保育指導案にしよう
それでは問題です。
ねらいA~Dの中で、文法的に正しいものはどれでしょう。
ねらいA ○保育者や友達と一緒に、楽しんで身体を動かす
ねらいB ○保育者や友達と一緒に、楽しんで身体を動かせるようにする
ねらいC ○様々な生き物や植物に触れることを通して、身近な自然に親しむ
ねらいD ○身の回りのことを自分でしたり、興味・関心をもったことを広げる
ねらいAと、ねらいBの違いは、すぐに気付く人が多いでしょう。
しかし、ねらいCと、ねらいDは、おかしい部分が説明できない人もいると思います。
でも、実際には、文法的におかしな部分があります。
自分で書いた文は、文法の間違いが少しくらいあっても気になりません。
自分で考えた文なので、意味が分かりますから。
でも、他の人が書いた文に、文法的な間違いがあると、理解しにくいものです。
文法に気を付けて、他の人にも分かりやすい保育指導案にしましょう。
文末の表現に気をつける
ねらいAと、ねらいBは、「子ども目線か」「保育者目線か」が違いますね。
文法に間違いがあるということではありません。
ねらいAは、「子どもがどうするか」
ねらいBは、「保育者が、子どもにどうなってほしいか」
という目線で書いてあります。
保育指導案を書くときには、
幼稚園教育要領や、保育所保育指針に準じて書きましょう。
同じような書き方にするということです。
基本は子ども目線
養護に関わるねらい及び内容は保育者目線
ということになります。
何を書いて良いか思い浮かばず、市販の本を参考にすることがありますよね。
幼稚園教員が、養護の部分を写してしまうと、おかしなことになります。
市販の本に書いてある例文を写してしまう人は【例文を写すことがある人へ】保育指導案レベルアップへの4ステップも見てください。
また、小中学校の指導案に慣れている人は、教師目線で書く人もいるでしょう。
一貫教育に取り組んだ結果、小中学校の書き方に合わせてある指導案を見たこともあります。
子ども目線の文末でも、「~できる」と書いてある指導案もあります。
これも、小学校の書き方ですね。
保育所であれば、個人が少し気をつければ、すぐに分かることです。
問題なのは、幼稚園のほうです。
副専攻で幼稚園の免許を取った先生は、小中学校の書き方が癖になっていることがあります。
小中学校の実習を一生懸命して、書き方が身に付いているんですね。
一方で、副専攻の幼稚園実習は、期間があまりにも短いです。
指導する先生は、幼稚園教育要領を見せながら、書き方をしっかり教えてあげてくださいね。
一旦まとめると、
○ねらいや内容を書くときには、文末に気を付ける
・基本は子ども目線で書く
・養護に関わるねらい及び内容は保育者目線で書く
・文末は動詞で書く
ということになります。
文をつなぐ言葉に気を付ける
ねらいに使えない言葉
ねらいの文を書くときに使うと、文法的におかしくなる言葉があります。
それは
「~を通して」「~することで」
などの、方法や手段を表す言葉です。
「ねらい」とは、一言で表すと、「目標」とも言えます。
「内容」は、目標に向かってすることであり、一言で表すと「方法」です。
この表し方に納得できない人は、伝わりやすい保育指導案の書き方【ねらいと内容の違いを自信をもって説明する】を読んでください。
分かりやすくするために、ダイエットの話をします。
ねらい(目標)○夏までにやせる
これはOKです。
ねらい(目標)○ウォーキングをして夏までにやせる
これはちょっとおかしいです。
「ウォーキングをして夏までにやせる」の中の「ウォーキングをして」の部分は、やせるための方法です。
このねらいの文には、内容(方法)に書くべきことが入っています。
保育指導案に書く「ねらい」も、方法や手段が入ると、「内容」が含まれていることになります。
そこで、方法や手段を表す言葉を覚えておくと良いと思います。
「~を通して」「~することで」などが、方法や手段を表す言葉です。
ねらいの文には使わない方が良いでしょう。
ねらい ○様々な生き物や植物に触れることを通して、身近な自然に親しむ
ぱっと見た感じ良さそうですね。
しかし、ねらいの中に「触れることを通して」という、方法を表す言葉が入っています。
ねらいの文の中に内容が入っているということです。
じゃあどうすれば良いかというと、ちょっと言葉を変えるだけで良いのです。
ねらいに使える言葉
ねらいに使う言葉は「~する中で」「~ながら」
または、文をつなぐ言葉を使わないで表せばOKです。
ねらい ○様々な生き物や植物に触れる中で、身近な自然に親しむ
ねらい ○様々な生き物や植物に触れながら、身近な自然に親しむ
ねらい ○様々な生き物や植物に触れ、身近な自然に親しむ
身近な自然がどのようなものかということを表したいのであれば、
ねらい ○様々な生き物や植物などの、身近な自然に親しむ
このような表現になります。
誤用が多い言葉
ねらいD ○身の回りのことを自分でしたり、興味・関心をもったことを広げる
