「編曲をする手間を考えたら、練習した方が早い」
確かに、そういう場合もあります。
さらに、ピアノが得意な人にとっては、練習する必要もないかもしれません。
しかし、楽譜が簡単になると、子どもを見る余裕や、曲をきれいに弾く余裕ができます。
そのため、ピアノが得意な人も、楽譜を簡単にするメリットはあります。
というわけで、今回は、曲の雰囲気をなるべく変えずに、曲を簡単にする編曲の方法です。
ですので、楽譜のことが全く分からない人にとっては、少し難しいかもしれません。
なるべく分かるように書こうと思います。
「編曲は難しくて嫌だけど、楽譜を簡単にしたい」
という人は、次の記事を読んでみてください。
楽譜にとらわれないで、なんとなく弾けるようになりたい人はこちら
思い切り簡単な楽譜がほしい人はこちら
♯や♭が苦手で、無くしてしまいたい人はこちら
そもそも、ピアノをあまり弾かずにすませたい人はこちら
簡単な曲に編曲するための基本法則
曲を簡単にするためには、音を減らせば良いです。
でも、どの音を減らせば良いか、分かりませんよね。
まずは、どんなときにピアノが弾きにくくなるかを考えてみましょう。
・一度に弾く音の数が多いとき
・7連符や16分音符など、細かい音符が続くとき
・1小節の中にたくさん音があるとき
・音の高さが急に変わって、手を大きく動かすとき
大体これくらいかなと思います。
曲を簡単にする基本的な法則を、一言で表すと次のようになります。
一度に弾く音が多いとき
・コードの音を残して、他の音をなくす
・同じ音がオクターブで重なっているときは、片方をなくす
・一番上と一番下の音を残して、間の音はなくす
細かい音符が続くとき
・高い方の音を残して、低い方の音をなくす
1小節の中にたくさん音があるとき
・リズムを特徴づけるところだけを残して、弾く回数を減らす
音の高さが急に変わるとき
・急に変わる音を、オクターブ変えてしまうか、なくしてしまう
この法則を覚えておくだけでも、簡単にできる部分が、かなり見つかります。
それでは、それぞれの場合について、詳しく説明していきますね。
一度に弾く音が多いとき
コードの音を残して、他の音をなくす
一度に弾く音が多いときは、コードの音を残して、他の音は、なくしてしまいます。
たとえば、こんなとき
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/コードの音残す.png?resize=252%2C450)
このときのコードはD7(ミ、ソ♯、シ、レ)です。
ですので、1拍目、2拍目に、右手で弾くファ♯の音をなくしてしまいます。
1拍目が4分音符になってしまいますね。
左手で1拍目の裏を弾いているので、もとの楽譜と聞き比べても、あまり違和感はありません。
コードが分からない人は、コードも書いてある楽譜を使いましょう。
同じ音がオクターブで重なっているところは、片方をなくす
同じ音がオクターブで重なっているところは、片方なくしてしまいます。
たとえば、こんなとき
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/上の音残す.png?resize=252%2C450)
1拍目に、左手でも右手でも、レの音を弾いています。
左手で弾く方の、レの音をなくしてしまいましょう。
音が重なって鳴っているとき、一番上の音が聞こえやすいです。
ですので、右手で弾くレの音ではなくて、左手で弾くレの音をなくします。
ついでに、左手で弾く、2拍目のシの音を、1オクターブ下げました。
音が大きく変わらないので、弾きやすくなります。
右手で弾く2拍目の音は、1拍目の音よりも、かなり高くなっています。
そちらの方が聞こえやすいので、左手は少々変わっても気付かれません。
2拍目は、右手でも左手でも、シの音を弾いていますね。
これは、できれば両方残しておきましょう。
右手のシの音は、重なっている音の中で一番高い音なので、目立ちます。
左手のシの音は、ベース音だからです。
一番高い音と一番低い音を残して、間の音をなくす
ここまで読んで、
「じゃあ、さっきの、コードの音を残す話がおかしくない?」
と気付いた人は鋭いですね。
実は、コードの音を残すときには、重なっている音の中で一番高い、ファ♯の音をなくしました。
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/コードの音残す.png?resize=252%2C450)
これは、ファ♯の音が「経過音」だからです。
「けいかおん」と読みます。
このときのコードはD7でミ、ソ♯、シ、レ
です。
コードを構成する音の間をつなぐ音が、経過音です。
経過音は、大きな段差を埋める踏み台のようなもの。
なくてもなんとかなるけど、あったほうがスムーズです。
なくてもなんとかなるなら、取ってしまおうというわけです。
しかし、4拍目のシ♯の音は、残しておきましょう。
無くすと雰囲気が大きく変わります。
一番高い音を残す方を優先すると、こんな変え方もあります。
コードの音をなくしてしまいますが、重なった音の、間の音なので、そんなに目立ちません。
ここで一回まとめます。
音がたくさん重なっているときには、コードの音を残して、他の音はなくす
同じ音がオクターブで重なっているときは、片方なくす
(ただし、その音が一番高い音と一番低い音のときは、なくさない方が良い)
一番高い音と一番低い音を残して、間の音をなくす
このように、音を省略すると、目立ちにくいです。
7連符や16分音符など、細かい音符が続くとき
細かい音符が続くときは、指が思うように動きませんよね。
思い切って省略してしまいましょう。
たとえば、7連符は、次のようにすれば、一気に楽になります。
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/7連符簡単に②.png?resize=315%2C450)
7連符を、6連符にして、最初の音を休符にしてしまいます。
音は、7連符の、高い方の5つを残します。
そうすると、右手と左手を同時に弾かなくてすみます。
それから、右手は指くぐりをしなくてすみます。
「もっと簡単にしたい。」
というのであれば、思い切って、もっと音を減らします。
たとえば、こう省略。
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/7連符簡単に③.png?resize=315%2C450)
音は、高い方の4つを残します。
これだと、かなり雰囲気は変わってしまいますが。
もしくは、こう省略。
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/7連符簡単に④.png?resize=315%2C450)