この文で違和感があるのは「~たり」の使い方です。
「~たり」は、同程度のことを並べるときに使います。
「歌ったり踊ったり」
「歩いたり走ったり」
という使い方をします。
「歌ったり踊る」
「歩いたり走ること」
など、「~たり」が1回だと、違和感がありますよね。
じゃあ、ねらいDに「~たり」を2つ使ってみます。
ねらいD ○身の回りのことを自分でしたり、興味・関心をもったことを広げたりする
これだと正しく見えますよね。
でも、「身の回りのことを自分でする」と「興味・関心をもったことを広げる」は、同程度ではありません。
「身の回りのことを自分でする」と同程度のことは、「新しい絵本をすぐに読もうとする」「園庭の端の方まで行ってみる」などが考えられます。
ねらいD ○身の回りのことを自分でしたりお手伝いをしようとしたりと、興味・関心の対象を広げる
これだと、詳しく言えますね。
反面、どうしても文が長くなってしまいます。
じゃあ「~たり」ではなくて「~など」を使ってみましょう。
ねらいD ○身の回りのことを自分でするなど、興味・関心の対象を広げる
「~たり」だと、もう片方の「~たり」がどこにあるか探してしまいます。
「~など」であれば、「~など」の前の部分と同程度のことを想像すれば良いことが分かります。
または、「興味・関心を広げる」の方を変えてしまいましょう。
ねらいD ○これまでの環境と大きく変わったことに興味を向ける。
「興味・関心を広げる」だと、どのクラス、どの学年にもあてはまります。
例えば、「以上児になった」というのであれば、「大きく変わった」というような言葉を入れてみましょう。
身の回りのことなど、具体的なことを言いたければ、内容で取り上げましょう。
このように、言い換える言葉がうまく思い浮かばない人は、こちらもご覧ください。
伝わりやすい保育指導案の書き方【ねらいと内容にぴったりの言葉が思い浮かばない人へ】
伝わりやすい保育指導案の書き方【ボキャブラリー(語彙)を増やして適切に表現する】
本当に難しいとは思いますが、さらにもう一つ、お伝えします。
「~たり」は、1回だけで使う場合もあります。
「大事な物は、無くしたりしないように、分かりやすい場所にしまっておく。」
「無くしたり」の続きに、「汚したり」「壊したり」など、「無くす」と同程度のことが想像できます。
このようなときは、「~たり」を1回だけしか使いません。
ねらいD ○身の回りのことを自分でしたり、興味・関心をもったことを広げる
この文で、「~たり」が1回で良いとすれば、次のような書き方にすると意味が分かります。
ねらいD ○身の回りのことを自分でしたりして、興味・関心をもったことを広げる
でも、保育指導案を読むとき、1つの文に対して、こんなにたくさん考えると疲れてしまいます。
深読みしてくれるのは、指導の先生くらいです。
「~たり」は、「走ったり歩いたり」のように、なるべく短い言葉に使いましょう。
お便りで、「今月のねらい」を載せている園もありますよね。
保育の専門的なことは、保護者さんには理解しづらいです。
でも、「~たり」の使い方が間違っていることには、気付く人もいるでしょう。
「~たり」を使うときには、2個セットで使いましょう。
1個だけでも文法的には正しく書けますが、正しい使い方をできる人は、あまりいないので、間違いだと思われるかもしれません。
2個セットで使うのが無難です。
まとめ
この記事では、次のことをお伝えしました。
○ねらいや内容を書くときには、文末に気を付ける
・基本は子ども目線で書く
・養護に関わるねらい及び内容は保育者目線で書く
・文末は動詞で書く
○ねらいや内容を書くときには、文をつなぐ言葉に気を付ける
・ねらいに使えない言葉(内容と混ざってしまうため)「~を通して」「~することで」
・ねらいに使う言葉「~中で」「~ながら」
・「~たり」は、通常2個セットで使う
・「~たり」の前の言葉は短めに
・「~たり」の代わりに「など」を使う
「保育指導案の書き方をもっと詳しく教えてよ」という人は、「保育塾ベーシック」についての詳しい内容を読んでみてください。
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保育塾代表
2人の娘の父親
公立幼稚園・幼保園・大学の附属幼稚園で勤務の後、保育塾を立ち上げる。
ラッパ吹き。小学生を中心に、20年以上いろんなバンドを指導しています。
保育士・幼稚園教諭のみなさんが、ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、プラスの循環が生まれます。
ほんの少しだけ余裕をもって仕事ができたら、ほんの少しだけ子どもが落ち着いて、そうするとまた、ほんの少しだけ余裕ができて、効率良く仕事ができる方法を調べたりして・・・
そんなプラスの循環の始めの一歩、小さな余裕を生み出すお手伝いをしています。あなたが読んだこの記事が、そんな始めの一歩になったら嬉しいです。