短い間に音が変わる感じは、なんとか残っています。
保育の現場で弾くピアノは、ほとんど伴奏ですよね。
主役は歌を歌う人たちです。
ピアノは脇役なので、派手な必要はありません。
ですので、簡単にしたいのであれば、思い切って省略してしまいましょう。
16分音符の場合は、次のように音を減らします。
高い音の方が聞こえやすく、目立つので、高い方の音を残します。
スタートの音をなくしてしまうと目立つので、スタートの音は残します。
ですので、音が高くなっていくときはこのようになります。
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/16分①.png?resize=400%2C150)
音が低くなっていくときには、このように減らします。
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/16分③.png?resize=400%2C150)
16分音符の場合は、音を減らしてしまうとかなり目立ちます。
特に、このような高い音の場合は、減らしたことがすぐに分かります。
前奏部分など、歌と一緒ではないところは、なるべく楽譜通りに弾きましょう。
どうしても簡単にしたいのであれば、左手の方の音を減らすことを考えましょう。
1小節の中にたくさん音があるとき
メロディーの音を見る
1小節の中で弾く回数が多いときは、弾く回数を減らしましょう。
できれば、リズムの特徴が分かるようにします。
たとえば、こんなとき
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/リズム減らし.png?resize=250%2C350)
伴奏で同じ音が続いていても、一部分だけ変わることがあります。
この楽譜で言うと、4拍目だけドの音が出てきますね。
メロディーの音とぶつかるときに、そうなっていることがあります。
隣り合った、シとドの音を一緒に鳴らすと、にごったように響きます。
他の音でも、半音違う音を同時に鳴らすと、同じような響き方になります。
そのようなとき、「音がぶつかる」と言います。
メロディーの音とぶつかるのを避けるために、伴奏の音が一部分変えてある。
ということは、メロディーでその音を歌っています。
それなら、伴奏の音は、減らしても目立ちません。
もう一つ、このような省略のしかたもあります。
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/リズム減らし②.png?resize=250%2C350)
4拍目の最初の方を残して、裏拍の方を省略しました。
これだと、4拍目が4分音符なので、次の小節を弾くまでの余裕をもてます。
裏拍で音のぶつかるのが気になる人は、4拍目を8分音符と8分休符にしましょう。
歌詞を見る
歌詞に合わせてリズムを簡単にする方法もあります。
たとえばこんな感じ
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/リズム減らし③.png?resize=280%2C350)
「み」「ん」「な」「で」「は」「し」「っ」「て」
というようには歌いませんよね。
「みん」「な」「で」「は」「しっ」「て」
という、歌と同じように、伴奏のリズムも省略しましょう。
伴奏のリズムが歌と違うときは、むしろ省略したほうが良いと思います。
アクセントや強弱を見る
アクセントや強弱を見て、思い切って省略する方法もあります。
たとえば、こんな感じ
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/リズム減らし④.png?resize=300%2C350)
減らしすぎだということであれば、こんな感じ
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/リズム減らし⑤.png?resize=300%2C350)
音が小さいところでは、伴奏の音の数を減らした方がきれいに聞こえます。
たとえばこんな感じ
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/リズム減らし⑥.png?resize=300%2C350)
3拍目、4拍目を4分音符に変えてみました。
3拍目は8分音符のままにすると、雰囲気があまり変わらずにすみます。
音の高さが急に変わるとき
音の高さが急に変わるときは、手を大きく動かすので難しいですよね。
音の高さを1オクターブ変えるか、なくしてしまいましょう。
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/リズム減らし⑦.png?resize=450%2C216)
この楽譜の場合だと、省略せずに、1オクターブ上げても良いですね。
同じリズムが繰り返されている場合、
1回目を楽譜通りに弾いて2回目を省略する方法もあります。
そうすると、雰囲気があまり変わらずに、スッキリした印象になります。
1回目を楽譜通りに弾いて、2回目をオクターブ上げても良いです。
![](https://i0.wp.com/hoiku-support.info/wp-content/uploads/2018/03/リズム減らし⑧.png?resize=450%2C216)
「あめふりくまのこ」の前奏は、4小節目で2オクターブ音が飛びます。
1オクターブ下げてしまうと簡単に弾けます。
6小節目の、最後のラの音だけは、楽譜通りにすると、7小節目にうまくつながります。
まとめ
一度に弾く音が多いとき
・コードの音を残して、他の音をなくす
・同じ音がオクターブで重なっているときは、片方をなくす
・一番上と一番下の音を残して、間の音はなくす
細かい音符が続くとき
・高い方の音を残して、低い方の音をなくす
1小節の中にたくさん音があるとき
・リズムを特徴づけるところだけを残して、弾く回数を減らす
音の高さが急に変わるとき
・急に変わる音を、オクターブ変えてしまうか、なくしてしまう
保育の現場では、ピアノは伴奏として弾くことが多いです。
歌いやすいように弾くことを大事にしてくださいね。
余裕をもって弾くためにも、楽譜を簡単に編曲してしまいましょう。
この記事を読んで、もっとくわしく知りたくなった人
「この部分が分からないんだけど」「この曲の場合は」など、質問がある人
遠慮なくお問い合わせをくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
「もっといろいろと知りたい」という方は、